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新卒で北海道網走に配属された28歳「流氷に感動したのは最初だけでした」

bizSPA!フレッシュ / 2021年2月27日 15時39分

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新卒で北海道網走に配属された28歳「流氷に感動したのは最初だけでした」

 地方転勤の有無は就職先や転職先を選ぶうえでの重要なポイント。ただし、全国に支社・営業所などを持つ企業でも、現在は総合職や一般職、本社採用かエリア採用などで転勤の条件は異なり、応募する段階で選べるようになっています

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画像はイメージです(以下同じ)

◆配属先はまさかの網走

「それはエントリーする時点で当然知っていました。けど、転勤ありの本社採用の総合職だと給料も高いし、昇進の可能性だってある。さすがに入社早々あんな遠くに配属されるとは思ってもいませんでしたけど」

 そう話すのは、全国展開する某大手メーカーに勤める松田洋輔さん(仮名・28歳)。新人研修を終えた後に告げられた赴任先は、なんと北海道の網走でした。

「入社1年目から地方勤務になる社員が多いことは知っていました。ただ、網走はウチの拠点の“僻地ランキング”があったら間違いなく上位に入る場所でした。地元の方が気を悪くしたら謝りますが…」

◆人に出会わない、めちゃくちゃ寒い場所

網走

網走郊外。街を離れると荒涼とした景色が続く(松田さん提供)

「赴任先は新人研修後に知りましたが、網走って聞いた瞬間に固まっちゃいました。まったく予想してなかった場所だったのでショックを受けているのが顔に出たんでしょうね。本社の方からは『食べ物はおいしいぞ!』とか励まされましたが、そのフォローが逆にツラかったです」

 ちなみに北海道を訪れたのは、家族旅行と大学時代の友達とのスキー旅行の2回だけ。それも行ったことがあるのは、札幌と小樽、旭川、ニセコくらいで網走を含む道東はまったくの未知の世界。「人が少なくて、冬はメチャクチャ寒い場所」くらいの知識しか持ってなかったそうです。

「現地には5月下旬に着任したんですけど、風が冷たいんですよ。最低気温が5度以下の日もあったし、日中25度以上の日が続いていた東京とは完全に別世界。しかも、網走って市なのに人口が3万5000人程度。私が生まれ育った埼玉県の町ですら4万人以上いたのに、改めてすごいところへ来てしまったと思いました」

 網走住民にとっては失礼な話ですが、確かに東京とのギャップは激しすぎました。

◆家でも外でも独りぼっち…

網走

網走市内の街並み(松田さん提供)

 職場は現地採用の事務員を入れてもスタッフはわずか5人。彼以外は全員既婚者で車通勤だったこともあり、仕事終わりに飲みに誘われることも滅多になかったそうです。

「家に帰ってもやることがなく、残業して時間を潰そうにも定時で終わる程度の仕事量しかありませんでした。会社の人以外には知り合いなんて誰一人いない土地ですし、自宅ではYouTubeを見るかゲームをするだけの半引きこもり生活。コロナ禍の自粛生活同然の暮らしを5年以上も前から先取りしてやってました(苦笑)

 網走の近隣には大きな街もなく、旭川までは東京-静岡間とほぼ同じ200キロ札幌に至っては東京-名古屋間に相当する340キロも離れています。そのため、滅多に行くことはなかったといいます。

「ただ、ちょっと郊外に出ると北海道らしい風景が広がっていて、次第にドライブはするようになりました。SNSで友達がコメントをくれるのがうれしくて道東の主要な観光スポットは赴任していた3年の間にほぼ全部回りました。いつも独りぼっちでしたけど」

◆知り合いゼロの土地での孤独な日々

 大学時代から付き合っていた彼女がいましたが、地方転勤で遠距離になって半年後に破局。一方的に別れを告げられ、網走には一度もきてくれなかったそうです。

「赴任中、現地に来てくれたのは両親が1回、それと友達が恋人との旅行のついで会いに来てくれたのが1回あっただけ。東京には3か月に一度、出張で本社に行ってましたが日帰りか1泊してとんぼ返り。平日だからなかなかタイミングが合わず、盆や正月に帰省したときくらいしか友達と飲むことができませんでした」

 オホーツク海沿岸部の冬の風物詩、流氷も昔は「死ぬまでに一度は見たい!」と思っていたそうですが、網走では毎年2~3月にかけて流氷が陸地に接岸。海沿いを車で走っていると黙っていても視界に入るため、感動は最初のうちだけで次第に飽きるようになったとか

「砕氷船っていう流氷観光用のフェリーにも何度か乗りましたが、周りは家族やカップルだらけで自分だけひとり。俺、こんなところで何やってんだろうって孤独感にさいなまれちゃって。春~秋はまだいいんですけど、冬は基本的に天気がどんよりしているからメンタル的にヤバかったですね」

◆辛かったはずなのに当時をよく思い出す

流氷

 網走赴任中はいつも「任期明けまであと○日」と数えるほど嫌だった松田さん。それでも今は当時のことをよく思い出すそうです。

「精神的にちょっと強くなれた気はしますし、それが仕事でも役立っていると感じる部分はあります。とはいえ、あのときに戻りたいとは絶対に思いません

 まあ、スマホで撮った当時の風景写真をたまに眺めていると癒されるっていうのはありますけど。今は婚約者がいるのでコロナが落ち着いたら今度は彼女と一緒に旅行に行きたいですね。赴任中にさんざん出かけた1人ドライブと違って、きっと楽しいんだろうなって(笑)」

 決していい思い出とは言えない地方での赴任生活ですが、自身を一回りも二回りも成長させてくれたのは間違いないようです。

<TEXT/トシタカマサ イラスト/デザイア恵利>

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中

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