手取り15万円の保育士「都内で一人暮らしは無理です」

bizSPA!フレッシュ / 2020年10月18日 15時45分

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手取り15万円の保育士「都内で一人暮らしは無理です」

 コロナ禍で、日常生活になくてはならない医療や介護の従事者は“エッセンシャルワーカー”として注目を浴びました。その1つでもある保育士は、働く子育て世帯にとってなくてはならない存在。その職場環境とはどのようなものなのでしょうか。

保育士

※画像はイメージです(以下、同じ)

 今回は都内にある私立の認証保育園で働く駒場朱莉さん(仮名・22歳)に話を聞きました。

◆アルバイトで貯めた費用で専門学校に

「私は高校卒業後、1年間、飲食店でアルバイトをして学費を作ってから、夜間の専門学校に入学しました。学校は2年で卒業し、都内にある保育園に就職しました。大手の保育園グループだったので安泰だと思ったんです……」

 しかし、いざ働いてみると激務のわりには給料がよくなかったといいます。

「額面だと18万円くらいで、そこから厚生年金や保険料など引かれていたので、手取りは15万〜16万円くらいでした。みんな手取りが低くて、都内では一人暮らしができなかったので、実家住まいや同棲組が多かったですね……。都内で一人暮らしをしていた同僚は、親から仕送りをもらっていました。仕送りをもらってまで働くのっておかしくない? と内心思いましたね」

 保育士は国家資格であり、取得するには学費がそれなりにかかるもの。さらに、なくてはならない職業であるにもかかわらず、待遇が不十分であることについて、朱莉さんは不満を漏らします。

◆自治体によって違う保育士支援制度

通帳 お金

 東京都では足立区や荒川区など、いくつかの自治体で奨学金返済支援事業が実施されています。例えば足立区には、奨学金を使って保育士資格を取得し、区内の私立保育施設に勤務する保育士を対象に、返済にかかった費用の2分の1(上限10万円)を補助してもらえる制度があります。

「奨学金制度で資格を取って、働きながら返している子もいます。“保育士の人材不足”などとニュースでよく聞きますが、うちの自治体には奨学金返済支援制度がないんですよね……。私は実家暮らしから同棲を始めて、3万円を家に入れています。ほかにスマホ代が2万円、毎月2万〜3万円くらいはメイクなども含めた身だしなみ代に使っています

 その他、家賃補助や養成施設への入学金の貸付制度などの導入は広がりつつありますが、現状では自治体によってまちまちです。

◆疲れて自炊できず、食費がかさむ…

 普段は、Tシャツの上からエプロンをし、ジーンズで働いているという朱莉さん。保育士のファッション事情はどうなのでしょうか。

「うちの園は都心にあるから、通勤している子も多く、意外とOLのようなきれい目なファッションを着ていますね。厳しい保育園だと、紺のスーツを買わされるところもあるとか。郊外にある保育園まで車通勤の友人は、ジャージ通勤らしいですが……」

 ランチなどは、園の給食で節約ができるのでしょうか。「うちの園は給食が出ないんです。自炊して弁当の保育士もいますが、私はサッと食べられる牛丼とか、コンビニのおにぎりを食べています」と、朱莉さんは語ります。

「夜も疲れてなかなか自炊できなくて、外食か買って帰るので、食費にだいたい月2万円使っています。仕事後は、打ち合わせがてら、同僚とファミレスで飲んだりしています。コロナ前は交際費も1万円程度使っていました。卒園や入園などの繁忙期だと、飲みに行ったりしないので、1万〜2万円は貯金できることもあったのですが、仕事のストレスを発散するために、イベントやライブや飲み会あたりで遊んでいたら、あっという間に赤字」

◆新卒1年目で担任! 保育士不足が慢性化

保育士

 月収が少ないのは、違法なサービス残業がまかりとおっているせいもあるそうです。

「常にサービス残業しています。家に持ち帰りの仕事も多く、ハロウィンなどのイベントの時は壁一面の創作物を作ったりもしています。早番、中番、遅番などいろんなシフトがあるので、生活リズムも不規則。特に早番だと7時始業なので、通勤も含めて5時起き。食事も忙しくて作っている暇がないので、パンやカロリーメイトをかじるだけということもザラです。いつも不眠気味だし、不健康だなって思いますよ(苦笑)

 ちなみに勤務年数などで、待遇などは改善されるのでしょうか。

「保育士は常に人手不足だから、新卒でも担任を任されたり、20代で主任、施設長になった子もいました。みんな、積極的になりたいというより、人手不足だから仕方なく……という感じです。施設長になっても、ヒラの保育士より数万円高いくらいで、責任が増すので、みんな嫌がっていましたね

◆結婚・妊娠で“肩たたき”も

 2019年に東京都が発表した「平成30年度東京都保育士実態調査」では、過去に保育士として働き、退職した人の18.1%が「結婚」、11.8%が「妊娠・出産」を理由に退職したと回答。実際、保育士は3年以内で退職する人も多く、朱莉さんは「続けられるか不安」と言います。

周りを見ると、うつ病になる子もいます。うちは都内の園なのでまだ月給が良いほうですが、他の県で働いている友人は、さらに手取りが低いと聞きます。よくニュースで見るようなブラック企業よりはマシだけれど、長くは続けられないなって思います」

 これから先、どのようなキャリアプランを検討しているのでしょうか。

「うちの園では、結婚や妊娠をするといわゆる“肩たたき”にあうと聞いています。結婚して、続けている先生も中にはいましたが、だいぶベテランの年齢でした。私には無理だなと悟ったので、寿退社を検討しています。ぶっちゃけ今の倍くらいのお給料、30万円もらえるならみんな続けられるんじゃないですかね……

 女性の多い職場で、結婚や妊娠をしても続けやすいイメージを持つ人も多いですが、そうではない現状もあるようです。巷で話題になる保育士不足。まずは待遇の改善が望まれています。

<取材・文/池守りぜね イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>

【池守りぜね】

出版社や、web媒体の編集を経て、フリーライターに。趣味は子供と一緒にプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ

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