オーバー1リッター車に匹敵する上質さ トライアンフ「タイガー900」シリーズの凄さとは?
バイクのニュース / 2021年8月10日 11時0分
トライアンフのアドベンチャーモデル「タイガー900ラリープロ」は、仕様違いで複数ラインナップする「タイガー900」シリーズで最もオフロード向けの性能を追求したモデルです。中村友彦さんが解説します。
■クラストップの座を目指す気概
アドベンチャーツアラーのアンダー1000ccクラスで、何としてもトップを獲る! 2020年春に全面新設計の「タイガー900」シリーズが登場したとき、私(筆者:中村友彦)はトライアンフにそんな気概を感じました。
その1番の理由は、5機種を同時に発表したことです。ただし、「タイガー900」の販売形態は仕向け地によって異なり、当初の日本市場ではベーシック仕様の導入が見送られたのですが、2021年からはベーシック仕様に相当するモデルとして、機能の簡素化でコストを抑えた「タイガー850スポーツ」が販売されています。
もっとも、先代の「タイガー800」にも数多くの仕様は存在したのです。とはいえ、2010年の登場時は2機種のみでしたし、ラインアップを拡大した2015年以降は独創的な車名のせいで、各車の差異が把握しづらくなっていました。
その反省を踏まえたのでしょうか、新世代の「タイガー900」シリーズは、舗装路重視のキャストホイール+フロント19インチ車が「GT」、悪路走破性を意識したスポークホイール+フロント21インチ車が「ラリー」と命名され、それぞれに上級仕様の「プロ」を設定する、わかりやすい構成になっています(850スポーツの基本構成は900GTと共通)。
■既存の並列3気筒とは異なる爆発間隔
幅広くてわかりやすい車種構成に加えて、並列3気筒エンジンに量産車初となる90度位相のTプレーンクランク、不等間隔爆発を導入したことも、「タイガー900」発売時のトライアンフに私が気概を感じた一因です。
シート高850mm(870mmに変更可能)の車体に身長182cmの筆者(中村友彦)がまたがった状態
そもそもの話をするなら、並列3気筒エンジンは120度位相の等間隔爆発が王道で、同社のトリプルモデルもこれまではその構成を採用していました。
ではどうして新世代の「タイガー900」シリーズがTプレーンクランクを導入したのかと言うと、ヤマハとMVアグスタが手がける並列3気筒との差別化を図りつつ、独自の魅力で多くのライダーの注目を集めよう、という意図があったのではないか、と個人的には思います。何と言っても近年の並列3気筒ブームの火付け役は、1990年の復活以来、このエンジン形式を主軸に据えて来たトライアンフなのですから。
前述したように、「GT」と「ラリー」の最も大きな相違点はホイールですが、サスペンションのストローク量を示すホイールトラベルは、ラリーのほうが前後とも60mm長く(フロント240mm/リア230mm)、その結果としてシート高もラリーのほうが40mm高くなっています(850/870mmの可変式)。
この数値をどう捉えるかは人それぞれですが、一般的な体格と技量の日本人ライダーが馴染みやすいのは、車格が小さく思える「GT」の方でしょう。ちなみに、価格は「GT」の方がやや安いですが(GTプロはシリーズ唯一のセミアクティブサスペンションを採用するにも関わらず、ラリープロより3万円から5万円安い186万円)、その傾向は日本市場だけではなく、全世界共通のようです。
■Tプレーンクランクの効能は?
新世代の「タイガー900」シリーズを初めて体験するにあたって、私が最も楽しみにしていたのはTプレーンクランクです。だから試乗前日は、バランス的には120度クランクよりも振動が出ているのではないか、ヤマハのクロスプレーンクランクと何らかの共通点を感じるのだろうか、などと考えていたのですが、実際のフィーリングは至って普通でした。
トライアンフ「Tiger 900 Rally Pro」排気量888ccの水冷並列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載
もっとも、あえて言うならオーソドックスな120度と比較すると、トルク変動がやや大きく、エンジンの抑揚が強いような気はしますが、事前の知識なしで試乗していたら、残念ながら私の技量では、クランク位相角の差異には気づけなかったでしょう。
とはいえ、それでは試乗記として読者の皆様の役に立たない気がするので、後に同業者数名に新世代「タイガー900」の印象を聞いてみたところ、多くのライダーがオフロードにおけるトラクションの濃厚さを高く評価。ただし舗装路のみの短時間の試乗では、美点は把握しづらいかも……とのことでした。
逆に言うなら、革新的な構造を採用しているにも関わらず、既存の並列3気筒車と同様の感覚で普通に乗れてしまうことが、新世代の「タイガー900」の特筆すべき要素と言えるのもかもしれません。
さて、そんなわけで今回の試乗はアテが外れた感があったのですが、一方で私はアンダー1000ccとは思えない上質さ、エンジンの扱いやすさや乗り心地のよさ、スポーツライディングとツーリングの両方が存分に楽しめそうなキャラクター、外装類の仕上げなどに、大いに感心しました。
SHOWA製の前後サスペンションはフロント240mm、リア230mmのトラベル量を確保。ノークラッチでシフトチェンジ可能なクイックシフター(アップ&ダウン)標準装備。スポークホイールはチューブレスタイヤに対応
と言うのも、ライバル勢の場合は、フラッグシップへのステップを促進するためなのでしょうか、オーバー1000cc車に劣る雰囲気を感じることが少なくないのですが、「タイガー900」に接して得られる充実感は、兄貴分の「タイガー1200」を食ってしまうほどだったのです。その事実を認識した私は、もしかしたらトライアンフは「タイガー900」を開発するにあたって、アンダー1000ccなどという概念は抜きにして、ただひたすらにアドベンチャーツアラーの理想を追求したのではないか、と感じました。
※ ※ ※
今回試乗したトライアンフ「Tiger 900 Rally Pro」の価格(消費税10%込み)は190万5000円です。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
6速MTあり! 660ccの新型「軽量スポーツモデル」初公開! 超パワフルな「81馬力」エンジン搭載した「2シーター仕様」が発表! 爆速の「新型タイガースポーツ660」来年2月に発売へ!
くるまのニュース / 2024年11月25日 15時30分
-
足が長くてシートがもっと高い! BMW Motorrad「R 1300 GS・GSスポーツ」は不慣れなライダーでも楽しめる?
バイクのニュース / 2024年11月23日 11時10分
-
3気筒エンジン搭載の万能アドベンチャー、新型トライアンフ『タイガー・スポーツ660』発表
レスポンス / 2024年11月20日 10時0分
-
ロイヤルエンフィールド新型「ベア650」の乗り味は? カリフォルニアで歴史を刻んだネオ・スクランブラー
バイクのニュース / 2024年11月14日 11時10分
-
【ドゥカティ ムルティストラーダV4S 海外試乗】世代を重ねるたびに快適さを増す「最高のツーリングバイク」…佐川健太郎
レスポンス / 2024年11月1日 12時0分
ランキング
-
1“風呂キャンセル”は冬でもNG、界隈の人々に皮膚科医が忠告、「乾燥で体臭は拡がりやすくなる」
ORICON NEWS / 2024年11月29日 11時30分
-
2一人暮らしの同僚は毎食「コンビニ弁当」です。「光熱費もかからないから、作るより安上がり」と言っていますが、そんなことないですよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月29日 5時50分
-
3ついに日本政府からゴーサイン出た! 豪州の将来軍艦プロジェクト、日本から輸出「問題ありません!」 気になる提案内容も明らかに
乗りものニュース / 2024年11月29日 6時12分
-
4健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はありますか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月29日 13時20分
-
5ワークマンの「着る断熱材」がスゴイ! 寒さも暑さも感じない「無感覚アウター(レディース)」を着てみた
Fav-Log by ITmedia / 2024年11月23日 9時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください