「1回トランプ氏に電話してみろ」……金正恩の“最強の右腕”が更迭された理由

文春オンライン / 2019年5月14日 6時0分

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4月中旬の重要行事も欠席した金英哲氏 ©共同通信社

 5月4日午前、日本海方向に短距離ミサイルを発射した北朝鮮。約1年5カ月ぶりのミサイル発射だった。

「2月の第2回米朝首脳会談が決裂して以降、金正恩朝鮮労働党委員長は米国への苛立ちを募らせてきました。今回の短距離ミサイル発射は、北朝鮮の発射自制を“外交実績”として誇ってきたトランプ大統領に対する牽制と見られます」(外務省担当記者)

 そうした中、韓国の国会で報告されたのが北朝鮮のあるトップ人事。対米交渉の中心人物、金英哲朝鮮労働党副委員長が、兼任する統一戦線部長を解任されたというのだ。

「金英哲氏はこれまで米朝首脳会談や南北首脳会談全てに同席してきました。それだけ正恩氏の信頼も厚かった。金英哲氏は金日成時代から長年、南北問題を担当するなど“軍事交渉のプロ”です。哨戒艦沈没事件の計画も一緒に練り上げた間柄。米朝協議を統一戦線部長の金英哲氏に任せてきたのも、『対韓国と同様に対米交渉も工作活動と考えるべき』という発想からでした」(韓国政府関係者)

「1回トランプ氏に電話してみろ」携帯電話を投げつけた

 金英哲氏の交渉は「とにかく強硬姿勢」(同前)。昨年6月の第1回米朝首脳会談から約1カ月後、訪朝したポンペオ米国務長官が非核化を迫ると、金英哲氏は「1回トランプ氏に電話してみろ」と携帯電話を投げつけたとされる。

「昨年10月の再訪朝でポンペオ氏は李容浩外相との交渉を求めましたが、正恩氏からはね除けられた。“あくまで金英哲氏が相手だ”ということ。以降も金英哲氏が正恩氏の親書を手に訪米し、交渉を重ねてきたのです」(同前)

 だが、第2回米朝首脳会談は決裂。これまで多くの官僚を粛清してきた正恩氏だが、

「金英哲氏を強く推した経緯もあり、首を切れば、自身の責任論に繋がりかねない。当面は対米ラインの切り替えで終わらせ、党副委員長の肩書きは残しました」(同前)

 日本への影響はあるのか。

「今井尚哉首相秘書官は昨春、『金英哲が俺のことを呼んでいる』などと吹聴していました。金英哲氏の部下、金聖恵氏と北村滋内閣情報官が接触したことも判明している。ただ、日朝首脳会談の可能性も囁かれる中、このルートに頼るのは危険と言わざるを得ません」(外務省関係者)

 非核化、拉致問題解決への道は依然として険しい。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年5月16日号)

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