バイクのエンジンから伸びるエキパイの役割とは?
バイクのニュース / 2021年8月2日 9時0分
バイクパーツのなかで独特な形をもち、目立つ「エキパイ」。カスタムパーツをイメージすると上位にあがり、あこがれを持つバイク乗りも少なくないでしょう。一見すると排ガスを通すだけの単なるパイプにも見えますが、そもそもエキパイにはどんな役割があるのでしょうか。
■バイクのエキパイって何?
単なる排ガスを通すだけのパイプにも見えてしまうエキパイですが、単なるパイプであるなら特徴的な形は飾りでしょうか。まず名称から説明をすると、一般的には「エキパイ」と略されて呼ばれますが、正式名称は「エキゾーストパイプ」。サイレンサーと同じ扱いにしてマフラーと呼ばれたりします。その役割は排ガスを通すパイプだけでなく、排ガスの通りを制御してエンジンパフォーマンスに影響を与えるパーツです。
エキパイと呼ばれる範囲は、エンジンからマフラー(サイレンサー)までの中間を繋いでいる部分。さらに複数のシリンダーを備える多気筒エンジンに取り付けられたエキパイは、エキゾーストマニホールド、略して「エキマニ」と呼ばれる部品が追加されます。ほかにも、排ガスに含まれる有害物質を環境基準値以下にするフィルターとして、触媒が組み込まれているエキパイもあります。
仕組みとしては、パイプの太さや長さが排気ガスの抜ける量と圧力を変え、エンジン特性に影響を与えるというものです。具体的にはエキパイに一度に流れる排ガスの量が多くなるほど、高回転のエンジンの特性を高めます。同じエンジンでも高回転の出力を高めたいときは径の大きなエキパイを装着したほうが有利とされます。その反面、エンジンが低回転のときはトルクが減少しやすくなるのがデメリットです。
排ガスの抜けにはエキゾーストマニホールドも関係しています。例えば4気筒エンジンであれば、エンジンに取り付けられた4本のパイプが1つにまとまる部位で排ガスの圧力や抜けが変化します。排ガスをまとめるエキゾーストマニホールドの形でも排気ガスの排気効率が変わるとされています。カスタムパーツの中にはエキゾーストマニホールドの部位を純正とは大きく変えて、エンジン出力を変化させる製品もあります。
他にも、社外品のエキパイで小さなタンクのような部品を追加しているものを見たことはありませんか。これは、排気ガスの抜けを良くして高回転域の伸びを上げるだけでなく、低中回転のトルク低下を軽減する工夫を施したエキパイです。「膨張室」と呼ばれる箱のような部品で排気ガスの流れに強弱をつけて、低中回転のトルクと高回転域の速度の伸びの両方を変えることができます。
2ストロークエンジンのバイクには「チャンバー」が装備されています
補足で2ストロークエンジンのバイクには「チャンバー」と呼ばれる大きく膨らんだエキパイのようなパーツを取り付けています。
チャンバーは一般的なエキパイとは少し違う役割をするのが特徴です。2ストロークエンジンにはドアのような役割の吸気と排気バルブがないため、シリンダー内に入った混合気(気化したガソリンと空気が混ざったガス)が燃焼する前にそのままシリンダーを素通りして排出されてしまう欠点があります。その欠点を補うため、膨らんだ部分で作り出した排ガスの圧力でシリンダー内に混合気を留める役割をしています。
以上のように、エキパイは単に排ガスを通すパイプというわけではなく、それ以上に大事な役割を担っています。
■エキパイのメンテナンス方法とは?
ほかのバイクパーツと同様にエキパイもメンテナンスをしておかないと劣化し、性能低下を起こします。しかも、その配置から走行中の汚れが付きやすい場所にあると言えます。フロントタイヤが巻きあげた汚れがつきやすく、未舗装道路や水たまりの上を走るだけで汚れが付き、高温の排ガスが通り続けているため、汚れのあとが残りやすいのです。
ほかにも耐熱性がないバイクカバーをエキパイが熱いうちにかぶせてしまい、溶けてへばりついてしまったり、風であおられてきたレジ袋がたまたまエキパイにくっついて溶けて固まったりなど、一度汚れが付くと落としにくいといえます。
へばり付くような汚れが付いたときは、なるべく早めにプラスチック・スクレーパーなどを使い、エキパイ自体に傷がつかない道具で汚れを落とすようにします。時間が経てば経つほど汚れは取れにくくなるため、汚れが付いた状態で放置せずに早く取り除くようにしてください。
高温状態が続くため、塗装された純正のエキパイであっても塗装が剥げて錆びるのは珍しくありません。そういったときは一般的な錆とりと同様に、ブラシやペーパーやすりで磨いて錆を落としてから耐熱塗料で塗り直しをしないと劣化がひろがり、放置し続けると穴が空いてしまいます。
ステンレス製のエキパイは何度も高温になると“ステンレス焼け”とよばれる色の変化が起きます。身近なものだと鍋やヤカンで空焚きすると起きる現象です。ステンレス焼けで色が変化してきたら、専用の研磨剤で磨くと焼けあとが目立たなくなります。
チタン製のエキパイは特徴的な虹色の焼き目があり、ステンレス製のように研磨剤で磨くと焼き目が落ちてしまいます。そのため普通のメンテナンスは水洗いで汚れを落とすのがおすすめです。
ここまではエキパイの外回り、見た目のメンテナンスをお伝えしてきましたが、中身の手入れもあります。汚れ落としのときにエキパイを取り外し、内部に水が溜まっていないか、錆で穴があいていないかなどチェックをするとよいでしょう。
内部に水がたまるのは、日常的にバイクをちょい乗りすると起きやすいとされます。短い時間でエンジンを始動し、止めるような使いかたをするとエキパイ内の水分が抜けずにとどまり続け、パイプ内部を腐食させ、最悪の場合は穴があいたりします。
洗車などで水が奥まで入ってしまう場合は、排気口を塞ぎましょう
サイレンサーの排気口が上を向いているモデルは、排気口をマスキングテープなどで塞いでおかないと、洗車などで水が奥まで入ってしまうため注意しましょう。
腐食で穴があくと排気ガスが穴から抜けてしまい、エンジン特性も変わり、おおきな騒音を発生させます。車検が必要となる排気量250㏄以上のバイクでは、車検を通すためにエキパイの交換が必要になります。
※ ※ ※
排ガスをエンジンからマフラーにまで運び、エンジンの出力調整も兼ねているエキパイ。単なる排気管以上の役割があり、エンジンのパフォーマンスも変える重要な部品です。純正パーツ、カスタムパーツ、どちらであっても高価な部品であるため、定期的なメンテナンスを行い、劣化を抑えることでバイクのパフォーマンス維持にもつながります。
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