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コロナ禍でも増益の「ヤマダ電機」強気な出店攻勢の背景

bizSPA!フレッシュ / 2021年2月26日 8時47分

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ヤマダ電機 Japanese electronic store @Tktktk

 新型コロナウイルス感染について最初に報じられてから約1年が経過しました。家で過ごす「巣ごもり消費」が増えた結果、業績が好調な企業とそうでない企業の明暗が出ています

家電

※画像はイメージです

 なかでも日本最大手の家電量販店チェーン「ヤマダ電機」は郊外への積極的な出店攻勢が見られました。本連載「ブラック企業アラート」では、「ヤマダ電機」の出店攻勢の考察を足掛かりに、その姿を分析します。

◆ヤマダ電機の連結業績推移

 まず、ヤマダ電機の連結業績推移を確認し、グラフにしました。ヤマダ電機の場合、売上額とその他の利益額に10倍以上の違いがあるので、変化が見やすいよう、売上額のみ右軸とし、その他の利益(営業利益・経常利益・当期純利益)を左軸としています。また、2021年3月期については「第3四半期(2020年12月末)」までの値である点に注意してください。

ヤマダ電機

図:ヤマダ電機の連結業績推移(決算短信より筆者作成)

 売上額については、2011年3月期までは右肩上がりで伸ばしていたものの、東日本大震災発生後の2012年3月期に落ち込み、それ以降2011年3月期の水準まで戻せていない状態です

 利益額についてもおおむね同様の推移ですが、特筆すべきは2021年3月期の値でしょう。先述の通り、2021年3月期は「9か月分」の値をグラフに示しているのですが、2020年3月期(12か月分)よりも高い利益額となっています。

 これは2021年3月期第3四半期の決算短信にて「①家電、家具、生活雑貨、住宅関連商品等、他社にない幅広のSPA商品拡充による利益貢献、②支社長制度による地域別のきめ細かい経営による売上高の最大化および競争力強化ならびにコスト低減、③都市型店舗の市場・商圏に合わせた売場構成の最適化、④リアル店舗の強みを活かした当社独自のEコマース事業等による成果です」と説明されている通り、需要の変化をとらえた企業努力の結果によるものと言えるでしょう。

 もっとも、2020年4~12月期はヤマダ電機を含む家電量販店大手4社が増益。巣ごもりやテレワークで、家電の販売全体が好調なのです。

◆なぜ郊外に出店攻勢をかけるのか?

 続いて、郊外に出店攻勢をかける理由について考察を進めます。ヤマダ電機の場合、ヤマダ電機単体の「面積別店舗数推移」のデータが存在していたため、こちらを用いました。

ヤマダ電機

図:ヤマダ電機単体の面積別店舗数推移(決算説明会資料 より筆者作成)

 2015年3月→9月の間に「688店舗→642店舗」と大幅な閉店をして以降、店舗数全体はほぼ横ばいで推移していたため、今回の「出店攻勢」への切り替えは大きな判断であると言えそうです。

 また、面積別の推移を見ると、3,000平方メートル以上の大型店の比率が最も多く、ヤマダ電機が郊外を基盤にしていることが数値の面からもわかります。大まかに、都市部のほうがテナント契約・地価の面から店舗面積が狭くなる傾向にあり、「大型店が多い=郊外店が多い」と判断できます。

 したがって、今回の出店攻勢についても「直近の市況の追い風を受けて、得意分野(郊外の大型店)で勝負をかけようとしている」と判断することができ、妥当な判断であると言えそうです。

◆大塚家具との提携で企業体制に変化

 ヤマダ電機といえば、大塚家具との業務提携や子会社化でも話題となりました。しかし、それ以外の企業の買収にも積極的であり、2020年10月1日に持株会社制に移行していることまではご存じでしょうか?

 本項目ではヤマダ電機と大塚家具との業務提携や、持株会社への移行を主軸に、プレスリリースや「決算説明会資料」をもとに、時系列でみていきます。

【2019年】
■ 2月15日:大塚家具との業務提携に関する基本合意が成立
■ 7月19日:大塚家具との業務提携に基づくコラボ店として、「インテリアリフォームYAMADA前橋店」をリニューアルオープン
■ 2月12日:「株式会社大塚家具」による第三者割当増資の引き受けを発表、12月30日に引き受け完了・子会社化

【2020年】
■ 3月16日:2020年10月1日に会社分割による持ち株会社制へ移行、商号を「株式会社ヤマダホールディングス」へ変更することを発表
■ 4月1日:取得価額の総額上限を500億円とした市場買い付けによる自己株式の取得を決議。代表取締役の異動並びに役員新体制を発表

 その他、株式会社家守りホールディングス(2019年4月11日)、株式会社センチュリー21・ジャパン(2019年7月17日)との業務提携や、株式会社レオハウスの子会社化(2019年3月24日発表)など、積極的な業務提携・買収を仕掛けています。

◆力強い意思決定の背景に「創業者」

ヤマダ電機

株式会社ヤマダホールディングスの山田昇代表取締役会長 ※画像は公式サイトより

 ここからわかることは、ヤマダ電機は家電販売にとどまらず、家具販売・住宅販売・リフォーム、果てはそれらに伴う保険・金融業も視野に入れているということです。大塚家具との業務提携は、そのグランドデザインの中における「目玉施策」と捉えるべきでしょう

 また、持株会社制は複数事業を運営する場合にメリットが出る制度であるため、ヤマダ電機が持株会社制に移行したのも自然な判断と言えます。

 これらの力強い意思決定の背景として、ヤマダ電機創業者の山田昇氏の存在が大きいでしょう。山田氏は1983年に群馬県で株式会社ヤマダ電機を設立し、2000年に東証一部への上場を果たしました。

 2008年に会長に退いたものの、2013年に上場以来2期連続減収減益となったことから社長に復帰し、黒字経営を維持し続けています。その他、東日本実業団陸上競技連盟会長・日本実業団陸上競技連合副会長も務めています。

◆有価証券報告書などからみえる現場

 では、現場の雰囲気や働きやすさはどうでしょうか。今回は有価証券報告書・公式サイトの情報・各種判例などからその姿に迫っていければと思います。

 まず、2020年3月期の有価証券報告書を確認しました。平均年収は445万円です。ヤマダ電機の場合は、2020年3月期時点では「提出会社=ヤマダ電機」であり、従業員数も連結1万9985人・提出会社1万539人であり、公表されている平均年収を「ヤマダ電機」事業の平均年収と判断してよいです

 令和元年の「民間給与実態統計調査」によると、給与所得者全体の平均年収は436万円となっており、「日本の平均並み」と判断できます。その他、正社員の女性比率・女性管理職人数・育児休業取得者数のグラフが公開されています。2020年3月期時点の値においては、

■ 正社員の女性比率:12.4%=2,487名÷19,985名
■ 女性管理職比率:3.2%=154名÷4,812名
■ 育児休業取得者比率(正社員における):1.2%=243名÷19,985名

 となっており、直近期であるほど数値は改善されているものの、日本における正社員・正職員に占める女性の比率が25.7%で、係長相当職以上の女性比率が13.7%(いずれも令和元年度雇用均等基本調査 より)であることを鑑みると、依然として改善が必要な状況でした。

◆ヤマダ電機の過去の判例

ヤマダ電機

ヤマダ電機 Japanese electronic store @Tktktk

 続いて、主だった判例を見ていきます。ヤマダ電機の場合、幹部社員が退職翌日に同業他社に転職したことで元従業員が競業禁止行為に抵触するため、会社が違約金を請求した件についての判決が2007年にありました。

 この場合、該当する従業員が店長も務めており、理事にも任じられていたことから、競業避止義務を貸すことに合理性があると認められ、従業員側に違約金の一部支払いを命じています。

 過剰な競業避止義務は判例でも無効とされるケースがありますが、今回のヤマダ電機のケースのように、その社員の立場によっては「合理的」とみなされる点があるので、総合的な判断が求められるでしょう。

◆ヤマダ電機「ホワイト/ブラック」度判定

ヤマダ電機:★★★☆☆

長時間労働

 一度縮小均衡したものの、順調に業容を拡大し、市況の追い風を受けて再拡大傾向にある企業です。縮小均衡していると言っても、2万人近い正社員を抱えて上場来黒字を継続し、コロナ禍においても増収を実現した経営手腕は評価できると考えられます

 また、家電量販店大手のヨドバシカメラ・ビックカメラとは異なる出店戦略により、確かな地盤を築き、郊外店舗の需要増を見越して、得意な分野で再拡大するというのも適切だと感じました。

 ただし、その一方で、年収水準が「高い」とは言い難い状況であることと、女性正社員として働く場合は他の大手と比べても「働きやすさ」の面で後れを取っていることが数字の面でも浮き彫りになってしまっている点が気になります。

 女性役員2人が任命されていることと、産休取得者数などの実数値は伸びている傾向にあり、「改善の意思」が明確ではあるので、今後に期待できればと思います。したがって、今回は最終的な評価を★3としました

<TEXT/アラートさん(@blackc_alert)>

【アラートさん】

ブラック企業を生き抜いた歴戦のプロダクトマネージャーが、公開情報からホワイトorブラックを判定し、率直な理由とともにお伝えします。twitter:@blackc_alert、note:ブラック企業アラート

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