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東証一部企業を一代で築いた男が広めた「ビジネス系スピリチュアル」の実態

bizSPA!フレッシュ / 2021年11月19日 15時46分

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※画像は「公益財団法人舩井幸雄記念館」HPより

 オカルト、スピリチュアルとは非科学的なもので論理的思考が求められるビジネスの世界とは水と油のように思える。しかし、意外にも会社経営者や起業家にはスピリチュアル愛好家が多い(アップル創業者の故スティーヴ・ジョブズが有名)。

ジョブズ

Steve Jobs, founder of Apple Computers, has died at the age of 56 years © Pressureua

 オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家でライターの雨宮純さん@caffelover)によれば、かつてブームになったオカルトや精神世界は2000年代以降、「自己啓発や癒し、健康といったテーマで、より実用的で実生活に取り入れやすいものとなっていた」という。

 今回は一代で東証一部上場企業・船井総研を築き上げた一方で、ビジネス系スピリチュアルを世に広めた人物、舩井幸雄氏について紹介する(以下、雨宮純さん著『あなたを陰謀論者にする言葉』より抜粋のうえ編集、敬称略)。

◆景気悪化とオウム事件で衰退した精神世界

 一時はブームを巻き起こした精神世界ですが、バブル崩壊による景気悪化や(大勢の人が物質文明を超えた何かに思いを馳せるには物質的・経済的な安定が必要です)、オウム真理教が引き起こした一連の事件によって勢いが衰えます。

 特にオウム真理教は、ラジニーシ教団(インドの宗教家バグワン・シュリ・ラジニーシが1970年代に創設し、集団移住やバイオテロで知られる大規模コミューン)との類似点や超能力開発、ヨガ修行といった要素を持っていたことから、精神世界やオカルトへの激しい批判を巻き起こしました。

 こうして精神世界は怪しいイメージを持つものになり、現在では「精神世界」という言葉もほとんど聞かなくなっています

◆2000年代以降に広まった「癒しと自己啓発」のスピリチュアル

あなたを陰謀論者にする言葉

雨宮純『あなたを陰謀論者にする言葉』 (フォレスト2545新書)

 ところが2000年代以降、チャネリングや魂の修行、癒し・ヒーリングといった精神世界とほぼ同じものが「スピリチュアル」として社会に広がっていきました。意識変革による社会変革という志向を持つ精神世界や、謎とロマンを楽しむオカルトに対して、スピリチュアルは自己啓発や癒し、健康といったテーマが中心で、より実用的で実生活に取り入れやすいものとなっています。

 このうち、スピリチュアルを自己啓発に活用した中心人物が経営コンサルタント会社、船井総合研究所(船井総研)の創業者として知られる舩井幸雄です

◆「自己啓発」を世に広めた舩井幸雄とは?

舩井幸雄

※画像は「公益財団法人舩井幸雄記念館」HPより

 1933年、大阪府の神職の家系に生まれた舩井幸雄は京都大学農学部の出身で、労務管理や安全管理を研究していた財団法人「安全協会」に5年間勤務した後、最初の独立をしますが、3年ほどで経営コンサルティング会社の「日本マネジメント協会」に就職します。

 その後、二度目の独立で起業した会社が「日本マーケティングセンター」で、これが後に改名して現在の船井総研となります。船井総研は1988年に大阪証券取引所第二部に上場し、現在では東証一部上場企業となっています。

 一代で東証一部上場企業をつくり上げ、ビジネス書としてもベストセラーを持つ(1972年に刊行した『変身商法』〈ビジネス社〉が有名)舩井はカリスマコンサルタントとして知られていました。一方で、その思想はスピリチュアルなもので、精神世界のジャンルに含まれる著作も多数出版しています。

◆オカルト系関連会社の役員にも

 彼の著作には、

「この世は悪いカルマを清算する魂の修行の場でありすべては必然、ピンチや試練は魂を磨くチャンス」
「優位の波動は劣位の波動をコントロールする、良い波動を持つ人が悪い波動の持ち主を導く」
「すべてのことには大いなる全能の力、サムシンググレートが働いている」
「『宇宙の理』に従う人間を増やすことで100匹目の猿現象を起こし、地球維新を実現する」

 といった内容が書かれています。考え方を変えることで世界をも変えられる自分になり、必然的に与えられた試練に前向きに立ち向かう気分になれる自己啓発本となっています。

 舩井はオカルトや精神世界系の出版社である、たま出版(テレビのオカルト番組で大槻義彦教授とよくバトルしていた韮沢潤一郎が社長)が1986年に設立した「たまメンタルビジネス研究所」の役員も一時期務めていました

◆自己啓発系スピリチュアルを商品化

スピリチュアル

※画像はイメージです(以下同じ)

 舩井は著作で思想を広めるだけではなく、類似の思想を持つ人物の紹介や、現在の科学を超越しているような商品(「本物」商品と呼ばれる)の紹介も行っていました。

 その代表が1994年に始まった大規模イベント「フナイ・オープン・ワールド」(FOW)で、そこで紹介された商品を斎藤貴男『カルト資本主義 増補版』(ちくま文庫)から引用してみましょう。

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 あらゆる病気の原因になる“活性酸素”の発生を抑制するという健康食品「アオバ」。“波動エネルギー”で食べ物本来の味を引き出すという食器「味来」。“環境や健康に優しい”という新しい栄養補給食品“トリプル”。はめるだけで“正しい呼吸法”ができるようになるという指輪「θリング」。“生命の水”を生むという浄化石「イオンセラミックス」。あらゆる植物を瞬時にして躍動させるという濃縮エキス「ビタナール」、および飲用の「命流美(めるびー)酵素」。気の流れを正常化させ自然治癒力を高めるという機械「氣代謝誘導装置」。“ゼロ磁場の地”丹沢にある“癒しの宿”「七沢荘」……。
=====

 このラインナップを見ると、商品そのものは残っていなくても、理論としては今でも健康機器や健康食品で使われ、疑似科学と指摘されているものが目立ちます。

 さらに、舩井は「波動理論」や「EM(有用微生物群)」「脳内革命」も紹介するとともに、著書で「Oリングテスト(人差し指と親指でつくった輪を引っ張って解けるかどうかで善悪を判別するテスト)」や「キネシオロジーテスト(伸ばした腕を押し下げた際の抵抗で善悪を判別するテスト)」「イヤシロチ(生命が活性化する場所のこと)」も取り上げています。

 舩井は自己啓発系スピリチュアルとともに、このような商品や理論を広げる役割も果たしました。

◆舩井幸雄と陰謀論を主張する2人

 舩井幸雄が陰謀論と接近していたことについても触れておきましょう。舩井が執筆していたウェブ上の連載では、元『フォーブス』のアジア太平洋支局長で『気象兵器・地震兵器・HAARP・ケムトレイル』(成甲書房)、『3・11 人工地震テロ&金融サイバー戦争』(ヒカルランド)といった著作がある古歩道ベンジャミンや、爬虫類宇宙人陰謀論やユダヤ陰謀論の著作を多く持つ太田龍が紹介されています。

 太田龍とは2007年に対談本『日本人が知らない「人類支配者」の正体』(ビジネス社)も刊行しています。

 前述したような超科学を求める舩井の姿勢と、陰謀論が主張する「闇の勢力が陰謀に利用する超技術」とが出会っていることがわかります。

◆晩年には「スピリチュアル否定」発言も?

覚醒

 また、太田龍は興味深い思想遍歴を辿った人物で、彼はもともと革命的共産主義者同盟(新左翼セクトとして有名な中核派や革マル派の元になったセクト)に所属する学生運動家でした。

 太田はその後アイヌ解放運動や環境保護運動に関わった後、1990年代から陰謀論を主張しはじめます。彼は東洋医学や自然食にも関心を持っており、デヴィッド・アイク(爬虫類型宇宙人陰謀論を唱えた英国の陰謀論者)と同じく自然派やスピリチュアルな要素を持つ陰謀論者でした。

 舩井幸雄は2014年に亡くなりましたが、どのような意図を持ってか、晩年には「いまの世の中は、スピリチュアルなこととか食とか遊びなど、どうでもいいことに浮かれている人に、かなり焦点が当っています。一度そのようなどうでもいいことは忘れ、現実人間にもどってほしいのです」とスピリチュアル否定とも取れる言葉を残しています。

 しかしながら、彼が設立した勉強団体である「にんげんクラブ」は現在も多くの会員を抱えて継続し、根強い支持者がいます。

<TEXT/オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家 雨宮純>

【雨宮 純】

オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家。思春期にカルト宗教による事件が多発したことから、新宗教に関心を持つ。オカルト検証好きが高じて(ノストラダムスの大予言が外れたため懐疑派に転向)、理工系大学院を修了し現在に至る。週末はメイクをする女装男子。著書に『あなたを陰謀論者にする言葉』 Twitter:@caffelover note:「大仏

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