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中古スマホは本当に安心なのか?伊藤忠30代社員が設立「売買サイト」への思い

bizSPA!フレッシュ / 2021年6月11日 8時47分

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中古スマホは本当に安心なのか?伊藤忠30代社員が設立「売買サイト」への思い

 通信各社から新プランが登場し、スマホの通信料については選択肢が大きく広がった。しかし、通信料が下がったからこそ、端末価格の高さが気になっている人も多いのではないだろうか。

iPhone12 スマホ

画像はイメージです

 スマホを購入するときの選択肢のひとつとして、近年、中古市場が成長をみせている。伊藤忠商事の社内ベンチャーとして中古スマホの販売を手がける株式会社Belong代表の井上大輔氏に、中古スマホ市場の現状やスマホをお得に購入するための考え方を聞いた。

◆「分離プラン」の義務化で状況が変化

 井上氏は新卒で伊藤忠商事に入社し、2019年2月に同社の100%グループ会社としてBelongを設立。iPhoneを中心とした高価格帯の中古スマホをオンラインで販売する「にこスマ」の運営を手がけている。

 スマホの通信プランと端末の関係は、「ガソリンと車」のようなものだと井上氏は話す。

通信プランがガソリン、端末が車だとすると、日本では長年、ガソリンと車がセット販売されている状況でした。最近はガソリンにあたる通信プランについては低価格なものが増えた一方で、車である端末については依然として高価なものが多く、市場の変化がなかなか生まれない状況があります」

 通信料金と端末本体の価格を分ける「分離プラン」が義務化されたのは2019年。それ以前は、プランとセットで購入することで端末が大幅に値引きされるケースが多く、ほぼ無料で端末を入手できる「1円スマホ」も珍しくなかった。通信料金と端末の本体価格が別に表示されるようになったことで、「実はスマホは高い」ということが可視化されるようになったかたちだ。

◆iPhone 11と12の違いを説明できる?

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株式会社Belong代表の井上大輔氏

 そして、これ以外にも中古スマホ市場を後押ししている要因があると井上氏はいう。

「もうひとつの理由は、端末の進化速度が鈍化してきたことです。一昔前のスマホ、たとえばiPhone 3GSから4になった頃は端末性能の進化が速く、1世代違えばまったく別物というくらい圧倒的な差がありました。一方で、最近の機種であるiPhone 11と12の違いをきちんと説明できる方はあまりいないと思います。数世代前の機種でも性能面に大きな差がないのならそれで構わないと考える方が、中古購入という選択肢を視野に入れるようになっているのだと思います」

 さらに、セカンドストリートやメルカリをはじめとした中古販売サービスが広く認知され、中古品を使うことに対する心理的なハードルが下がってきたこと、それに加えてSDGsなどへの注目が高まり、環境への配慮という面で中古を支持する人が増えたことも影響しているという。

◆一旦はペンディングしたが…

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井上氏とCOOの清水氏が海外駐在中に事業を構想。現在はGoogle出身のCTO福井氏、リクルート出身のCMO正脇氏の4人がOfficerとして経営に携わる

 井上氏が中古スマホ販売事業についての着想を得たのは、アメリカに駐在しているときだったそうだ。

「2014〜16年ごろ、私が東海岸のニューヨークに、一緒にBelongを設立したCOOの清水(剛志)が西海岸のシリコンバレーに駐在していました。現地のさまざまなスタートアップや新しいトレンドに触れるなかで、中古スマホのeコマースが伸びていることに注目し、日本でもできないかと考えるようになりました

 しかし、当時の日本はまだ分離プランがスタートしておらず、「1円スマホ」が台頭していた時代。また、メルカリなどのリユース市場も今のように広く支持される状況ではなかった。そのため、日本での中古スマホ事業は時期尚早だと考え、一旦ペンディングしたそうだ。

「帰国後しばらくは別の案件に関わっていましたが、数年すると先ほどお話ししたような中古スマホ市場を後押しする要因が大きくなってきたことを感じるようになりました。始めるなら今だと思い、会社を辞めて起業することも視野に方向性を検討するなかで、伊藤忠商事から全面的にバックアップするから一緒にやってこうと声をかけてもらい、社内ベンチャーとして進めることになりました

◆最初は「手作り感満載」だった

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2019年に会社をスタート。オンライン専業で中古スマホを販売する。※画像は公式サイトより

 今年(2021年)で設立3年目となる同社。売り上げに関しては順調に成長しているとのことだが、スタート当時は「手作り感満載」だったと井上氏は話す。

「親会社がB to Bメインの総合商社なので、個人向けのオンライン販売の経験はあまりなく、ウェブサイト作るところから手探りの状態でした。実は初月に売れたスマホは5台だけだったのですが、その5台を箱につめて宅配業者に連絡して出荷する作業も、検査を行うオペレーションセンターを立ち上げた際のセンター内で使う棚の組み立ても、すべて私と清水の2名で行っていました

 システム面でも、当初はエンジニア不在のなかでサイトを開発していたため知見も十分ではなく、作ったサイトが思い通りに動かないといったトラブルもあったそうだ。現在はGoogle出身の福井(達也)氏がCTOに就任したことで、安定した運用が行えるようになっているという。

◆実店舗と同じ安心感を感じてほしい

 端末は、海外にも多くのコネクションを持つ総合商社の強みを生かして国内外からの安定的な仕入れを実現。国内については、格安SIM業者と連携し、「Belong買取」のサービス名称でユーザーから直接買い取りを行っている。

オペレーションセンターでは、機能面の検査などに加えて目視による入念な外観チェックを実施。※画像は公式YouTubeより

 これらの端末は神奈川県の座間のオペレーションセンターで検査・検品を実施しているが、同社はこの検査体制にも注力。その工程は、ツールによる検査、データの消去、カメラやスピーカーの動作確認、外装を整えて消毒をする作業など多岐にわたり、多いときで200人の体制で検査を行っている。

「端末内部の検査についてはツールを使って自動化し、外観は1つひとつ人の目で確認したうえで消毒を実施するなど、自動でできる部分と人の手でやるべきところをきっちりと分けています。スタッフは、最初は検査工程のなかでも比較的シンプルな検査ツールを使った作業などからスタートし、習熟度に応じてより高い精度の求められる作業を担当するようになります」

 作業後にダブルチェックを行うことで、作業スピードに加えて正確な検査ができているかについても評価し、社内で熟練した人材を育成できる体制を整えているという。もっとも人間の目に依存する最終工程の外装チェックに関しては、一定の成果を出したスタッフだけが担当しているそうだ。

 また、販売にあたっては「三つ星スマホ」という独自の指標を設け、「SIMロックやネットワーク利用制限がなく、どの通信キャリアでもすぐに使える」「外観の状態が良い」「機能不良がなく、バッテリーの最大容量が80%以上」の3条件を満たしたものだけを扱っている。

「商品ごとの販売ページには、バッテリーの最大容量を明記し、360度各方位から撮影した写真も掲載しているので、細かい状態まで確認したうえで購入いただけます。オンライン専用だからこそ、実店舗と変わらない安心感を感じてほしいと考えています

◆「中古スマホは少なくとも現在の3〜4倍まで伸びる」

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にこスマでは、iPhoneを中心とした高価格帯スマホの中古品を販売。売れ筋は2〜3万円のiPhone 8だという

 日本での中古スマホのシェアは、スマホ販売全体の5%程度だという。一方で、アメリカの場合は15〜20%。また、日本でもPC市場は中古比率が20%程度と言われている。このことから井上氏は「日本の中古スマホは少なくとも現在の3〜4倍まで伸びる」と予測する。

「最近は中国メーカーなどから低価格な端末が出ているので、そういったスマホを新品で購入したいという方もいるでしょうし、中古でもよく知っているブランドのスマホを使いたい方もいらっしゃると思います。今後はさらに端末選びが多様化していくと思うので、中古がその受け皿のひとつになれたらと考えています

◆高くても安くても、納得して使うことが大切

 そして端末を選ぶにあたっては、価格の高低にかかわらず「本人が納得したものを買う」ことが重要だと井上氏は話す。

「自分のスマホはちょっと高いなと、モヤモヤしている方は多いのではないでしょうか。中古スマホと格安SIMは、そのような方にとっての選択肢になると考えています。逆に、新品の高価格スマホであっても、その価格や性能に満足して支払っているという場合は、もちろんそのままで構いません。モヤモヤしたものに高額なお金を出すのではなく、各自が納得したものに対して納得した金額を払って使う状態が理想だと思います

 今後は、現在主力となっているiPhoneに加えて、Android端末やタブレットを拡充したり、初期不良の返品保証期限を長くしたりするなどして、プロダクトラインナップとそれを支えるサービスの両面を強化してきたいとのことだ。

◆まずは「自分ができることから」

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 社内ベンチャーという形で、かねてから構想していた事業を形にした井上氏。これから起業や独立を考えている人へのアドバイスを聞いた。

「起業などの目標があり、そのためにスキルを身につけたい、学びたいと思っているなら、小さいことで構わないので何かやってみる、飛び込んでみることが大切だと思います。私の母が大阪小さなパン屋を開いているのですが、週末を利用してそのウェブサイト作ったり、アクセス解析を見たりすることを通して、ウェブの仕組みを学ぶことができました。身近な場所でもそういった小さなことを勉強できる機会は結構あると思うので、できることから始めることをおすすめします

 また「人生は自分のコンプレックスと向き合う旅」とも話す。そのコンプレックスも、一歩踏み出すためには大切だという。

「実は私は、いつかは起業したいと思いながら、経営者の人たちに対して自分がサラリーマンであることにコンプレックスを感じていました。会社の立ち上げを通じてそこから一歩踏み出したことで、たくさんのものを得られたと感じています。コンプレックスがあるのは、“そうなりたい”という思いを持っているからこそなので、そのコンプレックスを大切に、小さな一歩を踏み出すことが次につながると思っています」

<取材・文/酒井麻里子>

【井上大輔】
伊藤忠商事入社後、情報通信業界における事業会社の経営管理およびM&Aを担当。携帯サービス事業会社のM&A、アジアでの携帯ファイナンス事業立ち上げなどを経て、ニューヨーク駐在中、携帯事業者との協業推進時にBelongを構想し、2019年にBelong設立、2020年に同社代表取締役就任。

【酒井麻里子】

スマホやPC、ガジェットといったデジタルアイテムや、ビジネスに役立つアプリ、日用品などに関する記事を執筆。Twitterは@sakaicat

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