「低偏差値の大学生ほど奨学金を借りている」は自己責任か

文春オンライン / 2018年12月15日 11時0分

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 私は就職コンサルタントとして、高校生から無名の大学、そして東大生まで、20年以上にわたり就活の支援をしてきた。その中で感じたことは、国立、私立に関わらず、偏差値の高い大学生の親にはお金持ちが多い、ということだ。

 以前は学費の高い私立大学生の親に、お金持ちが多い、という印象があった。ところが現在では、私立大学でも偏差値の低い大学では、お金持ちが少ない。

東大、一橋、東工大、早大、慶大は奨学金受給率が低い

 このように私が経験的に感じたことを、裏付けるデータがある。「学校毎の貸与及び返還に関する情報・2016年度」(日本学生支援機構)だ。

 日本学生支援機構とはかつての日本育英会であり、政府の奨学金を管理する団体だ。本団体が公表している奨学金の返還状況のデータから、大学ごとの奨学金受給率を計算することができる。

 受給率が低い大学の親は、奨学金を借りる必要のないお金持ちが多いと言える。一方、受給率が高ければ、お金持ちが少ないと考えてよいだろう。

 私が奨学金受給率を大学群ごとに計算してみた結果は次の通りだ(自著『 学歴フィルター 』(小学館新書)でも簡単に触れたが、今回は最新データで再計算している)。

 東大、一橋、東工大、早大、慶大といった偏差値の高い大学生の親ほど、お金持ちが多いことがわかる。

 一方で大学の偏差値が下がるほど、お金持ちが減っていく。河合塾で全学部全学科ボーダーフリー(Fランク)と判定された5大学では、上位5大学と比較すると、なんと約2.5倍も受給率が高いのだ。

 社会的公正という観点から、これは大きな問題だと私は考えるが、なぜこのようなことが起きてしまうのだろうか?

親の年収、学歴と子供の成績には相関関係がある

 一つ目の理由には、「年収と学歴が高い親の子供ほど、学業成績が良い」ということがあげられる。これは文科省の学力テストと、お茶の水女子大学の調査(2017年)から、小学校6年と中学3年の成績が、親の年収、学歴と明確に相関関係があることが指摘されている。

 経済的に豊かで、小中高と成績が良い子供が東大、一橋、東工大、早、慶に入学している可能性が高い。

 二つ目の理由は大学進学率が上がったことだ。以前なら勉強が得意でない高校生は、高卒で就職することが多かった。

 ところがバブル崩壊後、一貫して高卒求人が減り、その分、進学希望者が増えた。大学・短大の進学率は浪人を含め6割弱の水準まで上昇している。専門学校(と高専4年在学者)まで含めれば約8割が進学する時代だ。

「お金がないなら高卒で働くべき」なのか?

「だったら貧乏人の子供はFランク大学など行かずに高卒で働くべきだ」

 世間にはこのような意見があることも私は知っているが、愛のない暴論だと感じる。確かに高卒で大企業に就職できれば、大卒で中小企業に就職するより、生涯賃金が高いというデータがあるにはある。

 ただし、かつて高卒者を採用していた大企業とは大手製造業だった。ところが、現在この有利な高卒求人が激減したのだ。

 そして一般的には高卒より大卒の方が生涯賃金が高く、犯罪率、健康状態などでも有利である。WEBなどで求人広告の募集要項を見れば、その多くが「大卒以上」と書かれている。

 そんな中、多くの親は子供を大学に行かせたいと考えるのが自然だ。私も高校生向け就職支援の経験があるが、安易に高卒での就職をすすめられない。

世帯所得は下がり、授業料は上がり続ける

 親が子供の大学進学について考えた時に問題になるのが、学費の高さだ。

 国からの援助(国立への運営費交付金や私立への私学助成金)が減ることで、私大授業料は57万584円(89年)から87万7735円(16年)に上昇した。入学金まで含めれば優に100万円を超える。

 一方で子育て世帯の平均所得は782万円(96年)のピークから740万円(16年)と減少したままだ。その間、奨学金の受給率も、うなぎのぼりとなっている。

 学費の高騰について、高偏差値大学の豊かな親はあまり影響を受けない。一方で低偏差値大学の親ほど世帯所得の減少に直面しており、厳しい状況になっていると推測できる。

 期せずして、大学への助成金の削減は、低所得層へ鞭打つことになっている。「大学いじめ」は意外にも「貧乏人いじめ」につながっているのだ。

 私は、このような状況を放置してはならないと考える。少なくとも学費の高騰については解決策があるべきではないだろうか。

(福島 直樹)

文春オンライン

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