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悲惨な業績の旅行業界。星野リゾートは利益半減でも明るい兆し

bizSPA!フレッシュ / 2021年10月18日 8時47分

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星のや軽井沢 © Jamesteohart

 旅行業界が最大の正念場を迎えています。最大手JTBグループ(以下、JTB)の2021年3月期の売上高は前期比71.1%減の3721億1200万円となりました。1兆2000億円以上あった売上高が3000億円台まで減少したのです。

 JTBの純損失は過去最大となる1051億5900万円。2020年3月末時点で1572億1800万円あった純資産は475億2600万円まで減少。これまで積み上げた自己資本1000億円がわずか1年で吹き飛びました。自己資本比率は24.3%から6.9%まで低下し、債務超過ぎりぎりまで追い込まれています。

コロナ 空港

画像はイメージです

 JTBは東京・天王洲の本社ビルと大阪市中央区のビルを売却。日本政策投資銀行などから300億円を調達することも決まりました。この記事は、新型コロナウイルス感染拡大が旅行業界に与えた影響と、今後どのように回復するかを占う内容です。

◆中小企業の倒産が後を絶たない状況に

 観光庁によると、2021年8月の海外旅行取扱額は、コロナ以前の2019年比2.7%、国内旅行は25.6%となりました。8月は東京オリンピックへの期待感が高かっただけに、旅行業界にとっては絶望的な月となりました。

 帝国データバンクの調査では、2021年1月から8月までで倒産した旅行会社数は累計で136件。2020年通年の倒産件数129件をすでに超えています。2021年は200件を超えて、過去最悪となることは間違いありません。

 2020年は政府による観光需要支援策「Go To トラベル」で需要が一時的に回復したほか、金融機関の資金繰り支援、持続化給付金で難を逃れた会社が多くありました。

◆中小企業を中心に倒産するケースも

旅行総取扱額

2021年8月旅行総取扱額 ※観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」より筆者作成

 しかし、2021年は東京オリンピックの無観客化の決定や過去最大の感染者数を記録するなど、コロナ収束の見通しが立たないことから旅行会社の間で諦めムードが広がったと見られています。

 7月29日東南アジアに特化した旅行代理店のケイ・アイ・エスインターナショナルが事業を停止。8月18日に観光庁や財団、大学などを中心に航空券・宿泊先の手配などをしていたサイエンスツアーが破産手続きを開始しています。このように中小企業を中心に倒産するケースが後を絶ちません。

◆エイチ・アイ・エスは本社ビル売却

 大手企業も立ち上がっているのがやっとと言える状態です。エイチ・アイ・エスの2021年10月期第3四半期の売上高は前期比77.4%減の907億3800万円、332億1700万円の純損失(前年同期は166億7300万円の純損失)を計上しました。売上高はコロナ前の2019年3月期第3四半期と比較して84.2%も減少しています。5700億円あった売上高が900億円にまで縮小してしまいました。

 また同社は2020年6月に本社を虎ノ門に移転しましたが、この移転からわずか1年で、本社ビルを三井住友ファイナンシャルグループに325億円で売却しています

 KNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト)も厳しい状況は同じです。2021年3月期の売上高は前期比77.2%減の878億8900万円、284億5600万円の純損失(前年同期は74億4300万円の純損失)を計上しました。

 2021年3月末時点で96億5400万円の債務超過に転落。2023年3月末までに債務超過を解消できない場合、上場廃止となります。近畿日本ツーリストは立て直しを図るため、2021年1月に希望退職の募集をかけました。応募人員は1376名。目先の財務体質改善を急いでいます。

 旅行会社は保有する資産の処分やリストラ、増資などによって資本性のある資金を調達し、コロナ禍が過ぎ去るのを粘り強く待つほかありません。

◆建設ラッシュに沸いていたホテルも大打撃

宿泊稼働率

宿泊稼働率 観光庁「宿泊旅行統計調査」より

 ホテルや旅館などの宿泊業界も苦境が続いています。観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、2021年1月のホテルや旅館などの客室稼働率は23.7%となりました。リゾートホテルや旅館は特に厳しく、リゾートホテルが15.0%、旅館が12.7%となっています。

「浅草ビューホテル」や「那須高原ホテルビューパレス」、「伊良湖ビューホテル」など、観光ホテルがメインの日本ビューホテルの2020年4月期の売上高は前期比70.3%減の45億1600万円、57億6400万円の純損失(前年同期は17億2000万円の純損失)を計上しました。ホテルは家賃や人件費などの固定費が重く、客離れを起こすと赤字幅が拡大しやすい事業です。

◆ロイヤルホスト運営会社も悲鳴をあげる

「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングスは、2020年12月期に192億6900万円の営業損失を計上しました。

 ロイヤルは「リッチモンドホテル」を全国展開しており、ホテル事業の損失額は69億9600万円。ファミリーレストランなどの外食事業の損失額は38億1300万円でした。2019年はホテル事業が外食事業よりも稼いでいましたが、コロナでそれが逆転したのです。今やホテル事業はロイヤルの重荷になっています。

 これと全く同じ構図なのが、結婚式場「椿山荘」を運営する藤田観光。この会社は「ワシントンホテル」も運営しています。2020年12月期に145億6800万円の営業損失を計上しました。このとき、婚礼事業は47億1600万円の損失に留まった一方、ホテル事業は136億6900万円もの損失となりました。

◆星野リゾート「界」の客室売上が2019年を上回る

星野リゾート

星野リゾートブランド別対2019年対比RevPAR変化率 ※星野リゾート・リート「決算説明資料」より

 ただし、旅行・宿泊ともに暗いニュースばかりではありません。需要回復の兆しも見えてきました。

 全国の星野リゾートの物件を所有する星野リゾート・リートの2020年11月-2021年4月の営業収益は前期比23.8%減の45億9100万円、純利益は同48.6%減の14億6600万円となりました。十分に回復しているとは言い難いですが、一部のブランドで吉兆が見えてきました。星野リゾートが全国に展開する中・高価格帯の旅館「界」です

「界」は緊急事態宣言に入った2021年2月、3月のRevPAR(1日の販売可能客室数あたり客室売上)が2019年の水準を上回りました。

星のや軽井沢

星のや軽井沢 © Jamesteohart

 星野リゾートは新型コロナウイルス感染拡大以降、「マイクロツーリズム」を推進していました。これは小さな旅行を楽しむもので、1時間から2時間で行ける距離の観光地を再発見するというものです。その趣旨に則り、地方の生産者などと手を組んで旅行者を取り込む企画を多数立ち上げました。それが奏功したものと考えられます。

◆2023年8月には2019年の水準に戻る?

グリーンズ

グリーンズの稼働率の推移(イメージ図) ※グリーンズ「決算説明資料」より

 全国に「コンフォートホテル」を展開するグリーンズは、緊急事態宣言が終わった2021年10月以降から日本人レジャーの需要が回復し、2023年8月ごろからインバウンド需要が2019年の水準を取り戻すと予想しています

 旅行や宿泊の需要回復は少しずつ見えており、インバウンドが盛り上がると予想される2023年を待つばかりとなっています。レジャーが活気を取り戻すまであと1年半ほど。旅行業界や宿泊業界は、この期間がコロナ禍の最終ステージとなりそうです。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

【フジモトヨシミチ】

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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