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得する・損する「食べ放題」の違いは?人気チェーンに“思惑”を直撃

bizSPA!フレッシュ / 2021年7月17日 8時47分

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いくらかけ放題 60分500円

 連日報道されている通り、コロナ禍による飲食業界の甚大な打撃はいまだ出口を見出していません。なかには起死回生をはかり、それまでは実施していなかった「食べ放題」などのサービスを展開するお店もありますが、ここでふと疑問が浮かびます。

食べ放題

「北の家族」各店舗で行われたサーモン食べ放題

 ただでさえ大変な飲食業界なのに「食べ放題」なんて実施して大丈夫なのだろうか――。ひいてはその裏側に、なんらかの思惑があるようにさえ思えてしまうこともあります。

 今回は、そんな「コロナ禍での食べ放題」に注目。食べ放題サービスを数多く実施している居酒屋チェーン・北の家族ほかを運営する株式会社パートナーズダイニング営業本部・根本康弘さんに率直に話を聞き、「食べ放題」の舞台裏の秘密を聞きました。

◆コロナ禍で「食べ放題」は増えている?

 まずはコロナ禍で「食べ放題」サービスが増えているかどうかについて聞きました。

「一般的に『食べ放題』サービスが増えているかどうかはわかりませんが、飲食業界に身を置く人たちはコロナ禍で色んな思い、色んな取り組みをして生き残りをかけていることは事実です

 ただ、実際弊社が運営している北の家族ほかの飲食店では、『食べ放題』が以前よりも人気で、ある意味で起死回生の肝になっていることは事実です。やはり以前から始まっていた『酒離れ』が、コロナ禍によってさらに著しく進んでいますし、違う何かでお店に来ていただき、楽しんでいただかないといけないわけです。そのためには『食べ放題』サービスは欠かすことができないものになっていますね」(根本さん)

◆広告よりも効果を見込める「食べ放題」

食べ放題

パートナーズダイニング営業本部・根本康弘さん。新宿・靖国通り沿いにある北の家族が入ったテナントビル。この各フロアの飲食店を一手に担当する敏腕なお方です

「酒離れ」という発言がありましたが、だとすると「食べ放題」だけを楽しむ客が増え、本来合わせて収益を得るはずだった「お酒」はオーダーされなくなる可能性が高くなるということでもあります。お店としてはそれでも採算が合うのでしょうか。

我々としては確かにお酒を頼んでいただきたいです。でも、たとえお酒を頼んでいただかなくとも採算が取れる場合があります。

 1つ、『食べ放題』を実施する上で考えられることは、例えばお店に来ていただくために、飲食関連のWEBメディアに広告を打つとします。その場合、何十万円もの広告宣伝費がかかるわけですね。その費用があるなら、広告のほうに回さずに『食べ放題』のほうのコストに回したほうが、メリットのある場合があります

 特に今はSNSでの広がりによって、お客さんが多く訪れてくれることがある。こういったことも期待して、例えばSNSで盛り上がるような『食べ放題』を実施することで、広告を打つ以上の効果を得られるケースもあります。このように、仮に居酒屋であっても、これまでのような『お酒』を売って収益を得るという従来のスタイルからは、少しずつ変わってきているわけですね」

◆成功だった、イマイチだった「食べ放題」

 北の家族ほか複数の飲食店を運営するパートナーズダイニングでは、前述のようなことから、これまでにありとあらゆる「食べ放題」を実施してきたそうです。「食べ放題」の種類によって成功・失敗はなかったのでしょうか。

「まず、弊社が運営するお店では、コロナ禍以降、下記のような『食べ放題』を実施しました。本当にさまざまなものをやりましたよ」

◆2020年3月……『いくらかけ放題 60分500円』(北の家族全店+姉妹店)

食べ放題

いくらかけ放題 60分500円

◆2020年7月……『かに食べ放題 60分1980円』(北の家族全店+姉妹店)

食べ放題

かに食べ放題 60分1980円

◆2020年7月……『藁焼きカツオたたき食べ放題 60分500円』(四国酒場)
◆2020年7月……『餃子食べ放題 120分999円』(ザ・ロックアップTOKYO)
◆2020年10月……『サーモン食べ放題 60分880円』(北の家族各店+姉妹店)

◆お店として特に成功だったのは「いくらかけ放題」

◆2021年1月……『かに食べ放題 60分1980円』(北の家族各店+姉妹店)
◆2021年1月……『いちご乗せ放題&食べ放題 60分980円』(ESOLA新宿)

食べ放題

いちご乗せ放題&食べ放題 60分980円

◆2021年3月……『お団子食べ放題 60分888円』(北の家族新宿靖国通り店)

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お団子食べ放題 60分888円

◆2021年3月……『ビーカーいちご食べ放題 60分980円』(ザ・ロックアップTOKYO)
◆2021年3月……『サーロインステーキ&フレンチフライ食べ放題 60分2980円』(ESOLA新宿)

食べ放題

サーロインステーキ&フレンチフライ食べ放題 60分2980円

このうち、お店として特に成功だったのは『いくらかけ放題』ですね。いくらは高いものですが、実施した時期はたまたま大量に仕入れられたんですよ。今だったらできないですが、かなりの収益になりました。

 一方で失敗ではなかったもののそれほど収益につながらなかったのは『いちご食べ放題』。集客には繋がりましたが、高校生くらいの女の子が一杯のジュースとかを飲みながらひたすらいちごを食べて帰られて広がりがなかったことも否めませんでした。ただ、コロナ禍であってもウケる『食べ放題』のネタを見誤らなければ、お客さんは集まってくれるんだなということがわかりました

◆コロナで幅広い食材の「食べ放題」を実施?

 根本さんによれば、これだけ幅広い「食べ放題」を実施できたのもまたコロナ禍の影響でもあったそうです。

「平常時と違って『食材が回らない』ことが増えたんですよ。例えば、お客さんが来なくなりやむを得ずそのお店を閉店することにしたと。でも、仕入で確保している食材が大量にあると。

 普通では売り切ることができないですから、そういったものを『食べ放題』として販売し消化することで、食品ロスも防げて一石二鳥というケースもありました。弊社のお店で言うと、前述の『お団子食べ放題』なんかがそうですね。『居酒屋でお団子、なぜ!?』ということがウケて、メディア取材も多く受け、実施期間を延長するほどでしたので『食べ放題』の好例だったと思います

◆お客さん目線での得する、損する「食べ放題」

 次に利用者の目線に立った場合、どんな「食べ放題」がお得なのかも聞きました。

「例えば焼肉の食べ放題に行った場合、どうしても白いご飯が欲しくなるものですが、こういった炭水化物系には注意したほうが良いですね(笑)。お店側は『炭水化物を摂ってもらって、食べる肉の量を減らそう』としているかもしれませんし。

 例えば、かにとかいくらなどの高級食材の食べ放題の場合、最初に『5種盛りのおつまみセット』なんかを出すお店もあります。『これをまず食べないと、かにやいくらは出さないよ』っていうギミックなんですけど、こういう食べ放題は避けたほうが良いですし、おそらくそういうお店も結果的に収益につながっていないと思います。

 お客さんが『求めるもの』、お店側が『提供したいもの』の間に差が生まれるもの、はウケないものです。確かにお店は少しでも多く収益をあげたいですが、だからと言って、お客さんを騙すようなことをしたらダメですよ。こういったことをすればお客さんにすぐ伝わります」

◆「食べ放題」を利用するお客さんへのお願いも…

食べ放題

エビカクテル食べ放題も実施していた

 根本さんのお話からお店側の誠実な思いが伝わってきましたが、加えて利用される人に対してもぜひお願いしたいことがあるそうです。

「ルールを守っていただきたいことと、絶対に食べ切れる量だけ取っていただきたいということです。前述の通り、場合によっては食品ロスを避けるために『食べ放題』を実施するケースもあります。食材は『命をいただいている』ものでもあり、食品ロスは避けたいものです。この点は『社交場を好む』大人として守っていただきたいですね。

 あとは、できればお酒もぜひ合わせて頼んでいただければ嬉しいですね。特に弊社運営のお店の『食べ放題』は採算ギリギリのところで実施していますので

 緊急事態宣言やコロナ明けに、利用される際はぜひお酒のオーダーも合わせてお願いしたいです」

 最後に、気になるアフター・コロナに向けての見通しを聞きました。

「世界的に見ても、日本ほど飲食店が多い国はないという説があり、外食産業は『日本の文化』とも言えるのですが、残念なことにコロナ禍が終わったとしてもおそらく以前ほどのお客さんは見込めないだろうというのが現実的な見方です。

 しかし、そこで諦めるのではなく、時代ごとに変わっていく新しいニーズに応えながら生き残っていきたいと思っています。今後も利用される方が喜んでいただけるようなサービスを提供し、それによって収益をあげていきたいと思っています」

 お店ごと「食べ放題」の思惑は異なると思いつつも、利用者にとっての注意点やお願いは、おそらくどの店にも共通するものだと思います。「食べ放題」を利用する際は、ぜひ意識していただきながら、そのサービスを楽しんでみてはどうでしょうか。

<TEXT/松田義人>

【松田義人】

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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