「菅総理」はトランプ米大統領と“いい関係”を築けるか

bizSPA!フレッシュ / 2020年9月16日 8時45分

写真

画像はイメージです

 新型コロナウイルス、失業者や企業倒産の増加、米中対立、尖閣諸島の情勢悪化ーー。大きな問題が日本社会を襲うなか、9月16日に新政権がスタートする。

安倍首相

安倍晋三首相 © Palinchak

 9月14日に自民党総裁選が行われ、大方の予想通り菅義偉氏が選出された。16日の臨時国会で首相に指名され、新内閣が発足する。

前回の記事では対ロシアの外交について述べたが、今回は“菅新総理”誕生を踏まえて、“ポスト安倍”時代のアメリカとの外交について考えてみたいと思う。

◆“菅新総理”とトランプ大統領はうまくいくか

 ちょうど4年前の2016年、ヒラリー・クリントン氏が優勢とみられるなか、ドナルド・トランプ大統領が勝利した。アメリカ研究者の多くもトランプ氏の勝利を予想していなかった。

 そして、オバマ政権の否定と“アメリカファースト”を重視するトランプ氏に対し、日本では「トランプ大統領下で日米関係は大丈夫か」「本当に在日米軍はいなくなるんじゃないか」などと警戒感が漂った。

 だが、安倍首相はゴルフという共通の趣味を巧みに利用し、この4年間で30回以上も日米首脳会談を重ね、トランプ大統領にとって最も親しいお友達になった。トランプ大統領も安倍首相が辞任することを聞いて、「寂しい」と呟いている。

 そして、今では「安倍首相がいなくなって次の総理はあのトランプと上手くやれるのか」「これでトランプはもっと日本にあれこれ要求してくるのではないか」などと不安視する声も聞かれる。

◆日米関係は堅持されるはず

靖国神社 © Paylessimages

 しかし、そのような不安はほとんど必要ないように思われる。7年8か月に渡り官房長官を務めた菅氏は安倍政権の政策を継続する意思を強調。11月の米大統領選で現職のトランプ氏、民主党のジョー・バイデン候補どちらになったとしても安倍政権で培われた日米関係は堅持されていくことだろう。

 安倍首相はトランプ大統領のアメリカファースト、対イラン強硬姿勢、国内の移民・難民政策などを決して支持はしていないが、“反トランプ”の声が広がるなかでも、日本の国益を最大限引き出すために戦略的な行動を取り続けた

 安倍首相を保守派とする意見も根強いが、靖国神社の参拝は第2次政権発足後は2013年の1回のみで、中国と韓国との必要以上の関係悪化を避けた。

◆バイデン氏が当選しても中国には…

日米

画像はイメージです

 また、安全保障政策に関しては、安保法制懇でも、専門家グループが提言する改革案でも、憲法とのバランスから安倍首相が実現化したもの(集団的自衛権行使の限定容認)は限られる。要は安倍首相は国益を最大限重視し、現実的に行動したといえる。

 菅政権になったとしても、今の立場が変わることはないだろう。新型コロナウイルスの感染拡大以降、東シナ海では中国の海洋覇権が活発化し、中国船の大型化、海警局と軍の一体化などが進んだ。

 尖閣諸島では日本漁船を追尾したり、日本に尖閣諸島に近づくなと要求するなど、中国の姿勢はより強くなっている。そして、台湾海峡や南シナ海、北朝鮮の核・ミサイルなども考慮すると、日本と米国は多くの面で利害関係が一致し、それが明確である

 また、秋の大統領選挙でバイデン氏が勝利したとしても、現在の日米同盟はこのまま維持されるだろう。バイデン氏はオバマ政権の継承を掲げているが、中国に対しては厳しい姿勢で臨むことを主張しており、米国政治内でも中国へ懸念は超党派的なものがある

◆同じ価値観の国々との連携を

 菅政権下の日本は、米国だけでなく、中国への態度を硬化させているオーストラリアやインド、またインド太平洋地域に領土を持つ英国やフランスなど、同じ自由・民主主義の価値観を共有する国々とも独自の安全保障網を強化していくべく、広い視野で戦略的に行動していくことが求められる。

 菅政権が安倍政権のように長期政権となる可能性は低い。これは菅氏の年齢もあるが、あくまでも安倍政権の継承であり、菅氏も独自色を最大限出そうとしているわけではない。

 安倍政権は国益重視のリアリズム外交だったが、菅政権下でもひとまずはそれが維持されることになる。中国の領土拡大路線は今後も続くであろうことから、現在の姿勢を今後も維持していく必要があるだろう

<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>

【イエール佐藤】

国際政治学者。首都圏の私立大学で教鞭をとる。小さい頃に米国やフランスに留学し、世界の社会情勢に関心を持つ。特に金融市場や株価の動きに注目し、さまざまな仕事を行う。100歳まで生きることが目標

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング