“日本一”SBホークスのオンラインストア「コロナでも過去最高益」秘訣を運営に聞く

bizSPA!フレッシュ / 2020年12月30日 8時47分

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毎年行われるイベント観戦「鷹の祭典」仕様のマスク

 新型コロナウイルスの影響により、前代未聞のプロ野球の2020年シーズンは、福岡ソフトバンクホークスの4年連続日本一で幕を下ろした。日本シリーズでは2年連続で4連勝と、圧倒的な強さを見せつけて日本一を勝ち取ったホークスだが、好調だったのはチームの成績ばかりではない

ファナティクス・ジャパン松本隼氏

ファナティクス・ジャパン松本隼氏

 ホークスのグッズを販売する「ソフトバンクホークス公式オンラインストア」では、前回優勝時の2017年と比較して、グッズの売り上げがおよそ1.9倍と大幅に上昇。過去最高の売り上げを記録した。

 さまざまな事情により、今年は球場での観戦を控えるファンも多いなか、「これまでご利用いただけていなかった方にも、インターネットでのショッピングを楽しんでいただけるようになりました」と、サイトを運営するファナティクス・ジャパン合同会社のEコマース部シニアマネージャーの松本隼氏は、大幅に売り上げを伸ばした現状を分析する。

◆売り上げを伸ばせた理由は?

ホークス パーカー

日本一になった記念で発売されたパーカー(画像はファナティクス・ジャパン提供、以下同じ)

 球団とパートナーシップ契約を結び、2019年3月から「ソフトバンクホークス公式オンラインストア」を運営している同社。「今年も工夫をしながら、サイトを運営していこうと思った」という2年目のシーズンは、コロナ禍の影響により、開幕が延期。6月19日に3か月遅れで開幕を迎えたものの、無観客試合が続く状況が続いた。

「まず念頭に置いたのは『どうすればファンの心を満たすことができるのか?』ということ。このような社会状況下での事例はありませんでしたが、新しい需要を掘り起こし、ニーズに沿った商品を届けることを重視してきたことが、売り上げを伸ばせた背景にはあると思います」と、松本氏は今シーズンを振り返る。

 SNSなどで意見、要望をかかさずにチェック。社会変化によって生まれた新しいニーズをいち早く察知し、開発・発売されたアイテムは、多くのファンの心を掴んだ。

◆マスクに加え、エコバックやグラスも人気

ホークス トートバッグ

レジ袋有料化により、エコバックの需要も高かった

「今年2020年、特に大きく売り上げを伸ばした商品は『マスク』です。新型コロナウイルスの影響が出始めた頃から、ファンの声に応えてさまざまな種類のマスクをリリースしてきました

 日本一を決めた後にも、新デザインのマスクを販売し、おかげさまでこちらもご好評をいただいております。マスクについては、シーズン開幕前の2020年5月に球団への寄贈も実施。長いシーズンを戦う選手やコーチ、そしてスタッフの皆さんにもご愛用いただきました。

 あとはレジ袋の有料化に伴って、エコバッグの種類を増やしたり、マグカップやワイングラスといった自宅での試合観戦の需要も取り込んだ商品も取り入れました

◆自社工場を持つ強みをフル活用

鷹の祭典

毎年行われるイベント観戦「鷹の祭典」仕様のマスク

 今年、多くのスポーツチームが販売したものの、予約や抽選が必要となることも多かった。需要を満たすことができなかったマスクだが、ファナティクス・ジャパン社ならではの工夫が垣間見える。

「日本一が決定した11月25日の夜には、余裕を持って用意していたはずのマスクが一時的に品切れになってしまったのですが、商品部や生産部と即座に打ち合わせをして、追加の受注体制を整えていきました。急遽、『再生産』という形を取ってその夜のうちに再販したので、納期に若干の影響は出てしまいましたが、それでも最大限の需要を掴んで動くようにしています

 国内の自社工場と数多くのパートナー工場を持つ強みを生かし、商品の安定供給に努めたのだ。

◆日本一決定の瞬間からグッズ発売を開始

「リーグ優勝が現実的になってきた10月頃から関連商品の企画を始めました。その時には、優勝や日本シリーズ進出は決まっていないので、販売を予定している商品の登録などはあらかじめ済ませた後、戦況によってどこまでリスクを取るかを調整しながら、企画を進めていく形を取りました」

 その後、日本一決定の瞬間から記念グッズを販売。迅速な動きが好調な売り上げにもつながった。 

 昨今のスポーツ業界のトレンドが、高価格帯商品プランの販売だ。サッカーJ1リーグのヴィッセル神戸は1席30万円のVIP席、鹿島アントラーズはヘリコプターの観戦ツアーを25万円(時期によって価格は変動)で販売。プロ野球でも、埼玉西武ライオンズが本拠地のメットライフドームに来年春にVIP席の設置を決めるなど、各チームがラインナップの拡充を進めている。

 この傾向は、ソフトバンクホークス公式オンラインストアにおいても同様のようだ。

「記録を記念したボールや、記録に際した直筆サイン入りフォトなどを数量限定で販売しています。これらのアイテムはファンの関心も高く、4万〜8万円の高価格帯にも関わらず、すぐに売れてしまいます。安全に家まで配送してくれることなどから、オンラインでの購買率が高い点が、この高価格商品の特徴です」

◆これからスポーツビジネスを目指す人へ

ホークス パネル

選手が記録を達成した際などに数量限定で発売される

「ファンのなかには『価格が安いほうが嬉しい』という方も多くいらっしゃると思いますが、価値ある物を適正価格で提供することもビジネスの本質。一般的な価格帯のアイテムに加え、高付加価値のアイテムを企画し続けることも大切だと感じています」

 1年間の延期が決まった東京五輪も開催が予定される2021年。社会のなかでスポーツの存在感が一層高まっていくことになるだろう。それに伴いスポーツ業界に関心を持つ学生や、転職志望者も増えることが予想される。「自身もスポーツが好きだった」と語る松本氏に、この仕事のやりがいを聞いた。

「スポーツは、人の心を熱くします。その瞬間に関わり、サービスを提供出来ることは、この職種ならではの魅力と捉えています。一方で、スポーツはいつ『ホットな瞬間』が来るのか分からない。常にアンテナを張り、何かあった時にはすぐにアクションを起こし、売り上げに繋げないといけない点が大きなチャレンジです。

 私たちの仕事は、『ファンの心理を理解すること』が一番大切です。スポーツが好きだからこそ、さまざまな企画や商品を打ち出せる。これは、仕事を進めるうえでも大切な要素として捉えています。弊社の場合には、『スポーツが好きだ』ということを、採用時の条件に設けているんですよ」

◆来シーズンは「擬似体験の提供」を重視

ソフトバンク

※ソフトバンクホークス公式通販サイトより

 間もなく新年を迎えるが、来シーズンに向けた企画が早くも動き出しているという。松本氏に抱負を尋ねた。

私たちの社名である『FANATICS』(ファナティクス)には、『FAN』(ファン)という単語が入っています。『いかにファンを大切にするか』『ファンを熱狂させるか』を、弊社としてはとても重視していますし、その部分を我々が担っていると自負しております。今後も、ファンの皆さんが熱さを感じる瞬間や記録をタイムリーに提供していきたいです」

 冬の訪れとともに、新型コロナウイルスの感染者は増加傾向にあり、来シーズンのプロ野球も、ウイルス感染対策や、入場制限があるなかでの試合運営も考えられる。

「『コロナ禍』が続くという前提だと、『球場に足を運べないファンの方に、どれだけ疑似体験を提供できるか』という部分を重視したいと考えています。2020年シーズンは、球団OBの解説を聞きながら一緒に観戦できる『ZOOM観戦』キャンペーンを行いました。

 そして、新規顧客に対して来年も引き続きオンラインショッピングを利用していただけるように、メルマガなどで情報やニュースを発信して興味を持ち続けてもらうことです。これからも付加価値があり、ファンの皆さんにも満足していただける企画を考え、実現させていきたいです」

<取材・文/白鳥純一>

【白鳥純一】

エンタメ関係のイベントプロデューサーを経て、ライターとしての活動を開始。 編集業務のほか各企業のメディア運営などに携わる

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