乳がんで“全摘出”を決めたAV女優のまりかさん「私が乳房再建のドクターにお願いしたこと」

文春オンライン / 2019年3月14日 11時0分

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まりかさん

 先月、乳がんを公表したMarica(日本での活動名は「まりか」)。彼女は日本でAV女優としてデビューし、現在はアメリカ・ロサンゼルスで暮らしながらポルノスターとして活躍している。衝撃の乳がん宣告のあと、セカンドオピニオンを受ける中で乳房を全摘出するかどうか、女性にとって、そしてポルノスターという職業にとって難しい選択を迫られたという(全2回の2回目/ #1 より続く)。

がん治療で世界一とも言われている病院へ

 乳がんの宣告を受けて帰宅し、手術のことを伝えていた仕事仲間や友人たちにがんだったことを報告したところ、アメリカの月刊誌「PENTHOUSE」のオーナーからセカンドオピニオンを受けるべきだと言われました。

 紹介されたのは、がん治療で世界一とも言われている「City of Hope」という病院です。ここで、数々の治療の選択肢を示されました。

 それまでの私は乳房の全摘出がとても怖くて、その手術を受ける可能性について考えられませんでした。ですが、乳房を温存(部分摘出)した場合は「残っているかもしれないミクロのがん細胞をなくすために放射線治療が必要」であると知りました。さらに、全摘出の場合は乳房の「再建」という方法があること。また、いずれの手術を受けても抗がん剤治療が必要になる可能性があることも。

「なるほど、だったらさらに詳しく、それぞれの治療の長所や短所を知らないといけないな」

 と思ったのですが、ここからがまた大変でした。治療プロジェクトをまとめる人、手術をする人、放射線治療を行う人、乳房の再建を行う人……全てドクターが異なるため、それぞれに予約を取って話を聞きに行かなければならないのです。

 そして私のケースについて、次の事柄をそれぞれのドクターから示されました。

私が優先したかった「ポルノに復帰したい」という気持ち

<部分摘出のメリット>
・手術時間が短い。
・自分の胸を温存できる。

<部分摘出のデメリット>
・部分摘出を予定して切開した際に、想定よりもがんが大きかった場合、腫瘍を取らずに閉じて、もう一度手術を行うことになる。
・最低40回の放射線治療を行う必要がある。ただし、放射線治療を行うと、皮膚が硬くなって跡が残るケースもある。
・放射線治療を行なった後に再発し、全摘出手術を行なったら、シリコンのバストをつけるのが難しくなる。
・すでに腫瘍を取っているため小さくなっていた右の乳房がさらに小さくなってしまう。つまり左右のバランスの違いが大きくなってしまう。

◆ 

<全摘出のメリット>
・傷が治れば治療も完了。バストをきれいな状態で保てる。
・約半年で傷はメイクで隠せるレベルになる。

<全摘出のデメリット>
・再建も同時に行うので、手術時間が長い。
・自分の胸を失う。

◆ 

<抗がん剤治療について>
・いずれの手術を受けても行う可能性がある。抗がん剤治療を行うケースは2パターン。複数の場所に転移していた場合と、がんの種類が抗がん剤で治療できるタイプだった場合。
・転移については「おそらく心配ない」とは言われていたが、これも手術するまで確実なことは分からない。

※まりかさんが受けた診断に基づいた内容です。

 2つの手術のメリット・デメリットを聞いた後の私は、「全摘出」一択でした。私が最も優先したかったのは「ポルノに復帰したい」という気持ちでしたから。

 アメリカのポルノスターの多くは、バストの美容整形をしています。彼女たちにとっては、隠すようなことではなく「プロだからお金をかけて、より自分をセクシーに見せる努力は大事なこと」という考え方をしています。インスタなどで「これからおっぱいに生理食塩水を○○cc入れてくるの。もっとセクシーなおっぱいを作ってくるから楽しみにしてて!」なんて動画をアップする人もいるくらい。

 だから乳がんの手術をして、胸がシリコンになったところで、ポルノに復帰するにあたってのデメリットが大きいとは思えませんでした。

 もちろん全くデメリットがないわけではありませんが、がんと闘い、そしてポルノに復帰する。その経過をSNSやYouTube、ブログを始め、様々な形で発信することで、同じようにがんと闘っている方たちの何かしらの役に立てるのではないかと思ったのです。

セカンドオピニオンにも、けっこうお金がかかる

 専門ごとに異なるドクターと会い、血液検査を何度も行い、「この治療でいこう」と決めるまで、やるべきことが本当にたくさんあります。

 ちなみに、こうして医師の意見を聞きにいくだけでも、多額の費用がかかるのがアメリカの医療。つい最近届いた明細を見てわかったのですが、たった1回、ドクターに話を聞くだけで自己負担が6万円。アメリカで治療を受けるのは、なかなか大変です。

年に1回の定期検診でも見つけられなかった「がん」

 私がアメリカに本格的に移住したのは2014年のこと。健康保険に加入したのを機に、年に1回エコーによる乳がん検診を受けてきました。

 それでも見つけられなかった今回のがん。早期発見の難しさを感じると同時に、治療の選択肢が複数あること、そしてその選択によって未来が変わってしまうことを、とても強く実感しました。

 同時に、不安で色々な情報を調べたのですが、「私が知りたいことがない!」と思ったのも事実。自分ががんだとわかった後、どのような行動を取ったらいいのか、どのように受け止め、どのように未来を切り開いていくのか。

 治った後のことよりも、「今の自分の状態」や「今の私ができること」を知りたかった。その情報の少なさに驚き、だったらできるだけ自分の今の姿を公開していこうという決意が生まれました。

私らしく、ポルノスターとして日々を送りたい

 アメリカのポルノスターは、撮影が終わった後のインタビューで、乱れたヘアメイクを直すようなことはしません。作りものを見せるのではなく、「頑張ったよ!」というリアルな姿をファンに見せます。

 なぜなら、アメリカのポルノスターは、ポルノスターである前に人間だという考え方で仕事をしているから。そのため、作品ではとびっきりセクシーに振る舞う一方で、オフショットやSNSでは一人の人間として、すっぴんの姿も見せる。そんな風に生きています。

 だから、私が治療する姿を見せようと決断したのも当然の成り行きでした。 YouTube では、シュガーフリーのお菓子を作ったり、血液検査に行ったりする様子を映像でお伝えしています。英語と日本語で編集していますので、ぜひ見てみてくださいね。

 2月20日には再建のためのインプラントを見にいってきました。「これが自分の胸に……」と感慨深かったです。ちなみに、乳房を再建するドクターへのリクエストは、「ナチュラルに美しく見えること」です。

 さて、今回の手術では300万円~500万円の費用がかかると言われています。もうじき予算表が来ますが、最終的な金額は請求書が来るまでわかりません。手術もドキドキですが、この請求にもドキドキです。

 そんな怖さと向き合いながら、手術の日まで私らしく過ごしたいと思います。

 私らしく過ごす……それは、ポルノスターとして日々を送ること。私がプロデュースしたポルノ作品の撮影や編集に追われ、がん患者なのに忙しい毎日です。

 そして手術を終えたら、復帰してからの日々のことを考えます。

 AVデビューから10年間、様々な作品に出演し続けてきて、こんなに長いお休みは初めてなので、復帰後初の撮影現場はどんなものでも嬉しいんだろうな! とか。将来は、ポルノのプロデューサーになって、まだアメリカにないポルノメーカーを作りたいな! とか。メーカーを作ったら、日本人女優さんに出演してもらいたいな! とか。ポルノは私の人生! だから、復帰を楽しみに待っていてくださいね。

 まりかさんは乳がんを抱えながらも、世界的なポルノ賞である「AVNアワード」「XBIZアワード」でノミネートされ、華やかな衣装でレッドカーペットを歩いた。彼女は、日本人女性ではまだ誰も足を踏み入れていなかったアメリカのポルノ業界に単身で乗り込み、道を切り開いてきた。そして今後は、乳がん治療の道を切り開いていく。まりかさんの手術費用をはじめとした治療にかかる費用は、こちらのクラウドファンディングサイトから支援できる。

「 GoFundMe 」(https://www.gofundme.com/f/ny6gu5-breast-cancer-sucks)

(中山 美里)

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