“Youtuber養成校”に希望者が殺到、バンタン会長が語る55年の軌跡

bizSPA!フレッシュ / 2020年11月25日 8時47分

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“Youtuber養成校”に希望者が殺到、バンタン会長が語る55年の軌跡

 2021年4月に開校予定の動画配信クリエーターを育成する「バンタンクリエイターアカデミー」に、YouTuber(ユーチューバー)やマネージャー、動画クリエイターなどを目指す入学希望者が殺到しているという。

石川会長

株式会社バンタン ・石川広己会長

 運営する株式会社バンタンは、1965年にファッションデザイナーなどを養成する「バンタンデザイン研究所」を創立以来、ゲームクリエーター、パティシエなどクリエイティブ分野に特化した専門教育機関を展開してきた。

 2020年で創業55周年を迎えるが、意外にも学校法人ではなく、「世界で一番、社会に近いスクール」を掲げる企業法人だ。なぜ学校法人化しないのか、何を見据えているのか。「学校法人ではなく、企業だからできることがある」と訴える同社の石川広己会長に、“バンタンが目指すもの”を聞いた。

◆寺子屋のようなガレージから始まった

“ユーチューバー養成スクール”とも言えるバンタンクリエイターアカデミーが来年開校する。バンタンの手掛けるスクールはユニークなものばかりだが、創業当初から時代を先駆けていたようだ。

「当社は、創業者の菊池織部がデザイン事務所を経営する傍ら、1965年に『バンタンデザイン研究所』を創立したのがスタートです。東京・恵比寿のガレージで寺子屋のような形でデザインを教えるものでしたが、当時の日本では『デザイン』という言葉は浸透しておらず、世間のほとんどの人は『デザイナー』がどんな職業なのか分からない時代でした

 しかし、海外ではクリエイティブが重視され、すでにたくさんのデザイナーが活躍していました。でも、日本は彼らが生み出したデザインを模倣していただけ。菊池はこのままだと日本は遅れてしまう、デザイナーを育成する実践的な学びの場が必要だと考えたことが出発点でした

◆世の中にない学びの場を次々に開校

石川会長

「ユニークだと思われるスクールが多いのは、これまで世の中になかったスクールばかりだからだと思います。バンタンの創業以来変わらぬ精神は、現場に近い実践的な教育を提供し、新しい時代の中で求められている人材を輩出していくことです。

 1998年に開校したレコールバンタン(当時はバンタン製菓学院)もその一つです。当時は料理や製パン学校はありましたが、パティシエという職業に特化してお菓子を専門に学ぶ場はありませんでした

 来年開校するバンタンクリエイターアカデミーも、YouTubeやSNSなどソーシャルメディアで活躍するインフルエンサーの市場が拡大する中で、動画配信クリエーターやそれを取り巻く撮影・映像編集者などになるために専門的に学びたいニーズが高まっているのを受けて、開校を決めました」

◆転機は19年前にゲームスクールを作ったこと

バンタン

バンタンゲームアカデミーでの授業の様子

 面白いのは、確実にニーズがあるニッチな分野でスクールを展開している点だが、ターニングポイントはあったのか。

「私も創立に関わった1991年開校のバンタン電脳情報学院(現在のバンタンゲームアカデミー)です。私はIT系のベンチャー企業を経て、1985年に当社に中途入社しましたが、ちょうどその頃に創業者の菊池が『ファッションだけでなく、新しいスクールを作りたい』と考えはじめ、私が『ITとデザインの技術が必要なゲーム分野が面白いのではないか』と提案したことがきっかけでした。

 当時はゲーム=オタクのイメージだったので、社内では『そんなスクールを作ったら、“ファッションのバンタン”というイメージが崩れるからダメだ』という声が強かったのですが、『いいじゃないか。時代は変わっていくのだから、新しいものを取り入れよう」という菊池の鶴の一声で決まった経緯がありました。

 その後、バンタン製菓学院(現在のレコールバンタン)、バンタン映画映像学院(現在のバンタンデザイン研究所 映像デザイン学部)なども創立されました。菊池にはデザインと同じように、まだ認知度の低い分野で新たな可能性となる人材を送り出したいという、常に社会を意識した先見の明があったんです」

◆「学校法人」にはさまざまな制約が

 いずれも専門教育を行うスクールですが、なぜ学校法人ではなく、企業法人なのか。

「我々は『世界で一番、社会に近いスクール』を掲げていますが、そのためには学校法人では制約があるからです。バンタンの強みは、100%プロ講師による時代にスピーディーに敏感に対応した実践教育です。

 学校法人としての登記も可能ですが、そうするとカリキュラムの変更や新設コースの申請をするたびに文部科学省の許可を何年も待たなければなりません。それではビジネスチャンスや新たな人材のニーズが生まれている時に対応できず、大きなロスになってしまいます。

 また、当社のスクール全体で約600人の講師がいますが、それぞれの分野で現役で活躍しているスペシャリストばかりです。しかし、学校法人だと講師の半数以上が教員免許を持っている常勤講師でなければならない縛りがあります。

 リタイアした人が講師を務めることも多いようですが、10年以上前に活躍していた人では実践教育になりませんよね。100%プロ講師にこだわるためにも学校法人ではないほうがいいんです」

◆実践教育と実績にこだわり続けたい

 しかし学校法人ではないデメリットも少なくないはず。

「学校法人ではないため、公的な学位がないことをデメリットだととらえる人もいるかもしれません。それがネックになって、入学希望者の親御さんが入学を反対することもあるようです

 しかし、我々には創業55年の歴史とこれまでに社会の即戦力となる19万人以上の卒業生を世に送り出してきた実績があります。教育の成果がどれだけ出ているかを評価してもらった証として、卒業生が活躍している企業からは『バンタン新卒者の待遇は、短大卒以上を保証する』といった『認可証』を発行していただくケースもあり、多くの企業や業界から認められていると結果で証明しています。

 運営側としては確かにデメリットもあります。学校法人は非課税ですが、当社は企業のため、どれだけ社会に貢献する人材を輩出しても法人税を納めなければなりません

 また今回のコロナ禍では、学費を払うのが難しい生徒さんを支援するために当社独自の『学生支援緊急割引制度』を設けました。当初は国の『学生支援緊急給付金』を使えないか打診したのですが、文科省からは『学校法人ではない』ことを理由に拒否されてしまいました。いろいろ差別されることはありますが、それでもバンタンはあくまで実践教育とその実績にこだわり続けたいと思っています

◆人生100年時代で生き抜くには

バンタン

「どこでもスタディ」制度の開始により、好きな場所で受講できるようになった

「世界で一番、社会に近いスクール」を掲げ、直近でも世の中の変化に敏感に対応した様々な取り組みを見せている。今後はどのような方向に向かっていくのだろうか。

「バンタンが見据えているのは『個の時代』です。人生100年時代が到来し、生き抜くためにも継続的に価値を生み出せる人材になることが求められています。そのためには個々人が学び続けなければなりませんし、自分の好きなこと、得意なことをキャリアにすることが最適です。

 セルフラーニングがより重要になっていますが、コロナ禍によるリモートワークの促進、副業の解禁によるパラレルキャリアなど働き方も変化しています。そこで、IT専門スクール・バンタンテックフォードアカデミーでは10月から『どこでもスタディ』制度を開始しました。

 生徒は通学せずに、キャンプ場や海の近くのゲストハウスなど自分の好きな場所から授業に参加できるものです。いつでも、どこでも、どんな状況でも気軽に学べるのは、これからの新しいスタイルになるはずです」

◆オンラインでOB・OGと繋がれるイベントも

石川会長

「またセルフラーニングが進む一方で、セルフブランディング力やネットワークの構築も重要になっています」と話す石川会長。最後に若者に向けたメッセージをもらった。

「ネット上に情報はたくさんあふれていますが、それを聞きかじっただけではキャリアに繋げることも、自己プロデュースすることも大変です。ファッションでもユーチューブの世界でも、未経験者がそれぞれの分野で専門的な知識を持って活躍する人と繋がるのは非常に困難ですが、バンタンでは様々な業界で活躍するOB・OGと繋がるネットワーク『VantanConnect』によって、生徒や卒業生がコラボレーションしたり、就職にも繋げる予定です。

 今年12月には生徒、OB・OG、講師が集まる『バンタンオンラインサミット』も新たに開催します。我々が提供する学びの場という空間は、実践的に学ぶだけでなく、自身のキャリアを生かすためのコミュニティー形成の核にもなるはずです

『個の時代』において、学び続けようとする意欲を持つ人、キャリアチェンジを考えている人は多いと思いますが、バンタンという選択肢もあることを知っていただけたら幸いです」

<取材・文・撮影/中野龍>

【中野龍】

1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

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