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西友とイオン「東西スーパーの歴史的な店」が閉店した深いわけ

bizSPA!フレッシュ / 2021年12月1日 8時46分

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「売りつくし」の幟がはためく西友高田馬場店(新宿区)。普通の西友…かと思いきや、何と間もなく築60年!

 この秋、東西2つの「超老舗スーパーマーケット」が半世紀以上の歴史に幕を下ろした。そのスーパーはいずれも規模は大きくないながらも、流通業界に名を遺す「歴史的店舗」であった。果たしてそれは一体どういう店舗だったのか、そして、なぜ「昔のままの姿」でここまで生き永らえることができたのか――。

西友

この秋閉店した「歴史的老舗スーパー」とは

◆60年目の閉店!実は「ほぼ創業店」の西友

 今年11月30日に閉店した東京都新宿区・高田馬場駅近くの総合スーパー「西友高田馬場店」。一見すると何の変哲もない、少し小さめの西友だが、実はこの店舗は東京オリンピックよりも前から営業を続けている「日本の超老舗スーパー」の代表格だった。

西友

「売りつくし」の幟がはためく西友高田馬場店(新宿区)。普通の西友…かと思いきや、何と間もなく築60年!

 西友高田馬場店は東京オリンピックの2年前、1962年9月1日に「西武ストアー高田馬場店」として開店した。時の日本の首相は「所得倍増計画」で知られる池田勇人、そして米国大統領は翌年暗殺されてしまうケネディであった。

 西武ストアー高田馬場店を運営する「西武ストアー」は1956年11月に西武百貨店の完全子会社として設立。同社は高田馬場店開店以前すでに10店舗ほどを展開していたが、大半が独立の店舗経営で各店の統一サービスはもちろん、現在のスーパーマーケットのようなセルフサービス方式もほとんど採用されず、赤字経営だったという。

◆アメリカ式の最新型セルフスーパーで脱赤字

 高田馬場店はそのような経営状況を打開するための、次世代型スーパーの「実験店舗」となった。同店は開業時からアメリカで研修を受けた社員がそのノウハウを活かす店づくりを実施。「アメリカ式の最新型セルフスーパー」として、西武ストアーで初めてチェックアウト(現在に見られるようなレジ方式)を置いた店となった。

 この高田馬場店の成功により西武ストアーは業績を立て直し、翌年・1963年4月の西友ストアー(現在の西友)発足につながった。つまりこの高田馬場店は、いわば「西友創業の店」であったのだ。

西友

西友高田馬場店の閉店告知。引き継ぎ店は2駅先の池袋にあるサンシャインシティ内の店舗。このサンシャイン店も今や40年以上の店歴がある

 なお、西友高田馬場店の閉店後に「西友最古の店舗」となったのは西友上石神井店(東京都、1965年4月開店)。首都圏ではかなり古い店舗が多いイメージの西友だが、昭和30年代に開業した店舗はこれで姿を消してしまった。

◆世界唯一!超老舗スーパーも閉店

 そして、この秋に歴史に幕を下ろしたもうひとつの「超老舗スーパー」が、9月30日に閉店した京都の「イオン東山二条店」だ。

イオン

「売りつくし」の文字が並ぶイオン東山二条店(京都市東山区)

 この店舗は「イオン」やその前身「ジャスコ」として開店した店舗ではなく、もともと「シロ東山二条店」として1968年6月26日に開店した。ちなみにこの日は、東京・小笠原諸島がアメリカから日本に返還された日でもある。日本の首相は佐藤栄作、そして米国大統領はジョンソンであった。

「シロ」は大阪府に本社を置く地場スーパーであったが、東山二条店の開店直前・6月10日に「オカダヤ」(三重県)、「フタギ」(兵庫県)と共同出資による新会社設立に調印。9月5日には社内公募により新会社の名称が「日本ユナイテッド・ストアーズ株式会社(Japan United Stores Company=ジャスコ)」に決定。

 翌年の1969年2月には新会社が設立され、各社の新店舗は「ジャスコオカダヤ」「ジャスコフタギ」「ジャスコシロ」を経て同年10月からは「ジャスコ」となった。

◆「ジャスコ誕生前」から営業するイオン

 現在はアジア各国に店舗を構えるイオングループであるが、すでに「オカダヤ」「フタギ」として開店した店舗は全て閉店しており、この東山二条店はイオングループ最古の、そして世界で唯一「ジャスコができる前の時代」から同じ建物で営業を続ける歴史的店舗となっていた

イオン

「シロ」の店名を掲げていた頃。(イオンニュースリリースより)現在の店頭と殆ど変わらない

 店舗のスクラップアンドビルドを推し進めることで成長を遂げたイオンだけに、ジャスコ生え抜きの古参店舗は意外と少ない。

 イオン東山二条店の閉店後に「ジャスコ→イオン最古の店舗(ダイエーなど除く)」となったのはイオン佐世保店(1974年開店)であるが、同店も2022年2月での閉店を決めているため、これにより「昭和40年代以前に開業した旧ジャスコのイオン」は全て姿を消す。このことからも「イオン東山二条店がいかに古い店舗であったか」が分かるであろう。

イオン

ジャスコ→イオン最古の店舗となっているイオン佐世保店(長崎県佐世保市)も閉店を決めており、昭和40年代以前に開業した旧ジャスコの店舗は姿を消す

(余談ではあるが、現在イオングループ入りしているダイエー・旧ダイエーの店舗を含めると1969年9月に開業した「ダイエーグルメシティ西明石店」(兵庫県)が現存最古となる)

◆東日本大震災でクローズアップされた問題

 このような「古いスーパーや百貨店の閉店・建て替えラッシュ」は、東日本大震災などによって耐震化問題がクローズアップされることとなった2011年以降に多く見られた。

 とくに2013年に施行された改正耐震改修促進法では、耐震基準が強化された1981年6月より前に建築確認が行われた一定規模の商業ビルは耐震診断結果を公表することが義務付けられるとともに、耐震強度不足とされた店舗は耐震化の目途を示す必要性が生まれた。それにより、多くの老舗百貨店や総合スーパーがその歴史に幕を下ろすこととなった。

イズミヤ

改正耐震改修促進法が施行された2013年以降、僅か数年間で多くのスーパーが姿を消した。老朽化・耐震性不足などにより2017年に閉店した「イズミヤ伏見店」(京都市伏見区)の閉店式典。現在は建て替えられている

 この秋閉店した「西友高田馬場店」「イオン東山二条店」は、いずれもかなり古い「セルフサービス型スーパー黎明期の都心店舗」であった。それゆえ売場面積が比較的狭く、商業施設としては耐震公表義務がある規模ですらなかったが、当然いずれも旧耐震の建物であり、建て替えは避けられないと見られていた。なにより、通常この規模の繁盛店であれば、途中で店舗を建て替えられていてもおかしくない。

◆「UR団地再生事業」で姿を消す老舗スーパー

 しかし、この2店には大きな共通点があった。それはいずれも「大都市の都心立地」かつ「店舗の上層階がUR住宅(旧・公団住宅)」ということだ。西友高田馬場店はJR高田馬場駅徒歩圏の「UR都市機構戸塚三丁目市街地住宅」の下層に、そしてイオン東山二条店は地下鉄東山駅から徒歩圏の「UR都市機構東山二条アパートパレス二条」の下層に出店していた。

 それゆえ、店舗の拡大や建て替え等をおこなうことが容易ではなく、また耐震改修促進法に基づいて建物全体の建て替えをおこなうにしても居住者との調整に時間が掛かるため、耐震強化の波をくぐり抜けてここまで生き永らえることになったのであろう。

 一方で、近年URは「団地再生事業」と題して、民間ディベロッパーと協力するかたちで団地の建て替え事業を進めている。その結果、ここ最近は半世紀以上営業し続けていた団地併設型スーパーの閉店や、新たな業態による再出店も多くみられるようになってきた。

◆老舗スーパーの閉店が相次ぐ理由

ダイエー

2019年に閉店したJR横浜駅前の「ダイエー横浜西口店」(横浜市西区)は1968年築の「UR南幸市街地住宅」と併設だった。再開発には「イオンモール」が参画しており、跡地に同社が出店する計画

 イオン東山二条店が入居するUR都市機構東山二条アパートパレス二条は近く解体され、京都市内に本社を置く不動産会社「近畿建物」によって再開発が行われることが決まっている。再開発後の建物にも商業機能が設けられるといい、イオンは再出店する方針を示している。新たな店舗の規模や業態は未定であるというが、再び「イオン東山二条店」の歴史が動き始めることになる可能性も高い。

 また、西友高田馬場店が入居するUR都市機構戸塚三丁目市街地住宅も、近い将来建て替え等が検討されているという。西友広報部は再開発後の再出店などについては「お話できることはございません」としている。

 URは今後もこうした団地再生事業を進める方針であるため、これから先も「半世紀ほど生き永らえた老舗スーパー」の閉店が進むことは確実だ。もちろん、スーパーマーケット以外も同様である。この先「団地の下にずっとある懐かしのあの店」が突然消えてしまうことはさらに増えるであろう。

 耐震性の高い新しい町並みが生まれることは嬉しい反面、高度経済成長期を支えた「昭和の団地」や「昭和のお店」が消えてしまうのは少し淋しくもある。団地の下に思い出の店があるという人は、早いうちの訪問をオススメしたい。

<取材・文・撮影/藤井瑞起・若杉優貴(都市商業研究所)>

【参考】日本経済新聞・日経流通新聞/日経MJ

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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