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関西スーパー買収劇、H2Oとオーケーの対立が泥沼化。“百貨店の凋落”が背景に

bizSPA!フレッシュ / 2021年11月14日 8時47分

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オーケーストア ©yu_photo

「阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)か、首都圏地盤のディスカウントスーパーのオーケーか」。注目の買収劇が泥沼化しています。この記事は、エイチ・ツー・オーが関西スーパーを強引にでも経営統合しようとする背景には何があるのか、解説する内容です。

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※画像はイメージです

◆関西スーパーの買収劇が裁判に発展

 2021年10月29日の関西スーパーの臨時株主総会でエイチ・ツー・オーリテイリングとの経営統合案への賛成が3分の2(66.67%)を上回りました。賛成率は66.68%だったとされており、ギリギリの票数で決着したかに見えました。

 しかしオーケーは、「本来『否決』であるべきだったにもかかわらず、無理やり『可決』にした疑義がある」として、株式交換差し止めの仮処分申し立てを行うと11月9日に発表しました。

 エイチ・ツー・オーは関西スーパーの株式58%を取得して連結子会社化。すでに連結子会社化しているイズミヤ、阪急オアシスと経営統合し、関西圏でのドミナント戦略を強化します。関西スーパーは名称を変更することなく、上場も維持する方針です。

◆オーケーの買収提案に賛同が多い2つの理由

オーケーストア ©yu_photo

 2021年3月末の段階で、エイチ・ツー・オーは関西スーパーの10.65%を保有する筆頭株主でした。オーケーは7.69%を保有する第3位の株主です。両社は関西スーパーの大株主でした。オーケーの買収提案に賛同を示していた株主が多かったのには理由が2つあります。1つはTOBによる価格プレミアム。もう1つは、オーケーの経営戦略が分かりやすかったことです

 オーケーは1株2250円で買い付けようとしていました。エイチ・ツー・オーの経営統合案を発表した8月末(8月27日)の株価終値は1318円。1.7倍で買い取る魅力点な案でした。

 一方、エイチ・ツー・オー案はイズミヤと阪急オアシスの全株を関西スーパーに引き渡して支配権を与える代わりに、関西スーパーの株式をエイチ・ツー・オーに割り当てて保有割合を58%まで引き上げるというものでした。個人投資家にとっての株価プレミアムはありません。関西スーパーの株価は経営統合案が可決される前の10月29日時点では1848円。可決したと報じられた後の11月5日には1218円まで下落しました。

 しかし、オーケーの待ったがかかると再び上昇に転じ、11月10日の終値は1433円となっています。エイチ・ツー・オーの統合案が、株主から魅力的なものと捉えられていないことがよくわかります。

◆大躍進を続けるオーケー

オーケー業績推移

オーケー業績推移(単位:百万円)※年度別業績より筆者作成。2017年3月期は非公開のため前期の比較はなし

オーケー業績推移

 また、オーケーの提案は関西スーパーの業績に関係する明確な戦略が盛り込まれていました。オーケーは高品質・低価格路線を強みとしており、そのノウハウを関西スーパーに浸透させて競合他社との差別化を図ろうとしていました。オーケーは極めて業績の良い会社です。売上高は2桁増を続け、経常利益率はコロナ特需が生まれる前でも5%と驚異的な数字でした

◆業績が低迷していたエイチ・ツー・オー

関西スーパーマーケット業績推移

関西スーパーマーケット業績推移(単位:百万円)※決算短信より筆者作成

 関西スーパーはコロナ特需で売上高はやや持ち直したものの、経常利益率は2%台と低迷しています。オーケーの傘下に入ることにより、業績が回復するとの期待が持てるのも当然です。

 オーケーの提案を退け、エイチ・ツー・オーが何としてでも関西スーパーを手に入れたかった理由は2つあると考えられます。1つは本業の百貨店事業がコロナでズタズタになり、回復の見通しが立っていないこと。もうひとつはスーパーマーケットが、規模の経済の働きやすいビジネスであることです

◆頼みの綱が消滅し、悲鳴を上げる百貨店

 日本百貨店協会によると、2020年の年間売上高は4兆2204億円。前年比27.5%減という過去最大の減少となりました。営業時間の短縮、繁華街の人通りの変化、インバウンド需要の消滅。この3つの要素が響きました。特に主力となる衣料品の売上高が前年比31.1%もの減少に見舞われました。

 エイチ・ツー・オーがコロナの影響を真正面から受ける前の2020年3月期における事業別売上構成は、百貨店が52.7%、スーパーなどの食品が39.5%でした。

 スーパーを子会社化しているとはいえ、主軸は百貨店です。基幹事業がコロナで破壊されました。

◆百貨店に代わる柱としてスーパー事業を

エイチ・ツー・オーリテイリング業績推移

エイチ・ツー・オーリテイリング業績推移(単位:百万円)※決算短信より筆者作成

エイチ・ツー・オーリテイリング業績推移

 2021年3月期の百貨店事業の売上高は前期比26.5%減の3478億円となりました。それによって、19億円のセグメント損失(前年同期は114億円の黒字)を出すこととなりました。2021年3月期の会社全体の売上高は前期比17.6%減の7391億9800万円、29億700万円の経常損失(前年同期は118億3100万円の経常利益)を計上することとなりました。

 2021年3月期のスーパーを含む食品事業は、42億円のセグメント利益を出しています。コロナ特需で利益が出せました。

 関西スーパーもコロナ禍で利益率は1%から2%台へと改善しています。もし、百貨店事業の売上高がコロナ禍から回復しきれず4000億円を下回る水準で推移したとすると、関西スーパーを買収することによって食品事業の売上高は4000億円を超えて百貨店事業を追い抜きます

 新常態に強い会社を作るためには、食品事業の強化がどうしても必要でした。

◆売上規模が大きいほど利益率が上がる業態

 スーパーは規模の経済が働きやすいという特性があります。規模の経済とは、生産規模を高めることで単位当たりのコストが低減されることを指します。スーパーであれば、店舗数を拡大すればそれだけ利益が出るということです

ネットスーパーの動向及び課題調査

農林水産省「ネットスーパーの動向及び課題調査」より

 グラフは売上規模による営業利益率の違いを示したものです。2020年のスーパーの平均営業利益率は1%を下回っています。しかし、売上規模が1000億円以上になると、1.98%に上昇します。300億~999億円までで1.55%です。30億~99億円までのスーパーは0.34%、それ以下は赤字です。

 これは大量に仕入れを行うことによってスーパーの価格交渉力が上がり、安く仕入れられることがあります。また、物流網を統一して配送料を抑えられることも背景にあります。エイチ・ツー・オーの統合案は、オーケーのような具体的な買収後の戦略が示されていません。

◆売上規模による営業利益率の違い

 しかし、同一エリア内のスーパーを複数経営することにより、仕入れや配送を統合することでコスト削減効果は図りやすくなります

 エイチ・ツー・オーはイズミヤと阪急オアシスの全株を関西スーパーに譲渡しました。支配力が強まった関西スーパーは、いわば2社を思うように動かせるわけです。

 すなわち、利益率が高められる目途はある程度ついていると考えられます。エイチ・ツー・オー主導により、凄まじい労力がかかる大規模なテコ入れ策をするまでもないのです。

 規模の経済が働くのはオーケーも同じです。関西圏へ進出への足掛かりも得られることから、何としてでも手に入れたいでしょう。稀に見る激しい買収合戦はどちらに転ぶのか。注目を集めています。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

【フジモトヨシミチ】

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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