閉店相次ぐ“立ち食いそば” 柴又の再開発で名店「新華」はどうなる?

文春オンライン / 2019年1月8日 11時0分

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大晦日の柴又駅前広場、観光客や参拝客で賑わう

 平成最後の年末年始。平成30年も激動の1年であった。経済では米中経済摩擦、トランプショック。立ち食いそば店も閉店が相次いだ。池袋西口の「大黒そば」、東十条駅北口前の「そば清」、新潟駅ホームの「新潟庵」、志村坂上駅近くの「いなば」など。

 神田三崎町の「とんがらし」は平成の元号が変わる頃に閉店と伝え聞く。平成時代を駆け抜けた昭和の名店が姿を消していくのは何ともつらい。

柴又の創業45年「新華」も閉店なのか……

 大都市や首都圏近郊の街中の個人経営の立ち食いそば屋は、昭和39年の東京オリンピックの頃に誕生し、サラリーマンの胃袋を満たし、高度経済成長を支えてきた。そして40年以上の年月を経て、その閉店の時を迎えている。理由はさまざま。後継者問題、大規模再開発などである。一つの時代が終わりを告げているようにも思える。

 柴又駅前広場にある風情ある外観の立食いそば屋「新華」も創業45年ほどになるそうだが、今年の2月あるいは3月には閉店になるという知らせを聞いた。「新華」もか……。

1日1000杯を売り上げる、年末年始の風物詩

 平成30年の大晦日、太陽がまだ高い午後2時頃、柴又にさっそく出かけてみた。

 柴又は西に中川、東に江戸川が流れる。河川に挟まれた低地だが、柴又帝釈天はやや小高い立地にあり、一帯の守護神として江戸時代初期に開創された寺院である。

 昭和の時代、柴又は映画「男はつらいよ」シリーズの撮影地として一躍有名な観光地になった。今も駅前広場には「寅さん」(演・渥美清さん)と、「さくら」(演・倍賞千恵子さん)の銅像が立ち並ぶ。そんな駅前の真正面で「新華」は元気に営業していた。

 茶色いファサードがまぶしい。新御徒町駅近くにあった「アヅマ」もこんな色の暖簾だった。店前には木製のテーブル2つとイスが用意されている。大晦日、参拝客が増えるとテーブルは5つに増えるそうだ。寒空の中、お客さんがこぞってそば・うどん・ラーメンを注文する。売り上げは1日で1000杯は超えるそうで、大晦日・三が日の柴又駅前のもはや風物詩となっている。

アツアツのつゆとサクッとしたかき揚げの「天ぷらそば」

 さっそく立ち食いスタイルの店舗に入り、挨拶し「天ぷらそば」(390円)を注文した。「新華」は横山町、新橋、泉岳寺、三河島の「三松」などと同じ、三松屋食品が経営する自家製麺がウリの店である。茹で麺をさっと湯通しし、あっという間に着丼する。つゆは濃い目でアツアツ。天ぷらは野菜のかき揚げで大き目のタイプ。短時間で食べるには最適の味だ。「新華」ではとくに「ラーメン」(400円)が一番人気で、ソーセージ天や天ぷらを載せたラーメンが人気である。スープは鶏ガラや豚骨でじっくり炊き出したもので、もちろん返しも自家製。立ち食いでありながら本格的な味を提供しているのだが、そういうことをアピールなどしないところがなかなか良い。

「新華閉店」というウワサの真相

 泉岳寺店からヘルプで来ていた大将や女将さんと話をしていたら、佐山健太郎社長と新橋店店長の日向野要太郎さんが登場した。大晦日はフルメンバーでオールナイトで営業し、正月三が日も休みなく営業する。

「新華」閉店の真相を質問すると、こんな答えが返ってきた。柴又駅前を美化整備する開発が進められており、それが2019年2月か3月からスタートする。その時期の遅延はあるかもしれないが、その頃までにいったん店は閉店して、再開発後に戻れるのなら再開したい。再開の時期はまだ未定とのことであった。よかった。「再開する」という吉報を入手できた。来た甲斐があった。

 そんな話をしていたら、狭い店内に巨漢のオトコが入ってきた。見ると、友人でTVチャンピオンラーメン王選手権6代目チャンピオンの山本剛志さんではないか。

 ラーメンを食べつくしたチャンピオンだが、大晦日には「ひっそりと心に沁みる一杯」が食べたいそうで、数軒ある中から2018年は「新華」を選んで来店したそうだ。お気に入りは「ラーメン・小カレーセット」(650円)。やはり、閉店の真偽を確かめに来たそうで、再開の話を聞いて安堵した様子。

「新華」さんに挨拶し、駅前広場で山本さんと雑談などしながら、しっかりと「新華」の消えゆく昭和の姿を2人の目に焼き付けて、柴又をあとにした。

 がんばれ「新華」。柴又に「新華」ありだ。再開を楽しみに。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

新華
東京都葛飾区柴又4-8-15
営業時間 月~土 6:30~20:30
日祝  6:30~18:00
定休日 なし 

(坂崎 仁紀)

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