寺島進と黒木瞳がいい味だしている。『駐在刑事』――亀和田武「テレビ健康診断」

文春オンライン / 2018年12月14日 19時40分

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「駐在刑事」制作発表

 2か月ほど前か。金曜日の夜8時。所在なくテレビをザッピングしてると、のんびりした山村の風景が映った。

 山間(やまあい)の道を、決して若くはない警察官が息を切らして自転車を漕いでいる。たまに擦れ違う住民からは「駐在さーん」と声がかかる。

 駐在さん役は、民放連ドラ初主演の寺島進だ。テレビ東京『駐在刑事』の第一回だった。なんとなく画面を見ているうちに、駐在さんこと江波敦史(寺島進)の過去と現在もわかってくる。

 警視庁捜査一課の敏腕刑事だったが、奥多摩警察署の水根駐在所に左遷された。殺人事件の重要参考人である女性の取り調べ中に、一瞬の隙をつかれ服毒死されたのだ。自殺と警察は断定した。奥多摩に来て五年。正義感が強く、住民のために汗をかく江波は、いまでは駐在さんとして地元に馴染(なじ)んでいる。

 東京を西へ西へと、ひたすら進み、JR青梅(おうめ)線の終着駅に辿りつくと、そこが奥多摩だ。多摩川の上流が織り成す渓谷美と、東京の水ガメ、小河内(おごうち)ダム。そんなのどかな一帯にも、剣呑な気配が漂いだしている。住民の反対を無視して、リニア新幹線の残土処分場計画が持ち上がり、静かな集落で殺人が起きる。

真犯人は誰だ!

 寺島進が、いい味だしている。駐在さんか。いい響きの言葉だよなあ。警察官の誰もが毎月のノルマ達成に血まなこになってる今では死語だ。役人気質の警察官が目立つ世の中、江波のように住民に寄り添う駐在さんがいる奥多摩はユートピアだ。

 桃源郷を荒稼ぎの場にしか考えない連中がいる。この地区を地盤にする国交省副大臣の小宮山(眞島秀和)と、その秘書だ。彼らが、江波の左遷の原因となったクラブホステスの服毒死に関与していた疑いも濃くなっていく。

 そんなとき警視庁捜査2課のエリート綾乃(黒木瞳)が奥多摩署の新署長に着任。普通なら、あり得ない人事だ。彼女は不審死をとげたホステス(杉本彩)の姉だった。妹の死の真相を暴くための奥多摩署赴任か。黒木瞳は、この手の役を演じると巧い。ただの美人女優じゃないの。迫力ある演技の出来る役者さんなんだ。

 最終回を前にして、一番怪しい小宮山が射殺された。ならば真犯人は。恐らく予想外の巨悪が姿を現すのではないか。奥多摩を舞台に、他の警察ドラマとふた味は異なる駐在さんを主人公に据えたドラマが新鮮で、ついついじっくり見た。意外な収穫です。

『駐在刑事』
テレビ東京系 金 20:00~20:54
https://www.tv-tokyo.co.jp/chuzaikeiji/

(亀和田 武/週刊文春 2018年12月20日号)

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