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待機するだけで通報される“外国人UberEats配達員”の嘆き「不法滞在者なんかいない」

bizSPA!フレッシュ / 2021年6月15日 8時46分

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飲食店前で待機するベトナム人配達員。一日に何度も通報されることもあるという……

 繁華街の飲食店の前でたむろする「ウーバー地蔵」。すっかり街の風物詩になったが、迷惑行為だとマスコミに責め立てられている。なかでも外国人に向けられた攻撃は苛烈だ。当事者たちはどう思っているのか聞いてみた。

ウーバーイーツ

写真はイメージです/Shutterstock

◆帰国できない留学生たちに残された最後のバイトだった

 コロナ禍で急激な成長を果たしたフードデリバリー業界。大手外食チェーン店の前で注文を待ちながら“地蔵”と化す配達員の姿も日常の風景となった。なかでも目立つのが外国人の姿だが、一部の日本人からは反感の対象となっている。都内在住の30代女性はこう話す。

「夕方、駅からの帰り道に、配達バッグを持った東南アジア系の外国人が5、6人いつもたむろしていて正直、怖い。先日も禁止されているのに歩道橋に上がるエレベーターに自転車にまたがったまま乗ってきた人もいた」

 SNS上でも反発の声は広がっているが、なかには心ない排外主義的な投稿も散見される。

「どこの馬とも知れん外人が運んできたメシなんかよう食えるな」
「あいつら全員不法滞在だろ。警察はウーバー外国人に職質しろ」

ウーバーイーツ

※書き込み内容を一部、修正・要約しています

◆街角のベトナム人配達員に話を聞いてみた

 ウーバーイーツをめぐってはベトナム人を中心に不法就労の外国人配達員を非難する報道も散見されるが、本当のところはどうなのか。記者は、街角のベトナム人配達員に話を聞いてみた。

ウーバーイーツ

飲食店前で待機するベトナム人配達員。一日に何度も通報されることもあるという……

 池袋駅西口のマクドナルド前で待機していたベトナム中部出身の男性(24歳)はこう話してくれた。

「語学留学生として来日し、4月に帰国予定だったけどコロナのせいで定期便がなくなった。でも特例で在留資格が6か月延長され、週28時間以内の就労も認められています。そんな事情から、都内のウーバーイーツの外国人配達員の3分の2はベトナム人で、ほとんどは留学生か元留学生です」

 彼の隣にいた、ハノイ近郊出身という元留学生の男性(22歳)も「ネットで言われているような不法滞在者なんかいない。でも、路上に立っているだけで、すぐ警察に通報される」と話してくれた。さらにこう続ける。

「住民の中に、外国人のことが嫌いな人がいるんだ。この前も、俺の自転車が盗難品だって通報したらしく、警察が来て調べていったよ。日本の警察は真面目だから通報が入るたびに出動するよね」

 実際、そう話しているそばから、2人組の警察官が「通報が入っているので自転車を移動してください」と注意しに来た。

ウーバーイーツ

通行の妨げになっていないのに、待機しているだけで通報されるベトナム人配達員

 記者がどこからの通報なのか尋ねると、彼らは「マクドナルドからです」と明かした。今年2月に公表された日本マクドナルドHDの2020年12月期連結決算では、9年ぶりに過去最高を更新した。その躍進の一端を担っているのが、彼ら配達員であるはずだが……。

◆日本人の顧客からセクハラ被害

 同じく池袋にいた、ベトナム北部出身の元留学生(25歳)は言う。

「ここ(池袋西口店)の店長は優しいんだけど、いつも怒ってくる店員さんがいる。注文の受け取りに並んでいるだけなのに、『お客さんの邪魔になる!』と怒鳴ってきたり。ほかのマックでも、怖い店員さんがいて『臭いからシャワー浴びてきて』と言われたこともある」

 一方、新宿駅西口にいたホーチミン近郊出身の23歳の現役留学生の女性は、日本人の顧客からたびたび受けるという、セクハラ被害について告白する。

「大半の日本人は礼儀正しいし優しい。でも、酔っ払いが嫌い。最近は、緊急事態宣言で飲食店がやっていないので家で宴会しながら注文する人が多い。そういうところに配達すると、酔っぱらったおじさんから性的な言葉を投げかけられることもあります。一度、日本人の中年男性から体を触られたこともありますが、警察を呼ぶと仕事が中断しちゃうので泣き寝入りしました

 同じ配達員から、攻撃されることもあるようだ。ハノイ近郊出身という25歳の元留学生が話す。

「ウーバーイーツのカバンを持った日本人の配達員に路上で声をかけられたのですが、うまく聞き取れなかった。すると、『日本語わからないヤツは働くなよ、母国に帰れ!』と怒号が飛んできた」

◆ほとんど寝ずに働いて月50万円稼ぐ者も

ウーバーイーツ

留学生の多くは母国で借金をして来日している。返済のため働く配達員も少なくない

 今回、話を聞いた外国人配達員が受けた嫌がらせの多くは、「外国人配達員=不法就労」という偏見から生じているものが多い。しかし実態は違うようだ。『ルポ技能実習生』などの著書があるジャーナリストの澤田晃宏氏はこう話す。

「ウーバーイーツでは、不法残留者による不正な配達員登録が相次いだため、昨年末からは登録が対面式となり、現在では不法就労の外国人配達員は登録できません」

 現時点で外国人配達員の大半は、合法的に働いていると考えていいようだ。一方で、「昨年までは他人名義のアカウントを就労資格のない外国人に販売したり、貸与して働かせている事例もあった」(澤田氏)と言う。

 今回、他人のアカウントで配達員をしていたという、ベトナム東北部出身の元技能実習生の男性(37歳)に取材することができた。

「2019年にとび職の実習生として来日したのですが、実習先での給与の天引きや社長による暴力に耐えかねて逃げました。ただ、送り出し機関に支払った紹介手数料100万円の借金があった。そこで、選んだ仕事がウーバーイーツ配達員です。フェイスブック上の在日ベトナム人の裏コミュニティで知り合った同胞から3万円でアカウントを購入し、在留期間が切れるまでの半年間、毎日約6時間働いた。月収は20万円で借金は完済できました。寝ずに働いて月50万円稼いだ友人もいます」

 男性は支援団体を頼って在留資格を変更し、現在は都内の建設会社で働いているという。

◆多くの配達員は正規の在留許可がある

ウーバーイーツ

写真/Shutterstock

 ただ、今でも不法就労の配達員は一定数存在するようだ。今回、通訳として協力してくれたベトナム人女性にフェイスブック上の裏コミュニティを調べてもらったところ、偽造在留カードやトバシ携帯・銀行口座の販売を謳う違法業者の投稿に紛れ、「ウーバーイーツのアカウント在庫アリ」という書き込みが見つかった。

「不法就労の配達員は、警察の職質を警戒して路上での注文待ちはやらない。グループで路上に止めたバンなどの中で待機して、注文を取っている」(前出・ハノイ近郊出身の元留学生)

 もちろん法律違反は容認できない。だが取材した限りでは、多くの配達員は正規の在留許可を持ったベトナム人で、SNSや一部メディアが喧伝する姿と異なるように思えた。

ベトナム人留学生の3大バイトはホテルのベッドメイキング、深夜の食品加工工場、そして運送の仕分けです。前の2つはコロナで需要がなくなり仕事がなくなりました。運送はコロナ禍で失職、収入が低下した日本人の応募が増え、彼らが追い出される形になった。代わりに、ウーバーイーツと東京五輪の会場設営関連のバイトが受け皿になっています」(澤田氏)

 コロナ禍の我々の食生活を支えていると言っても過言ではないベトナム人配達員。世間はもう少し寛容な目で彼らを見るべきだ。

◆本当にヤバいのは日本人の配達員だ!

 外国人配達員への差別や偏見が横行するなか、「日本人配達員のほうがヤバい」と断言するのは、ウーバーイーツ配達員の経験があるフリーライターの小林ていじ氏@kobayashiteiji)だ。

「外国人配達員はすれ違う時、フレンドリーに挨拶してくれますが、日本人には無視されることも多い。いきなり絡んでくるヤツもいます。日本人配達員は『いろんな仕事をしたけどすべて続かなかった』という人が多いですからね」

ウーバーイーツ

ウーバーイーツ配達員経験のある小林さん。『日刊SPA!』でも連載中

 小林氏はウーバーイーツにこんな提言をする。

「注文者は配達員を評価しますが、評価が高くても特にいいことはないので良いサービスを心がけようというインセンティブにはなりません。また、配達員はランダムに選ばれるので、注文者が満足度の高い配達員を選ぶこともできない。例えば『満足度80%以上の配達員に限る』など注文者が設定できるように今後していくべきです」

 平等にジャッジされる環境になれば、配達員全体のレベルが向上するはずだ。

<取材・文・撮影/奥窪優木>

【週刊SPA!編集部】

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