流行りの詐欺「アポ電強盗」から、コロナ調査を装う強盗まで

bizSPA!フレッシュ / 2021年1月9日 15時46分

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流行りの詐欺「アポ電強盗」から、コロナ調査を装う強盗まで

 犯罪の手口は時代の流れとともに変化します。2000年代から息子になりすまして電話をかけてATMからお金を振り込ませる手口が多発して「振り込め詐欺」と呼ばれましたが、その後「未公開の株があって近々上場する」と嘘をついてお金を騙し取る金融商品詐欺など、詐欺のバリエーションが増えたことから「特殊詐欺」という名称になりました

電話 詐欺

画像はイメージです(以下同じ)

 前回の記事で紹介したように詐欺被害がなかなか減らない原因に、警察などの警戒や摘発に対して、組織的犯罪グループが新たな手口で応戦してくることにありますが、これまでに特殊詐欺のグループは、大きなパラダイムチェンジを2回してきました。

◆巧妙な手口により深刻な被害額が

 1つ目は、ATMからお金を振り込むという、非対面な方法で、お金を取っていた形から、家や公園などで直接にお金を受け取る、対面型へのパラダイムチェンジ。そして2つ目は、現金を騙しとるのではなく、お金のもととなるキャッシュカードを詐取するというものです。

 それにより2019年度の被害総額(警察庁/特殊詐欺認知・検挙状況等より)も約315億8000万円と被害は深刻で、1日あたりの被害額は8600万円を超えています

 とはいえ、警察の取り締まりにより、年々特殊詐欺の被害は減ってきているのも事実です。そこでお金やキャッシュカードを取りづらくなってきた犯罪グループは2019年より、第3のパラダイムチェンジを行い始めています。それが「アポ強盗」です。

◆アポ電の手口もマニュアル化している

電話 詐欺

 アポイント電話(アポ電)とは、詐欺を行う前にかける電話のこと。これまでは息子や警察などになりすまして電話をかけ、資産や家族の状況を把握した上で犯行を行っていたのですが、最近では「強盗」という手段を使いはじめています

 アポ電強盗自体は2018年頃から散見されていました。特にこれが世間の耳目を集めたのは2019年1月の東京都渋谷区初台の事件からです。

 この時は、事前に高齢者宅にアポ電をかけて、家に多額の現金があることを把握。そのうえで警察官を装った男3人が押し入り、約2000万円を奪いました。翌月にも同区にて別の高齢夫婦の家から400万円ほどが強奪されています。

 特殊詐欺の手口がマニュアル化されているように、アポ電強盗でも「電話をかけて家に現金があることを把握したところで、3人組で押し入る。そして家人の手足を縛り、金庫の番号を無理やり聞き取り、お金を奪う」という、どれも判を押したような手口になっています

 こうしたところから、この強盗は特殊詐欺から派生してきたものとみて間違いありません。強盗に押し入り、縛ったことにより、高齢の女性が死亡するという痛ましい事件も起きています。

◆SNSで隠語を使って実行犯を募集

 3つ目のパラダイムチェンジである「強盗」の手段を使うことで、犯罪グループは「お金を渡さなければ被害には遭わない」という詐欺から身を守る常識を覆してしまったのです。

 実行犯の多くは、特殊詐欺の受け子と同じように、SNSを通じた闇バイトとして募集されます。ネットを見ると「U」(受け子)「D」(「出し子」ATMからキャッシュカードを使ってお金を引き出す役)そして「T」(「たたき」強盗の隠語です)という文字を使っての募集もみられます。

 コロナ不況により仕事を失い、お金に困った人たちがSNSを通じて闇バイトに応募して、犯罪に走っています。彼らは警察に逮捕されてしまう存在ですが、この不況下では幾らでも代わりがいるため、詐欺グループとしては犯行をしやすい状況なのです。

◆ガス会社の点検を装う「点検強盗」も増加

インターホン

 さらに手口は進化します。2020年の夏ごろから、アポ電強盗に続き、点検強盗も多発しました。高齢者宅にガス会社を装った2人組が訪れ、家人がドアを開けるや否や中に入りこみ、手足を粘着テープで縛り、家にある現金とキャッシュカードを奪い逃走するというものです

 事前に「本日いらっしゃいますか?」と電話をかけてから犯行に及ぶパターンもありますが、多くは突然訪問する形を取ります。高齢者宅の名簿をもとにやってくる、ゲリラ戦術といえます。

 点検強盗が増加する背景には、「暗証番号は教えない」という注意が日本中で徹底されていることがあるかもしれません。

 カードを騙しとれても、暗証番号を教えてもらえないのでは、結局お金を引き出せず、詐欺犯にとっては犯行失敗ということになります。それを避けるために、刃物をつきつけてまで暗証番号を聞き出すことに固執するのでしょう。

◆最近ではコロナの調査を装うケースも

点検

 強盗被害に遭わないためには、業者が来て「点検させてほしい」と言っても、その場での訪問は了承しないこと。まずは相手が本当の業者なのかを正規の番号に電話をして確かめましょう。

 そして、もし怪しいと思ってインターフォン越しに追い返したとしても、安心しないことです。執拗に狙われて被害に遭うケースもあるからです。

 実際に、偽のガス業者を追い返したにもかかわらず、鍵のかかっていないところから室内に侵入される事件もありました。不審な人物の来訪があった場合、必ず家の戸締りの総点検と、警察に通報するようにしてください。

 ただし、ここ最近では「新型コロナウイルスの調査」と称する自治体職員を装うこともあります。時に高齢者と同居する家にも押し入ることがありますので、決して自分は大丈夫だと思わないようにして下さい。

 今後も第4、第5の手口が出てくるかもしれません。これで万全という対策がない状況では、自宅に振り込め詐欺対策用電話をつけるなど、被害に遭うリスクを減らすための術を、ひとつでも多く身につけられるかが大事になります。

<TEXT/悪徳商法ジャーナリスト 多田文明>

【多田文明】

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。これまでの勧誘先への潜入数は100か所以上。あらゆる詐欺・悪徳商法に精通している。多数のテレビ・ラジオに出演し、著書に『ついていったらこうなった』(彩図社)『だまされた!だましのプロの心理戦術を見抜く本』(方丈社) Twitter:@tadabunmei

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