元 Jリーガーの人気YouTuber。炎上しかけても「批判の声はあまり気にしない」
bizSPA!フレッシュ / 2021年2月6日 8時47分

元 Jリーガーの人気YouTuber。炎上しかけても「批判の声はあまり気にしない」
スポーツのなかでも、「花形競技」として若年層を中心に高い人気を誇るサッカー。その頂点であるプロサッカー選手は、結果を残せば数億円の年俸を得ることもできる。まさに、夢の職業だ。
那須大亮さん
しかし、大半の選手は億単位の年俸を稼ぐことなく現役生活を終え、選手生命よりはるかに長いセカンドキャリアを歩まざるを得ない。そんな厳しい世界で、数千万円の年俸を獲得し、現役引退後は登録者数は26万人を超える「那須大亮公式チャンネル」を開設したのが、横浜F・マリノスや浦和レッズなどで活躍した那須大亮さんだ。
前回の記事では、動画の制作体制や活動の目標について語ってもらったが、今回はスポーツ選手のセカンドキャリアに感じる課題や、若手ビジネスマンに伝えたいメッセージを聞いた。
◆違う角度からサッカー界を盛り上げたい
スポーツ選手のセカンドキャリアといえば、真っ先に思い浮かぶのが「指導者」の道だ。那須さんは指導者にはならなかったが、「興味はある」と語った。
「じつは、現役時代に『公認B級コーチ』という指導者の資格は取っています。ただ、JリーグのコーチになれるA級や、監督になれるS級ライセンスは取得しませんでした。プロレベルの指導者は、やはりサッカーに全身全霊を捧げなければなりません。ただ、私はほかにやりたいこともいろいろとあったので……」
しかし、指導者にならないにせよ、数ある選択肢の中でなぜYouTuberの道を選択したのか。
「プレーをしたり、指導したりするのではない角度からサッカー界を盛り上げたかったんですよね。YouTubeなら、普段サッカーをしない人、見ない人にもサッカーの情報を届けられます。将来的には指導者に興味もありますが、いまはYouTubeで人気になることに集中していますね」
◆日本代表に関する動画は注目度が高い
実際、那須さんの動画は100万回再生を超えるものも複数本あり、サッカーYouTuberとしては屈指の人気を誇るまでに成長している。ところが、過去にはサッカー日本代表の森保一監督に関連する動画を出した際、その注目度ゆえに異論が噴出。「炎上」しかけたが、現役時代に培った精神力で乗り越えた。
「いろんな意見の人がいて当然だと思うので、異論が出てくるのは仕方ないと思っていますし、皆さんが厳しいことを言われるのもサッカーへの想いがあってのこと。
ただ、私は万が一、森保監督が動画を見てくれた際、日本代表が先へ進むために参考になる情報を出したかったんです。結果として多くの批判も寄せられましたが、現役時代から批判の声はあまり気にしないようにしてるので、そこは大丈夫でした」
◆自分が成功すれば、選択肢も広がる
特異なセカンドキャリアを歩む那須さんが「スポーツ選手のセカンドキャリア」に感じる課題は、選択肢の少なさだ。
「もちろん、一生その競技にかかわるのもアリ。しかし、選手はどんどん引退していき、直接サッカーに関連する仕事の枠は減っていきます。
この状況でも『サッカー選手のセカンドキャリアはこうじゃなきゃ!』と固定観念にとらわれてしまうと、環境の変化に適応できません。だから、セカンドキャリアを歩むにあたっては柔軟な視点を持ってほしいですね。
異質なキャリアを歩む人たちがその分野で成功すれば、新たなセカンドキャリアの選択肢が生まれるじゃないですか。選択肢の少なさは大きな課題だと思っているので、引退後の選手たちには多様な働き方に挑戦し、後輩のための道を切り開いてほしいと思います」
◆選手としての経験を社会で活かすには
自身が所属していたJリーグにも、世界のプロスポーツと比較してセカンドキャリア支援策の物足りなさを感じる部分があるという。
「たとえば、野球のメジャーリーグで一定の期間活躍した選手には、引退後に年金が支給されます。もちろん、Jリーグの規模や収益を考えれば実現が難しいのは分かるのですが、引退後の生活保障を充実させてほしいという思いはあります」
残念ながら、国際的に見ても「引退後の生活」を保障してくれるプロスポーツはまれだ。こうした厳しい状況のなか、スポーツ選手がセカンドキャリアを上手に歩むための「コツ」のようなものはあるのだろうか。
「ゼロからリスタートするんじゃなくて、選手としての経験は活かすべきです。その経験をより社会で活かすためには、競技そのものや選手、競技関係者が人気になり、競技にかかわったことで得られる“対価”が大きくなる必要があります。動画はその役に立つと思っていて、競技はもちろん、裏方さんがもっと注目されるための情報も意識的に出してますね」
スポーツ選手のセカンドキャリアはシビアな問題だが、意識するタイミングは難しい。「早くから意識することで備えを万全にするべき」という意見もあれば、「現役のうちは競技に集中するべき」という声もある。
◆浦和レッズで知った「プロスポーツの本質」
「どちらにもメリットがあるので、その二択に正解はないと思います。ただ、その競技がどうしてプロスポーツとして成り立ち、誰に支えられて自分がプロとして活動できているのかといった『プロスポーツの本質』は、早めに知っておくべきですね。
私はそれを現役時代に知ったおかげで、YouTuberとしてサッカーを支える『サポーター』に向けた情報の発信に興味を持てました。
もちろん、チームに雇われていて、プレーを楽しみにしてくれるサポーターがいますから、選手として競技に全力を尽くすべきだとは思います。でも、次を見据えて学ぶ時間はあるはずです」
那須さんが現役時代に「プロスポーツの本質」に気づくキッカケとなったのは、2013年のJ1クラブ・浦和レッズへの入団だ。
「浦和は強豪チームで、なによりファンが熱いんですよ。だから浦和の街にいるとよく声をかけられるんですが、サポーターが『一緒に戦おう!』って言ってくれるんです。ほかのチームでは『週末頑張って!』という声のかけられ方をするので、そこで『そうか、サポーターも一緒に戦う仲間なんだ』と気づきました」
サポーターや裏方のスタッフ、スポンサーなど、「多くの人とともに戦っている」と気づいた那須さん。自分本位な生き方はできないと考えるようになり、それがYouTubeを通じて多くの人へ語りかけるスタイルへとつながった。
◆「痛み」が人間力を上げる鍵
那須さんには、動画を通じて視聴者に伝えていきたいことがある。
「私は、とにかくより良い動画を視聴者の皆さんに提供していきます。皆さんには動画を通じてサッカーに興味を持ってもらうのはもちろん、『サッカーにかかわる人たちはみんな仲間だ』と思い、その意識で選手やチームを応援するようになってほしいですね」
最後に、先駆者のいない困難な道を歩み、”サッカーYouTuber”という新たなジャンルを確立させた那須さんに、若手ビジネスマンへのメッセージを語ってもらった。
「皆さんにはそれぞれの目標があり、価値観があると思います。しかし、どんなビジネスにもサッカーにも通じる大切なものは『人間力』。スキルを学ぶのはもちろん、最後は人としての資質が大切になります。
そして、この力が伸びるのは『何かがうまくいかないとき』。私はよく『痛みを拾いに行く』と言いますが、この辛い状況でどうアクションを起こすかが重要です。辛くて痛いので、決していい時間ではありません。でも、その経験をどう学びに変えるかが、その後を左右するのではないでしょうか」
<取材・文/齊藤颯人>
【那須大亮】
1981年、鹿児島県生まれ。2002年、駒澤大学3年時に、大学生Jリーガーとして横浜F・マリノスに加入。2004年にはアテネオ五輪にも出場。東京ヴェルディ、浦和レッズ、ヴィッセル神戸などで活躍。現役時代から「那須大亮公式チャンネル」を開設。2019年12月の現役引退後からは専業YouTuberとして活躍
Twitter:@nasudaisuke02
【齊藤颯人】
上智大学出身の新卒フリーライター・サイト運営者。専攻の歴史系記事を中心に、スポーツ・旅・若手フリーランス論などの分野で執筆中。Twitter:@tojin_0115
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