「コロナで給与がゼロに」出版社に新卒内定した22歳女性の絶望

bizSPA!フレッシュ / 2020年9月19日 15時46分

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新卒で出版社に内定をもらった市川彩子さん

 新型コロナウイルスによる景気低迷、あるいは増税による可処分所得の減退により、若者をとりまく環境は日に日に厳しさを増している。月収10万台という新卒社員もなかには少なくない。

新入社員

※画像はイメージです(以下同)

 今回話を聞いたのは、新卒で出版社に内定をもらったという市川彩子さん(仮名・22歳)。都内の高学歴私立大学を卒業した彼女だが、入社先ではとんでもない“仕打ち”に遭ってしまったそうだ。本人に話を聞いた。

◆大学卒業前に出版社から内定

 ある雑誌を見て、版元である出版社A社の名前をネットで検索し、正社員を募集していることを知った市川さん。そのままネット経由で採用に応募した。

「私はあくまで正社員として雇ってもらうつもりで面接に行き、履歴書にも大きく『正社員志望』と書いたのですが、面接で『うちの会社は中途採用以外、アルバイトとして一定期間働いたあとしか社員になれない』という話をされました」

 市川さんが面接官に「一定期間ってどのくらいですか?」と聞くと、「それは会社の状況やその人の働きぶりによるからなんとも言えない」と一蹴されてしまった。

「『それってずっとアルバイトの可能性もあるってことじゃないのか』と思いましたが、他に内定もなく志望している職種だったので2回の面接後、アルバイトとして入社することにしました」

◆内定をもらってからアルバイトに

出版社

新卒で出版社に内定をもらった市川彩子さん

 仕事内容は主に取材への同行や細々とした雑用で、1日の労働時間は1時間休憩込みの8時間という一般的なものだった

 市川さんはA社に入る前に別の出版社でもアルバイトをしており、そこはドラマで見るような煌(きら)びやかな世界に近かったそうだが、A社は小さい会社ということもあり華やかな雰囲気ではなかった。

「とはいえ『憧れの仕事ができる!』と期待していたのですが、やりたかった編集の仕事はさせてもらえませんでした。それでも何か新しいことをやってみたいと考えていたので、自分から手を挙げて会社のWEBサイト運営を手伝わせてもらいました」

 そちらも取材をメインに歩合制で月4万円ほどもらっていたそうだ。市川さんは奨学金を借りており、アルバイトと合わせるとそれなりに収入もあったため生活には困っていなかったという。

◆4月に入って状況が一変

 一見順調なスタートを切ったように見えた市川さんだったが、4月に入って状況が一変した。

「アルバイトは月初めにその月の入れる日を提出して、その中から社員が出勤する日を決めるんですが、その連絡が来るのが前日とかだったんです。私は週5でフル出勤するつもりでシフトを提出していたのに、コロナの影響もあって入れる日はせいぜい週1~2回。これじゃ当然生活なんてできません」

 歩合制でもらっていた仕事のほうも「取材に行けない」という理由でなくなり、結局4月の給与は4万円ほどだった。大学を卒業し、奨学金ももらえなくなった中での収入4万円。家賃さえ払えない額だ。

「『他のアルバイトと掛け持ちしようか』と考えたこともありましたが、仕事に入れるかどうか決まるのが前日なのでそれもできませんでした。最初から少なめにシフトを提出することもできたことにはできたのですが、『なるべく多く出勤しないと社員になれないんじゃないか』という焦りもあり、勤務可能日を減らせませんでした」

◆結局水商売で食いつなぐしかない

落ち込む女性

「不定期で仕事に呼ばれるのが一番つらかったですね。せめて数週間前に勤務する日を教えてくれていたら、空いた日に他のアルバイトもできたのに」

 そう呟いた市川さんは結局、A社でのアルバイトが終わったあとでもできる水商売をしながら生活していたそう

「ただでさえ先の見えない毎日なのに、会話が苦手な私にとって水商売の仕事はすごくつらかったです。夜中の2時まで働いて、終わったあとは歩いて帰っていました。次の日に朝から取材が入っていることもあって、疲れているし、眠いし、全然集中できませんでした」

◆急な自宅待機命令

 それからすぐに会社から連絡があり、「来年までアルバイトは全員自宅待機」と言い渡された市川さん。その間の休業補償は一切なかったという。

「他にも大学を卒業してここに就職するつもりの子もいたのに。一人暮らしで収入がなきゃ生活していけないなんてこと、想像したら簡単にわかりますよね。会社は私たちアルバイトを使い捨ての道具としか思っていないんだなと思いました」

 会社内の人間関係は良好だったようだが、小さい会社だったためかなり社長のワンマンなところがあったそうだ。

「自宅待機命令が出たあと、何人かの社員は気遣いの連絡などをくれたのですが、社長からは何の言葉もありませんでした

◆運良く他の出版社に内定

笑顔の女性

 しばらくは落ち込む日が続いたそうだが、「これでは将来の見通しが立たない」と転職活動を始めた市川さん。数か月の転職活動のあと、他の出版社に内定をもらい、現在はそこで社員として働いているという

「お給料も前の会社とは比べ物にならないくらいいただいていて、水商売の仕事も辞められました」

 会社の人間関係にも恵まれ、楽しく仕事ができていると話す。

「確かに4月からの数か月間はつらかったですが、A社での経験を今の仕事に応用できることもありますし、全てが無駄だったわけではないと思っています。若いうちにこの経験をできたことが不幸中の幸いかな」

 市川さんの場合運良く転職することができたが、ただでさえコロナで陰鬱としたこのご時世に収入がゼロになったら……と考えるとゾッとする。大学生には、本当に納得できる会社なのかよく考えてから就職先を選択してほしい。

<取材・文/火野雪穂>

【火野雪穂】

1997年生まれ。映画好きのWEBディレクターです。絵心がありません。

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