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とにかく明るい安村、“話題の歌ネタ”誕生の背景を語る「情けないおじさんが好きなんです」

bizSPA!フレッシュ / 2021年3月29日 18時45分

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とにかく明るい安村、“話題の歌ネタ”誕生の背景を語る「情けないおじさんが好きなんです」

『有吉の壁』で見せる体当たりの芸が〈再ブレイク〉と話題になっている、とにかく明るい安村さん@yasudebu)。歌ネタでも「東京って凄い」「フリーダムまさ江」「ビッグアニー」など、名作を次々に生み出しています。

安村

とにかく明るい安村さん

 なかでも大きな話題になった『東京って凄い』は、「大都会の敗北者 安村昇剛」として、大人しかった自分が東京で裸芸をするまでの半生を独白スタイルで歌ネタにしたもの。2019年10月2日放送『有吉の壁12』の企画「ブレイクしそうなキャラ芸人選手権」で優勝し、昨年再放送されると、改めて反響を呼びました。

 有吉さんが「笑えてジンとくる」と評し、マツコ・デラックスさんも他番組で「泣ける」と言及。安村さんの「東京って凄い」が誕生したルーツを辿った前編に続き、後編では、具体的な歌作りのきっかけを語ってもらうとともに、安村さんが〈大切にしていること〉も明らかになりました。

 バリカンでまだらになった頭と、いつものパンツ1枚。その姿で、決死の形相をしながら「東京ってすごーい! 東京ってすごーい!」と叫び、北海道で控えめだった幼少期、親の離婚、そして上京……といった半生を振り返りながら、今では「恥ずかしげもなく/こんなことができる!」と踊り狂う2分弱のドキュメンタリーソングに、同番組MCの有吉弘行さんをはじめ、他の芸人も大絶賛。

 SNSでも〈芸人のブルース〉〈生き様を感じた〉〈沁みた〉など、安村さんの芸人魂に感じ入ったというが続出しました。

◆「東京って凄い」ができた背景

――歌ネタ「東京って凄い」ができたきっかけは何だったのでしょうか。

とにかく明るい安村(以下、安村):関西で『歌ネタ王決定戦』(毎日放送)っていうのがあって、優勝賞金が300万円なんです。昔、コンビ(「アームストロング」、2014年解散)で出て以来、ピンになってからはエントリーもしていなかったんですが、ふと、優勝賞金目当てに出ようかなと。

 エントリー数が多くないので、確率の高いギャンブルができると思って、2019年に歌ネタを作って考えて準決勝に出たのが、「東京って凄い」の元ネタです。

――なぜドキュメンタリー風に?

安村:僕は裸のイメージがあるので、まずは歌ネタも裸でやろうと決めたんです。それから何気なく、どうして裸で芸をするようになったんだっけって、生い立ちから振り返っていた時に、もうそれをそのままアカペラでドキュメンタリー仕立てにしたら面白いかなと。

 だって、自分の意志もなく、誘われるままに上京して、コンビをやってたんだけど解散して、一人で裸で変なことやってるって、もう意味分かんないじゃないですか。それで全く恥ずかしくない、これは東京のおかげだというオチです。

◆最初は全然ウケなかった

安村

「東京って凄い」の原型(とにかく明るい安村公式You Tubeチャンネルより)

――その時の手応えはいかがでしたか。

安村:『歌ネタ王』の準決勝で、「東京って凄い」をお客さんの前でやったら死ぬほどスベッたんですよ(笑)。

 でも、その時の映像をSNSで公開したら、芸人仲間が口々に「面白い!」って言ってくれて。1回ルミネtheよしもとでやった時もお客さんはウケなかったんですけど、裏で見ていた芸人たちは「面白い」って言ってくれたんです。

 そうだよなぁ、俺は面白いと思うんだけど、なんでお客さんにウケないんだろう、っていう話をしていましたね。

◆想定していたオチと予想外の「泣ける」反応

安村

――そして、『有吉の壁』で披露。『歌ネタ王』の後You Tubeで公開したものはにこやかな笑顔で歌っていますが、『壁』では鬼気迫る表情で、なりふり構わないスタイルが印象的でした。

安村:『歌ネタ王』の時のものより、尺を短くして構成しなおしました。ただ、『有吉の壁』でやった時は一日の流れがあったんですよね。

 その前のネタで、ボケのためにめちゃくちゃに剃った髪はざんばらだし、もう見た目から情けないヤツ感満載。それでもとりあえず一生懸命やるしかなくて、必死の顔になったんだと思います。見ていた芸人たちも、安村さんにしかできないネタですね、と言ってくれました。

――かまいたちを始め、芸人たちが次々にスタンディングオベーションをしていた他、パーパー・ほしのディスコさんやジャングルポケット・斉藤(慎二)さんがホロリとしていた様子も映し出されました。SNSでも「笑えて泣ける」と話題でしたが、テレビを見た人の反応を、実際に感じたことはありますか。

安村:『有吉の壁』が放送されてから、街を歩いている時に、若い女性とかから、「私も田舎から上京してきて…」なんて声をかけられるようになりました。自分の人生を重ねる人が結構いて、心の中にみんなそういう経験があるんだなあと知ったんですが、そんな風に、共感してもらえるつもりは全然なかったんです。

 本当は、「お前が勝手に上京してバカやってるだけで、それを東京のせいにしてるんじゃないよ、何東京のせいにしてんだよ!」っていうツッコミを期待したものなんですけど、おかしいなあ(笑)。

◆感動を呼んだ「フリーダムまさ江」「ビッグアニー」

安村

ビックアニー(『有吉の壁』公式チャンネルより)

――その後、『有吉の壁』では「フリーダムまさ江」や、「ビックアニー」という名作も飛び出ました。「フリーダムまさ江」は、芸歴1年目の主婦芸人・まさ江(49歳)が、「ポケットからきゅんです!」の音楽に乗せ、夫と出会った青春を振り返りながら「人生は一瞬です/やりたいことをやるんです」「家族の愛に/私はサンキューです」などと歌ったものでした。

安村:これは、年齢重ねてから、死ぬ前にはっちゃけたことやりたい、みたいな、お笑いとしては“あるある”のネタ。でもそのなかに「あー自由になりたい!」とか、自分の感情をめっちゃ入れちゃうのがまさ江です。いや、知らねえよ。自分の気持ち入れてくんなよ、みたいなオチなんです、自分の中では。

――「ビックアニー」はシリーズ化されるほどの人気になっています。仕事で怒られっぱなしの長男が、唯一の自慢として弟がたくさんいること、その弟たちのポイントとして「足速い」「友達多い」「よく寝る」といったことを紹介するネタ。家族愛に続いて、兄弟愛が「泣ける」と、これもまた話題になりました。

安村:「誰々と知り合いなんです」って謎の自慢する人、いるじゃないですか。その、自分じゃない人で自慢する情けなーい感じを、弟の「数」でやろうと。弟がたくさんいることだけを凄いって自慢してるのって、とんでもなく情けないやつじゃないですか。そのしょうもなさが面白いなと。

◆「“情けないおじさん”が好きなんです」

安村

――お話を聞いていると、「情けない」ということが安村さんのキーワードなんでしょうか。

安村:確かに! 言われてみれば、僕、そういう映画が好きなんですよ。おじさんが情けない映画。

 ジャック・ニコルソン主演の『アバウト・シュミット』っていう映画があるんです。仕事命だった主人公が定年になって、ぼんやりしている間に奥さんが急に死んじゃって。部屋は散らかるし、奥さんと親友の浮気が発覚したり、踏んだり蹴ったり。

 キャンピングカーで遠くに住んでいる娘の結婚式を手伝いに行くんだけど、娘からは断られて…。そういう“情けないおじさん”が好きなんですよね。それが、僕のネタにもどこかにじみ出ているのかもしれません。

 余談ですけど、前住んでいたアパートが、周囲に居酒屋が多くて、夜うるさかったんです。ある時、べろべろに酔っ払ったおじさんが、僕のアパートの前で立ちションしながら、一人でブツブツ喋ってたんですよ。そこで僕は窓をすこーし開けて、「おい、お前だよ!」って(笑)。

 酔っ払いがびっくりしてキョロキョロするのを見ながら、「何やってんだよ、おい、お前だよ~」って話しかけて。めちゃくちゃ面白かったですね、そのおじさんの情けない感じが(笑)。

◆『有吉の壁』で融合する「中堅芸人」と「若手」

安村

――『有吉の壁』は、安村さんの他にもパンサーやジャングルポケットの面白さが再注目されるなど、「中堅芸人再生工場」と話題になっています。

安村:おじさんたちが生き生きしているのは確かですね。おじさんたちがワ――ッと勢いでネタをやって、ごまかすみたいな(笑)。タイムマシーン3号とか、U字工事とか、そういう人たちがちゃんと面白い。

 僕、テレビに初めて出た時にU字工事さんが一緒だったんですが、そういう人と今また一緒にやってるのが嬉しいですね。四千頭身とか、若手ともすっごい話しますよ。移動の車中も、俺がうるさくて寝られないとか、他の芸人から苦情を言われるくらい(笑)。世代を超えて、同じ立ち位置で“勝負”できるというのは楽しいですね。

――将来こんな風になっていたいというような、目指す姿はありますか?

安村:やっぱり「情けないおじさん」ですね。いつまでも、「何やってんだよ、おじさん」って言われるのが理想です!

<取材・文/吉河未布 撮影/内海裕之>

【とにかく明るい安村】
1982年北海道生まれ。2000年、NSC東京校6期でお笑いコンビ・アームストロングを結成。2014年に解散後、ピン芸人に。翌年『R-1ぐらんぷり』の決勝に進出。決めフレーズの「安心してください。はいていますよ」は、ユーキャン新語・流行語大賞トップ10に選出された

【吉河未布】

編集者・ライター。ネットの海の端っこに生きています。気になったものは根掘り葉掘り

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