コロナでラーメン店の倒産は過去最多。飲食店主たちの悲鳴

bizSPA!フレッシュ / 2021年2月14日 8時47分

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「天下一品」は中野店限定で「手軽にこってりスープ」(税込み150円)を販売。人気の鶏がらベースのスープに刻みチャーシューと刻みネギを入れて提供している

 緊急事態宣言で時短営業が続くなか、客が来なくて頭を抱える店と、月180万円の協力金で潤う店で格差は広がった。もはや壊滅状態と言われる業界の明日はどっちだ

飲食業界

なんでんかんでん社長・川原浩史氏/なんでんかんでんフーズ代表取締役。’80年代、環七沿いに「なんでんかんでん」本店をオープン。バブル期の東京に「博多ラーメンブーム」を広めた。現在は渋谷「肉横丁」にて経営中。タレントとしても活躍

◆老舗ラーメン店の数々が窮地に…

「2020年の1月から渋谷『肉横丁』に店舗をオープン後、コロナ騒ぎで2月以降の売り上げは50~10%以下に減りました。海外での店舗展開も中止になりました。解除後も、再オープンはしばらく様子を見ます」

 バブル期に一世を風靡した「なんでんかんでん」社長の川原浩史氏が嘆きの声を上げるのも頷ける。2020年一年間で倒産したラーメン店の数が46店(帝国データバンク)と、過去最多を更新。全国に名を轟かす有名チェーン店や老舗が次々と姿を消しているのだ。

「『スガキヤ』(本社:愛知県中区)などのチェーン店は客が対面になるテーブル席が多く、感染リスクが高いと敬遠されがち。それが店舗減の原因のひとつです」

 こう語るのは、年間700杯以上のラーメンを食べ歩く“ラーメン官僚”ことラーメン評論家田中一明氏。では、老舗と呼ばれる名店の数々が窮地に立たされてしまったのはなぜか。

「コロナで資金繰りが厳しかった店もあるが、その限りではない。例えば行列店の老舗『まる玉』の両国本店は、2020年の休業要請中に休業したまま閉店。コロナで気持ちが折れてしまったのでしょう。また、老舗店は店主がご高齢で、先の見えない2度目の緊急事態宣言を機に『そろそろ頃合いか?』という感覚で閉めるパターンもあります

◆新しい販路を開拓するチャンス

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「天下一品」は中野店限定で「手軽にこってりスープ」(税込み150円)を販売。人気の鶏がらベースのスープに刻みチャーシューと刻みネギを入れて提供している

 その一方で、新しい戦略を打ち出し、巻き返しを図るラーメン店も。大手チェーン「天下一品」常務の出路正弘氏は「中野店限定で『こってりスープ』の店頭販売を開始。これがTwitterで話題となり、遠方からも“天一ファン”が訪れるようになりました」と喜びの声を上げる。

 また、人気店「AFURI」では、テイクアウト・デリバリーを展開するほか、郊外店では「家族メニュー」「お子さまメニュー」を追加。ターゲットを広げることで集客を図っている。

「チャーシューのテイクアウトやネット通販用のオリジナルメニューなど、ラーメン業界は今、新しい販路を開拓するチャンス」

 前出の田中氏がこうラーメン店の未来に期待を寄せるように、試行錯誤している店の中には、連日行列が絶えない繁盛店も出始めている。

◆熾烈なラーメン競争、生き残るのは?

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田中一明氏

「客側の一回一回の外食の機会を大切にしようとする意識が強まったように感じます。例えば恵比寿『綾川』が提供する親鶏ベースの濃厚青竹手打ちラーメンのような、“この店のこの味”が客に強く求められている。これからは、ほかにない付加価値の高い、より創作性の高い味を出す店が生き残り、どこでも食べられるような特徴のない味を出す店は苦しくなるでしょう」(田中氏)

「薄利多売」が特徴であったラーメンビジネスは今、大きな転換期を迎えている。コロナ時代の“ラーメン生き残り戦争”を制するのは、並大抵ではなさそうだ。

 コロナ禍で飲食業界が頭を抱えているのは、売り上げだけではない。客足の減少や相次ぐキャンセルによるフードロスだ。とりわけ、素材の単価が高い高級飲食店は大打撃を受けている。

「年末はお客さんが伸びずロスが増えたので今は完全予約制。それでも当日キャンセルが多く仕込みをしていた品がムダになって困っている」とは恵比寿で高級焼き鳥店を営む河合雄介さん(仮名・42歳)。「『体調が悪い』と言われるとお金も取れません」と嘆く。

◆「年末に頼んだ在庫は廃棄した」

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写真はイメージです

 過去には「GoToイート」を悪用してポイントを稼ぐ詐欺問題や居酒屋の無断キャンセルで逮捕に至った事例も。こうしたキャンセル問題についてフードロスを研究する愛知工業大学教授の小林富雄氏はこう語る。

「日本人は気遣いをする国民性なのでキャンセル料を取ることに抵抗がある人が多い。なので政府がキャンセル料のルールを厳格化して、店の負担を減らすべきです

 また、高級フレンチでシェフをする吉岡卓三氏(仮名・50歳)は「今は休業中なので仕入れはないが、年末に頼んだ在庫は賞味期限になり廃棄した」と言う。これに対して小林氏は「飲食店は在庫を置きすぎている」としたうえで、「日本は欠品や品切れに厳しい。希少部位や季節の品などは欠品になっても仕方ないと思う習慣が高級店に行く客層にもっと浸透されるべきだ」と熱弁する。

「店側に関しては宅配サービスを柔軟に使ってロスを削減し、SNSで“量より質”のイメージをつける宣伝をするなど、ITを駆使してほしいです」

 最後に小林氏は国や自治体への要望として「時短営業の再検証をしてほしい。人数制限や滞在時間を制限すれば、20時閉店にしなくて済むのでは。通常通りの営業時間に変えれば、客足は増えてロスの心配も減る」と一石を投じた。コロナ禍が長期化し営業で手いっぱいの飲食店。ロス削減にはしばらく時間がかかりそうだ。

◆店からも国からも休業補償がもらえない

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繁華街では閉店の張り紙と空きテナントが目立つ。2度目の緊急事態宣言で見切りをつけた店の撤退は加速し、ゴーストタウン化は止まらない

「4月の緊急事態宣言で『国から補償金が支給されるみたいだから連絡を待ってくれ』とバイト先に言われ、『いつ営業再開してもいいように予定を空けて待機してほしい。待機代も出すから』とも指示されていましたが、結局お金はもらえませんでした」(32歳・男性・大手居酒屋)

「『休業補償として給与の半分は出す』と聞いていたのに、緊急事態宣言が明けても客足が戻らないことを理由にいつまでも支払われません。問いただすと『こっちの事情もわかってくれ。国の補助金が入ったら払うから』と懇願されました。
 そのくせ、オーナーは持続化給付金や協力金などの国の補助金を全部手に入れたあと飛んだんですよ。ありえないです」(45歳・男性・スポーツバー)

 アルバイトの休業補償がもらえないケースが多発している。事態は深刻で、厚生労働省が休業補償を支払うように企業に要請しても、応じなかった大企業が少なくとも25社あると判明。ラーメンチェーン「一風堂」のアルバイトが休業手当を求めて会社に団体交渉を申し入れたが、コロナ禍で無情にもアルバイトを斬り捨てる流れは今後も加速していきそうな気配だ。

◆シフト減を証明できるものが手元にない

「『シフトが出ている期間までの休業補償は出します。ただ、それ以降は難しい』と会社に説明されました。労働基準法に基づいてシフトを出していなくても補償対象になること、コロナの休業補償制度を利用してほしいことを嘆願書に書いて直談判しましたが『働いてないのにお金をもらおうなんて。法律をかさにかけてくるなら雇えない』と拒否されました」(27歳・女性・バーベキュー施設)

 この女性は、労働基準監督署に相談し、国から直接お金を受け取れる休業支援金・給付金制度を利用して月収の8万円をもらうことができた。だが、とりこぼされてしまうケースもあるようで――。

「手続きをやってみようといろいろ調べたんですが、シフトが減らされたことを証明できるものが手元に一切なくて、申請できませんでした。シフト希望の紙やタイムカードは店に回収され残っていませんし、給与は手渡しで給与明細もありません。
 お店は時短営業で1日6万円の協力金をもらえるのに、得をするのはお店だけ。今本当にお金がなくて口座に395円しかないんですよ。新しいバイトを受けてもコロナで全落ちしてます」(24歳・女性・カフェ)

 街には閉店や空きテナントが目立つようになり、その分だけ雇用が失われている。東京商工リサーチが中小企業を対象に実施した昨年12月の調査によると、飲食店の廃業検討率は3割を超えたという。緊急事態宣言が解除されても、まだまだ飲食業界の苦しみは尾を引くだろう。

<取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>

【田中一明】
“ラーメン官僚”としてメディア出演や執筆活動を行う。年間700杯以上のラーメンを10年間食べ歩く。通算1万6000杯。Webマガジン「食楽web」にて連載中

【小林富雄】
愛知工業大学経営学部経営学科教授。食品ロスについて専門的に研究しており、持ち帰り用の専用容器「ドギーバッグ」の普及活動も行っている

【週刊SPA!編集部】

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