小銭を投げつける・ケガをさせる……脅威の「モンスター客」にどう対応すべきか?

文春オンライン / 2019年1月13日 11時0分

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 先日コンビニに行きましたら、レジで店員さんと客の男性が何やら揉めている現場に遭遇いたしまして。とりあえず店内を一周して商品を選び、5分後くらいにレジに向かったところ、さっきの男性がまだ店員さんに絡んでいるんですよ。

「あー、これは長くなりそうだなあ」と思いながら後ろで待っていると、慌てて別の店員さんが隣のレジに誘導してくれたため、会計を済ませながらそちらに耳を傾けていたんですよね。

「いやそんなに怒る???」とモヤモヤ

 すると、どうやら原因は店員さんのレジの打ち間違いだったようで「何、無駄な時間使わしてくれとんじゃコラァ! どうしてくれんねんオォ!?」と威圧する中年の男性と、「大変申し訳ございませんでした……」とひたすらに謝る20歳前後の店員さんを横目に「いやそんなに怒る???」とモヤモヤしながら店を後にしました。

 普通に考えて、「レジの打ち直しにかかる時間よりもお前が店員さんにネチネチ絡んでいる時間のほうが遥かに長いし、それこそ時間の浪費では……?」と思うのですが、あんなにもしつこくクレームを言い続ける姿勢を見るかぎり、彼らにとって肝心なのは、きっとそういうことじゃないんでしょうね。

「ん」とだけ言い、スポーツ新聞を差し出した

 私も大学生の頃にコンビニでアルバイトをしていた経験がありますが、クレーマーやモンスター客に遭遇するのは日常茶飯事でした。駅近くのコンビニであったため通勤・通学中のお客さんで賑わっている朝の8時、レジには常に長蛇の列ができているような状況で、とにかく早くお客さんをさばくマシーンと化していた私の前に現れたのが「横入り銭投げじじい」でした。

 見た目は60代半ば~70歳くらいで、肩まで伸びたボサボサの髪をキャップで押さえ、ボロボロのジーパンを穿いていたのが印象的でした。彼は並んでいるお客さんたち(10人くらい)を無視して私のレジに横からやってきては「ん」とだけ言い、スポーツ新聞を差し出しました。もしかすると、並んでいることに気が付いていないのかしら……と思い「申し訳ありません、ただ今レジに他のお客様が並んでおられまして、順番に対応させていただいておりますので、あちらでお待ちいただけますでしょうか?」と声をかけたんですよね。申し訳なさそうな顔で。

「じじい、この野郎!」と追いかけてやろうかと思ったんですが

 そうしたら、そのおじさま、突然「チェッ!!!」と舌打ちをし、私に130円(スポーツ新聞の料金ぴったり)を投げつけて、ガラスのドアを蹴り、スポーツ新聞を片手に店から出て行ったんですよ。投げつける必要ある? そして何で自分は並ばなくていいと思ったの? とか色々思うことはありつつ、あまりにも腹が立ちすぎて「じじい、この野郎!!!!!」と追いかけてやろうかと思ったんですが、私が出て行っちゃうとレジに並んでいるお客さんが困るわけなんですよね。しかも一応、スポーツ新聞の料金はぴったり支払って(投げつけて)もらってるし。お客さんたちも朝からそんな光景を見せられて、ただでさえドン引きしてるし……。

 そういった事情でしぶしぶ泣き寝入りするしかなかったんですが、あのときは一体どうするのが正解だったんでしょうか。今思い返しても理不尽な話です。

「横入り銭投げじじい」は「並びたくない」という明確な意図(目的)があるのでまだ相手の心理が分からなくもないんですが、どうしても理解ができないのは「意味もなく長時間粘着してくる客」なんです。

「お守りを渡してもらっていない!」とゴネる男性

 私は兵庫県のとある神社で巫女として働いていたこともあるのですが、そこで、6年ほど経った今でも忘れられない衝撃的な事件が起こりました。人もまばらな平日の昼下がり、「姉ちゃんよぉ! さっき俺お守り買ったのによぉ、お金だけ払ってお守り渡してくれてねぇじゃねぇか!」という電動車イスに乗った70歳前後の男性の声が響き渡りました。その日は暇で参拝客もあまりいなかったこともあり、私は先ほど訪れたその男性のことをよく覚えていました。

 10分ほど前、「これちょうだい」と言って交通安全のお守りを持ってきたその男性から代金をいただき、紙の袋にお守りを入れようとしたところ「いや、袋いらない。このままでいいから」と言い、彼はお守りをカバンにそのまま突っ込んで去って行ったのです。

 それなのに「お守りを渡してもらっていない!」とゴネる男性に「先ほど対応させていただいた者ですが、お守りをおカバンにお入れしておりませんでしたか?」と尋ねると、「そんなもん知らん! とにかく交通安全のお守りを渡せ!!」の一点張りで、カバンの中身を確認してくれない。一体これはどうしたものかと思っていると、後ろから「どうしたの?」という男性の声が聞こえました。当時30歳そこそこだった、神社で一番の若手の神主が現れたのです。突然の救世主の登場に「ようやく助かる」と安堵した私は、事情を一通り神主に話し、通常の業務に戻るために一旦その場を離れることが許されました。

「俺は兵庫のアルカイダやぞ!」と急発進

 その後も激昂してわめき続ける男性と、なだめようとする神主の攻防を遠巻きに見守っていた、まさにそのとき。不利な状況を悟ったのか、男性が突然「俺は兵庫のアルカイダやぞ!!! なめんな!!!!」と叫び、電動車イスを急発進させて神主の足にぶつけ、そのまま走り去ったのです。まさかのひき逃げです。スネを強打したらしくうずくまる神主。どんどん小さくなっていく兵庫のアルカイダの後ろ姿。

 神主に対しては「不憫」以外の気持ちが出ない事件でしたが、自称・兵庫のアルカイダについては本当に交通安全のお守りをカバンに入れたことを覚えていないのか、それともこちらに因縁をつけてもう1つ騙し取ろうとしていたのか、いまだにその真相が不明なのです。今思えば交通安全も何も、買った直後に事故(ひき逃げ)ってたし。

 例に出したエピソードは少し極端ではありますが、こうしたクレーマーやモンスター客に遭遇したとき、私たちはどう対処するのが賢いのでしょうか。接客業をしているとどうしても避けられない問題だと思いますし、未然に防ぐことができるものならまだしも、こちらに過失がなくても意味の分からない因縁をつけられることだってあるわけです。

バイトは泣き寝入りをしなくてはならないのか

 コンビニバイトは、お客様から小銭を投げつけられても怒ってはいけないのか? お客様からケガをさせられても泣き寝入りをしなくてはならないのか? そう考えると、絶対にそんなわけないですよね。後者に関しては完全に傷害事件ですし……。

「お客様は神様だ」みたいな前時代的な風潮を、何も考えずにそのまま次世代にまで押し付けるのではなく、まず私たち一人ひとりが、店員さんが「一人の人間であること」を再度認識しなくてはなりません。そして、これは雇用側の企業にも声を大にして申し上げたいことです。行き過ぎた「お客様優先主義」は従業員を人間扱いすることもありませんし、ましてやクレーマーから守ってくれることもないでしょう。「お客様は神様だから、何をされても謝っておけ」というイカれた思想のもとでは、働き手がどんどん離れていってしまうことは明白です。人材が定着せず、いずれ自身の首を絞める結果になるのではないでしょうか。

 個人的な要望としては、「ここまでされたらキレてもいいよ」という水準(マニュアル?)を企業側がスタッフ向けに設けてくれることが一番嬉しいです。現場の人間がそうやって戦える環境を作ってくれるだけでも、理不尽な客に対して「すみません……。申し訳ありません……」だけを無限に言い続けるあの地獄の時間を削減できると思いますので。何卒よろしくお願いいたします。

(吉川 ばんび)

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