音が静か過ぎて存在が気付かれない!? 原付2種区分の電動バイク、niu「NQi GT」を検証する
バイクのニュース / 2021年7月25日 13時0分
約3週間にわたり「XEAM(ジーム)」が輸入、販売する原付2種区分の電動バイクniu「NQi GT」の日常での使い勝手を検証しましたが、原付1種とは少し異なる音の問題をはらんでいました。
■車道を走る自転車に、こちらの存在を知らせる音が欲しい
電動バイクのメリットは、まず音が静かであること。一方デメリットは、静か過ぎて存在を気付かれにくいことです。ヤマハの電動バイク「E-Vino」(原付1種)を実際に走らせて検証した際、小回りの利く原付スクーターが得意な歩道の無い路地や住宅街の中を走らせ、歩行者に気付かれづらいことが大きな問題だと感じました。
では、原付2種区分の電動バイク、niu「NQi GT」の場合はどうでしょうか。検証のため約3週間使ってみたところ、「E-Vino」よりは歩行者に気付かれやすかったと思います。その違いは、モーター音が発生していること、また、ウインカーを出したときに「ポーン、ポーン」という電子音が響くようになっていたことです。これらによって、想定していたよりも歩行者がこちらに注意を向けた印象でした。
ただし、片側一車線以上で路肩もあるような道路を走らせる中では、また違った問題を感じることになりました。それは、車道を走る自転車の存在です。
電動バイクにはエンジン音のようにはっきりと聞こえる音が無いため、後方からクルマもバイクも来ていないと判断され、後方確認もせずに、例えば路上駐車のクルマを避けるために、車道の中央側へ寄ってくるケースがあったのです。電動バイクの前を行く自転車が、いたってナチュラルに軌道を変えてバイクの前方を塞ぎ、ヒヤリとしたことが何度もありました。
もちろん、電動バイクを走らせる身としては、「前を走る自転車に自分の存在が認識されていないだろう」と想定して走ります。場合によっては車線変更もします。ただ、もしも本当に双方の安全を考えるのであれば、自分の存在を示すことができる何らかの音が欲しい、と思わされました。クラクションではなく「電動バイク(またはクルマ)が接近している」と分かる音です。
身長153cmの筆者(伊藤英里)がniu「NQi GT」に着座した状態。停止時はあまり違和感がないが、走らせてみるとハンドル位置がやや高く感じる
電動バイクは静かなこともメリットですから、場合によって発生の有無を選べることが望ましいでしょう。3週間にわたり電動バイクを走らせて、そう切に思いました。
バッテリーや充電などインフラ整備ばかりが注目されていますが、音の問題も、さらにシビアに考える課題ではないでしょうか。電動バイクは内燃機関のバイクに比べて走らせやすいモビリティです。以前、海外の電動バイクブランドを複数扱う「XEAM(ジーム)」が開催した電動バイクの試乗会では「これまでバイクに乗ったことがない人も多く、電動バイクに興味を持っている」という話を聞きました。つまり、これまでバイクの運転に慣れていない人にも親しみやすい乗り物だということです。そうであればなおのこと、音の問題について解決の必要性を感じるのです。
■電動バイクの走らせ方、走行モードのスピード上限
「NQi GT」では、試験的に電動バイクらしい走らせ方を模索してみました。筆者(伊藤英里)はバイクに乗り始めて10年以上経ちます。最初は電動バイクを内燃機関のバイクと同じように走らせていましたが、ここまでヤマハ「E-Vino」を約2週間、niu「NQi GT」を約3週間走らせる中で、電動バイクらしい走り方を感じ始めました。
niu「NQi GT」に試乗する筆者(伊藤英里)。最初は発進時のトルク感に戸惑ったが、慣れるとスロットルコントロールがおもしろくなる
そのひとつが「走行モード」の活用です。電動バイクの多くは走行モードをいくつか備えており、走行中にこれを使い分けることも、電動バイクの走らせ方の可能性ではないか、と思えました。走行するシーンに応じて、走行モードを選択するのです。
たとえば「NQi GT」には「スポーツ」、「ダイナミック」、「E‐セーブ」という3タイプのモードがあり、交通の流れを見ながら適したモードに切り替えて走る、というわけです。走行モードは右側のスイッチボックスにある「+」と「-」のボタンで切り替えます。
バイクが好きな人の中には、バイクを操作することに楽しみを見出している人も多いでしょう。電動バイクの場合、ギアチェンジはありませんが、こうした走行モードの使い分けによって、操作の楽しみを見出せるのではないでしょうか。
「NQi GT」に関して言えば、各モードに最高速度が定められており、「スポーツ」が約70km/h、「ダイナミック」が約45km/h、「E‐セーブ」が約20km/hとなっています。
「XEAM」の説明によれば、それぞれのモードで発進時の出力の味付けも異なるとのことでしたが、筆者にはそこまでの違いは感じられませんでした。あえて言うなら、スピードの上限に向かって上昇する加速感の違い、でしょうか。
走行モード切り替えは右側のスイッチボックスにある「+」と「-」のボタンで行なう
また、筆者の体格では走行中のモード切り替えがしづらいスイッチ位置になっていたため「NQi GT」ではできるだけ状況を先読みし、前もって走行モードを選択する走らせ方となりました。
そうしたモードごとの味付けや、乗り手の走り方についても、今後、電動バイクが普及していくにつれて、さらにブラッシュアップされていくのではないでしょうか。電動バイクらしい走り方、楽しみ方がますます気になるところです。
※ ※ ※
福岡県に本社を置く「XEAM」が展開するniu「NQi GT」の価格(消費税10%込み)は、2020年モデルが43万7800円、2021年モデルが34万9800円です。
今回検証で走らせたのは、定格容量2100Wh(60V/35A)のパナソニック製バッテリーを2個搭載する2020年モデルで、定格出力は1000W、最大出力は3500Wです。2021年モデルのバッテリーは中国製となり、定格容量や航続距離が異なります。
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