「ずっと童貞のままでいいのか!」好きな男の子に肩を揺さぶられたゲイ少年の気持ちとは

文春オンライン / 2019年4月4日 17時0分

写真

©平松市聖/文藝春秋

連載「僕が夫に出会うまで」

 

2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京……僕が夫に出会うまで、何を考え、何を感じて生きてきたのかを綴るエッセイ。毎週連載。

 

(前回までのあらすじ)高校生の僕は、同級生で親友の男の子、ハセに恋心を抱いてしまう。ひょんなことからハセの恋人「マミちゃん」と同じ健康ランドで働くことになった僕は、嫉妬と寂しさからハセに電話をかけ、号泣してしまう。ハセは僕を心配し、病院に行こうと諭した。

 

(前回の記事「 『君にはわからないかもしれないけど』精一杯の告白に、片思いしてる男友達が返した言葉 」を読む)

この連載を 最初から読む

 ハセに電話をかけて号泣してしまった日から、数日がたった。ハセに病院に行くよう説得されたが、病院へ行ってしまうと、なにかイケナイ事が発覚してしまいそうで、それだけは絶対に避けたいと考えていた。

親友に相談できたら、どんなに楽になれるだろう

 僕の様子がおかしいと察したのは、ハセだけではなかったようだ。 学校へ行くと、同じクラスの親友である翔が、僕の顔を覗き込み、遠慮がちに言った。

「七崎、最近元気ないよね? なんかあった?」

 ハッとした。そんなつもりはないのだけど、元気が無さそうに見えていたのか。心配かけてごめんと思った。もし、ここで翔に相談できたら、どんなに楽になれるだろう。実は、自分が男を好きな変態なのかもしれないと恐れていること。ハセを好きかもしれなくて悩んでいるということ。そしてハセに彼女ができて苦しんでいることを。

 だけど、そんなこと、話す勇気はなかった。

「ほんと? ちょっと疲れてるだけだと思う。全然元気!」

 僕は親友に嘘をついた。笑顔を見せたが、ちゃんと笑顔になっていたのかは疑問だったし、翔と目を合わせることができなかった。

「良かった! なんかあったら何でも言って! 俺でよければさ!」

「もちろん! なにかあれば、すぐ翔に相談するよ!」

 なるべく心配かけないようにしなくてはいけないと思った。

彼女を作ることがいかに素晴らしいか聞かされ続けた

 ハセはあの電話以降、僕に、彼女を作ることがどんなに素晴らしいか説き続けた。僕に彼女がいなくて孤独だから、僕の精神が不安定になっていると、ハセは考えているのだ。僕の為を思って言ってくれているのはわかっているが、ハセの言葉はグサグサと胸に突き刺さった。

「彼女がいるとな、ずっと彼女の事ばかり考えてしまって、いつでも会いたいと思うんだぞ! 七崎にはそんな相手が必要なんだよ、お前ならすぐにできるだろう!」

「ハセは今もマミちゃんに会いたいの?」

「もちろんだよ! だから七崎もそういう相手を見つけろ!」

 僕といても、ハセの頭の中はマミちゃんでいっぱいなんだと知った。僕の頭の中がハセの事でいっぱいなのと同じように。

「彼女なんて作りたくない! そんなもん、くだらない! 友達がいればいいもん。ハセとか……」

「じゃあ、ずっと童貞のままでいいのか、七崎!」

 ハセは僕の両肩を掴み、大きく揺さぶった。最近ずっと泣いていたはずなのに、ハセに肩を揺さぶられているというだけで、こんなに幸せな気持ちになれてしまう自分が怖かった。

「いい! 一生童貞でいい!」僕は言い切った。

 僕は今までに、女の人に対して性的な欲求を感じた事がほとんどなかった。エッチな本を見て、自慰行為だってするが、女の人を見て興奮をするというよりも、男の人が写っていたら、やっぱり男の人を見てしまう。女の人しか写っていないものを見るくらいなら、ダビデ像を見ていた方がマシだった。

 でも、世の中に男の人のヌードは、女の人のヌードに比べて圧倒的に数が少ない。だから、エッチな本を見ながら「この女の人は、どんな男の人に抱かれているのだろう」とか「男の人に抱かれて、どんな気持ちなんだろう」とイマジネーションをふくらますしかないのだ。

ひさしぶりに2人で健康ランドに

 ハセがどんなに恋の素晴らしさを説いても、僕は受け入れなかった。だって、僕にとっては、こうして、ハセと過ごす時間が幸せなのだから。

「わかった、もういい! そうだ、温泉行くぞ!」

 ハセが言った。僕に彼女を作らせ、精神を安定させる作戦はあきらめたように思えた。

「いいね! どこの温泉いく?」

 心が躍った。ハセと二人で出かけるのはとても久しぶりだった。

 ハセはマミちゃんが出勤している、健康ランドに行きたかったようだ。きっと、お風呂に入って、マミちゃんのバイトが終わるのを待つのだろう。僕のバイト先でもあるので、僕は無料でお風呂に入る事ができる。ハセの入場券を割り勘で買って、お風呂に入った。

並んで身体を洗っているときに起きた事件

 大好きなハセと一緒に過ごせるのが、僕にとっては何よりも嬉しい。それ以上は望まない。一緒に温泉に入っても、ハセの身体は見ないように気をつけていたのだが、洗い場で、二人並んで身体を洗っている時に事件は起きた。

 ハセが突如、洗い場の椅子から立ち上がり、言った。

「おい、七崎。見ろよ!」

 僕がハセの方を向くと、ハセの裸体が目の前にあった。ハセが自分の股間を指さしている。割れた腹筋。ヘソの下から、綺麗な一列に薄く毛があって、股間の毛につながっている。そして、僕のちょうど目の前。いや、僕のちょうど口の前には、ハセのペニスが重力に逆らえずにボロンと、ぶら下がっている。僕はなぜかニュートンのリンゴを思い出していた。(なぜペニスはぶら下がっているのか……)。

 身体を洗っている途中だったからか、ハセの裸体には少し泡が残ったままだ。僕は、その泡になれたら、そのまま消えたっていいと思った。

「デカくなった気がするんだけど、どお?」

「どうしたの?」

 ハセはまだ自分の股間を見せつけるように立っている。

「俺、セックスしてから、ちんこがデカくなった気がするんだけど、どお?」

 手を伸ばせばそこにある、ハセの御本尊。だが僕は冷静を装って答えなければならない。

「今まで見てなかったから……わからないよ。けど、なんか、僕のとは全然違う……」

 僕は、自分のものと、ハセのを交互にみたが、形も大きさも、色も毛並みも、なにもかも全く違うものに見えた。そもそも僕のは、こんなに重々しくぶら下がってはいなくて、身体にもっと、フィットしている(重力に逆らっている)。

「デカくなった気がするんだよ! それにセックスをしてから、人に裸を見られるのがあまり恥ずかしくなくなった! だからお前も、いい加減童貞卒業しろよ。まずは彼女を作ろう! な?」

 ここまでされると「わかった! 考えてみる」と言わざるを得なかったが、頭の中はハセのペニスを見てしまったことでいっぱいだった。高校2年の秋だった。

(続き「 東京ツインベッド 」を読む)
(この連載を 最初 から読む)

(七崎 良輔)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング