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毎日新聞、かっぱ寿司まで。コロナ禍で相次ぐ「大企業の中小企業化」の背景

bizSPA!フレッシュ / 2021年4月6日 8時46分

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毎日新聞社大阪本社ビル ©︎soraneko

 毎日新聞、JTB、スカイマーク……。多くの人が一度は名前を聞いたことがあるであろう日本を代表する大企業だ。しかし、名前をあげた企業の全てが資本金を1億円にまで減資して、税法上での中小企業となるケースが続いている

JTB

©︎tamayura39

 この3社の他にも、「かっぱ寿司」を経営しているカッパ・クリエイト株式会社、居酒屋の「庄屋」の株式会社大庄、同じく「居酒屋 はなの舞」のチムニー株式会社なども中小企業化。飲食業大手においても、中小企業化の流れが顕著だ。

 これらの企業はなぜ中小企業化を選択したのか、また今後も同様のケースは続くのか、そして社会全体にはどのような影響があるのか。株式会社森経営コンサルティング代表で経営コンサルタントの森泰一郎氏に話を聞いた。

◆中小企業化の背景には巨額赤字?

 森氏によると大企業が中小企業化する理由は大きく2つに分けられるという。

「1つは資本金を減資し、欠損の補填をしたり配当を維持するため。もうひとつは節税・補助金の活用です」

 そして、今回の中小企業化の流れでは「前者の理由が大きい」というのが森氏の分析だ。つまり、資本金を減らさざる負えないほどに赤字が拡大してしまっている

「日本企業の多くは業績に関わらず安定配当を行う企業が多くあります。当然、巨額の赤字になっていると配当の資金源がなくなってしまいます。そこで減資によって配当の資金源を作り出すということです」

 冒頭で紹介したJTB、スカイマークは観光業と航空業。そして、カッパ・クリエイトなどは飲食業なので、いずれもコロナによるマイナスの影響が大きい業種だ。中小企業化の背景には森氏の分析通り、赤字の影響があるのではないだろうか。

◆大企業は支援が充実していない

札束

画像はイメージです(以下同じ)

 大企業が中小企業化する理由には、大企業の状態を維持することが難しくなってきたという懐事情が前提としてある。その上で、森氏が大企業があげた2つ目の理由「補助金の活用・節税」についても紹介したい。

「コロナ禍で中小企業しか活用できない補助金が多数整備されていますが、それらは大企業では受けることができません。減資をすること(中小企業化することで)で補助金を受け取ることができるようになります

 中小企業であれば日本政策金融公庫・商工中金等における貸付を数億円の規模で受けることも可能だ。しかし、大企業に対してはコロナの助成金や支援が充実しておらず、特に貸付に関する国の支援は今のところ用意されていない。

 また、中小企業は大企業よりも税金面でも優遇されているという。

「中小企業は繰越欠損金が活用できます。これは赤字の後で黒字転換した場合でも、一定期間および一定額までは過去の赤字と今年の利益とを相殺し、税負担を軽くできる制度です。この制度の活用により税金の支払いによる現金の減少を抑えることが可能です」

 コロナ禍における助成金や支援、そして税金面での優遇。こういったメリットは中小企業化を後押しする要因としてあるのではないだろうか。

◆考えられるデメリットは2つ

 こうしてみると、業績が落ち込んだのなら中小企業化するのは悪くはない道のように思える。一方で、中小企業化するデメリットはあるのだろうか。この点についても森氏は指摘する。

「会社の業績不振を公にしてしまいますので、会社の信用力(銀行、取引先)が減少するケースがあります。顧客からのイメージダウンにもつながるでしょう」

 まずあげられたのは対外的な評価だ。当然ながら中小企業よりも大企業のほうが信用がある。信用力の低下は避けられないだろう。そして、もう1点として企業の内部的な問題があげられた。

「日本人の中には『大企業だから』という理由で働いている人も多く、中小企業扱いになることで、社員のモチベーションダウンに繋がり、退職につながる可能性があります

◆政府の負担は増えるのか?

辞表

 企業としての魅力が減少することにより、就職の選択肢から外れたり、また離職する人が増えるということが考えられる。実際に「減資した企業の早期退職優遇制度を見ると、定員を遥かに超える人が応募しています」と、すでにその影響が出ているというのが森氏の分析だ。

 大企業が中小企業化することによる経済や社会全体への影響はあるのだろうか。

「大企業には使えない補助金を中小企業であれば使えるという点で政府の負担は増える可能性があります。ただし財源として大きな増加ではないため軽微に留まると考えられます

 国家レベルで見た時に、補助金としての歳出が数億円、もしくは数十億円増えたとしても大きな影響はない。仮に補助金を目的とした中小企業化のケースが続いても、その事自体で経済が揺らいでしまうということはなさそうだ。さらに、森氏はこのように続ける。

「中小企業白書2020年によれば、事業所別で99%の企業が中小企業となっていますので、社会に対する影響も小さいものと考えられます」

◆大企業にも厳しい冬の時代が

毎日新聞社大阪本社ビル

毎日新聞社大阪本社ビル ©︎soraneko

 大企業は認知度も高くどうしても目立ってしまうが、企業全体で見ると非常に少数である。その大企業の一部が中小企業化することになっても、すぐには社会や経済に大きな影響が出る心配はないという。

「(中小企業化は)全般的なトレンドというよりもコロナ禍で業績の厳しい特定の業界に限られると思います」

 相次ぐ中小企業化は社会や経済に大きな影響を及ぼさないというのが森氏の分析だが、中でも特に気になったケースがあるという。

「毎日新聞社です。新聞社といえば寡占化されており、日本の大企業の典型という存在でしたが、コロナ禍で広告費等が抑制されたこともあり、資本金42億円から1億円へと減資すると発表しています

 観光業や飲食業と比較すれば、新聞社はコロナの影響は小さいと思われる。しかし、この間に五大全国紙のひとつにも数えられている毎日新聞社が中小企業化を発表。

 森氏は毎日新聞の中小企業化を「大企業にも厳しい冬の時代がやってきたのではないか」と分析している。飲食業や観光業以外の大企業においても厳しい状況に置かれる事が今後増えてしまうかもしれない。

 現状においては、中小企業化は業種も限定的でかつ、直近で社会や経済への影響は少ない。しかし、毎日新聞社のような中小企業化が続くとしたらこれは風向きが変わってくるはずだ。

<TEXT/菅谷圭祐>

【菅谷圭祐】

大学受験情報誌、IT情報サイトなどでライター経験を積み、2018年よりフリー。最近の趣味は休日の農業、リサイクル業も兼業 Twitter:@sugaya_keisuke

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