ずん飯尾和樹が語る恩人“出川哲朗”「隊長は僕のお笑いコーチなんです」

文春オンライン / 2019年5月26日 17時0分

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お笑いコンビずんの飯尾和樹さん

50歳ずん飯尾和樹が振り返る「40歳で食えなくなって清掃のバイトをした話」 から続く

 事務所の先輩・関根勤さんやブレイクのチャンスを作ってくれたとんねるずなど芸人として多くの“恩人たち”に助けられてきたというずんの飯尾和樹さん。

 なかでも「隊長」と呼んで慕う出川哲朗さんは大事な番組の前に的確なアドバイスをくれる“コーチ”なのだと話してくれました。(全3回の3回目/ #1 、 #2 も公開中)

◆◆◆

「あの番組はVTR中心だから、V明けのコメントに集中して!」

―― 芸人として相談する先輩っていますか。

飯尾 浅井企画の先輩、関根さんはもちろんですけど、他の事務所で言うと、やっぱり出川さんですね。公私ともお世話になっていて、仕事が入り始めて「今度、この番組行きます」って言うと、百戦錬磨ですから、(出川さんの口調を真似て)「あの人はこうだから、絶対すかさないで」「わかりました!」って。俺らの“バッティングコーチ”ですね。「あの番組はVTR中心だから、V明けのコメントに集中して!」とか(笑)。

―― 出川さん、そんな分析まで……。

飯尾 すごいですよ。カリスマっていわれているディレクターと一緒にご飯食べて。「どうですか、うちの最近の番組?」って出川さんに訊いたら、「あー、正直、昔は録画して見てたけど、今はそういう感じじゃないね」「何でですか?」「前の形がすごく良かったのに」って言って。そしたら2カ月ぐらいして、視聴者の反応が悪かったってその番組が前の形に戻っているんですよね。出川さん、ああいうキャラですけど、スゴい分析力。ホントに教えてもらってます。

 あと相談の話だと、関根さんたちとの舞台(カンコンキンシアター)に(明石家)さんまさんが見に来られるんですけど、その後反省会が始まるんですよ(笑)。食事しながら。でもさんまさん、難しいことは、本当に一つも言わないんです。「1秒待て」とか。あとはツッコミに喋っていると(観客に)ボケるとわかってしまうよと。だから、「ツッコミから視線を逸らせ」と。次の日、そのやり方通りやるとしっかりウケるんですよ。

内村さんに教わった「スベッてから考えろ!」

―― へえ、少しの視線の違いだけで!

飯尾 関根さんも的確ですよ。言い訳一切しないですからね。関根さんは舞台の稽古をやっているとき、目の迫力がすごい。ボケてるときも目がイッちゃってる(笑)。あれは見ていて興奮しますね。15歳上でいま65歳なんですけど、自分が15年後にこれができているかなって思っちゃいますね。それくらい関根さんの現役感がたまらない。『イロモネア』でも僕たちと一緒にチャレンジしてくれる。もう立場的に審査員でいいのに、それじゃ満足できないんですよね。プレーヤーでいたい。あのイズムは見習いますよね。

 あと内村(光良)さんやさまぁ~ずさんからは『内P』で、「スベってから考えろ」というのを教わりましたね。本当に何でも面白くしてくれるんで。収録が終わってから絶対飲みに行くんですよ、スタッフも含めてみんなで。そうすると、内村さん、さまぁ~ずさん、番組の優秀なスタッフの人たちから、「あそこ面白かったな」「あそこであのギャグをもう1回やれば良かったじゃない」とか、言ってくれるんですよね。“公文式”が待っているというか、“赤ペン先生”がいるというか。大喜利のフリップの出し方ひとつでも、フリップにボケを書いてるのに、フリップを出してから読むと、先にボケがわかっちゃう。それだと笑いが半減しちゃうから言いながら出せばいいんだとか。まあそれぐらい普通は自分で気づくんですけどね(笑)。

「飯尾くん、『IPPONグランプリ』は芸人人生を変えるよ」――走り去ったポルシェ

―― 飯尾さんは大喜利が得意ですよね。

飯尾 いや、得意とかじゃなくて、好きなだけですね。あるとき、バッファロー吾郎さんがやられている「ダイナマイト関西」ってイベントで、事務所対抗の大会を作ってくれたんですよ。で、「飯尾さん、キャプテンになって人数集めてください」って言われて。ウド(鈴木)とか、インデペンデンスデイと事前に練習合宿に行こうって、静岡に行って。市役所に銅像とかオブジェがあるじゃないですか。「このタイトルを言いなさい」とかって、みんなでやりましたね。それで、ホテルでご飯食べた後、飲みながら、色々大喜利のお題出しては答えてってやってたんですけど、おならが出ちゃったんですよ。ブッて。そしたらそれが一番面白くて。なんなんだろうって。おならが一番面白いな、今日1日でって。それで、解散したんですよ。「解散、解散、寝ろ、寝ろ」って(笑)。うん、でも好きですね、大喜利は。

―― 『IPPONグランプリ』での活躍も印象的です。

飯尾 『IPPONグランプリ』の出演が決まったとき、ちょうど出川さんとヤクルト戦を見に行ったんですよ。出川さん、いつも一滴もお酒飲まなくてポルシェで、家の近くまで送ってくれるんです。出川さんのことは「隊長」って呼んでいるんですけど「隊長、『IPPONグランプリ』決まりました」って言ったら、(出川さんの口調を真似て)「おめでとう。おめでとう、飯尾くん。『IPPONグランプリ』は芸人人生を変える番組だから。いつ?」「1週間後です」「この1週間、『IPPONグランプリ』のことだけ考えて」って。「わかりました。頑張ります」。家の近くで下りて、「じゃあ」ってパーッとポルシェが走り去って……。

―― 出川さん、カッコいい!

飯尾 でもそのときふと、「あれ? 隊長、『IPPONグランプリ』、出たことないよな」と(笑)。うん、でもあの人ほどいろいろなバラエティをチェックしている人、いませんからね。

「よろけたついでに由美かおる」誕生秘話

――他にも相談相手になってくれる芸人さんは。

飯尾 相談相手ではないですけど、やっぱりとんねるずさんにもチャンスをいただきましたね。とんねるずさんはホントにフラットで、誰が流行ってるとか関係ないんですよ。芸人が集まって、とんねるずさんのフィーリングでパッとやって、その場でリアクションが面白かったら、次もフッてくれる。そういうやり取りの中で生まれたんですよね、「よろけたついでに由美かおる」は。

―― ああ、そうだったんですか!

飯尾 狩野英孝ともみくちゃになって、狩野英孝に投げ飛ばされたんですけど、すごい変な空気になっちゃって。石橋(貴明)さんに「どうすんの、ペッコリ先生?」って言われたときに、「投げ飛ばされたついでに由美かおる」って言ったら、それで笑ってくれて。もう由美かおるさんには、ほんと感謝してます(笑)。

急に「ホタテ~っ!」と叫んだやす

―― 飯尾さんはスベったり噛んだりした時にそれは「生きてる証」だって常々言われますが、そういう境地になれたのはいつ頃ですか?

飯尾 けっこう遅いですね。37歳ぐらいですかね。年末12月の29日か30日ぐらいに、やすと喫茶店でランチを食べた後、優雅にネタを考えていたんですよ。仕事納めだ、なんて言いながら。そしたらキャイ~ンのウドから電話がかかってきて、その日にやる忘年会、ちょっと特番で遅れるって言われたんですよ。

「わかった、わかった」って電話を切って、やすに「キャイ~ンは遅れるってよ、今日。特番で」と報告しているときに、「あれ?」って。そう言えばここで3日連続でランチを楽しんで、優雅にネタ書いてるけど、こんな芸人にとってかきいれ時に大丈夫かって(笑)。「ちょっと、やす、俺たち、ヤバいんじゃねえか。できてるふりして、俺たち何もできてないんじゃないか」って。それでもう、今日から人に甘えようって。MCに甘えよう。バンバン、バンバン、スベってもいいから何でも答えていこうと。「何もなくなったら、好きな食べ物でも叫べばいいじゃないか」って決めたんです。そしたら年明け1発目の仕事で、やすがMCと絡んで、15秒後に「ホタテ~っ!」って叫んでましたね(笑)。ああ、もう言うことなくなったんだって。MCもびっくりしちゃって。「なんだ、キミ、急に」って(笑)。

 だからいっつもぶん投げです。質問して、しゃべって、あと編集してくださいっていう。俺はもう出しましたと。そうしたら「生きてる証」って境地になれて。

「パンの余韻を感じさせない」石原さとみさんの演技

―― 最近はドラマにも出演されてますけど、演技は難しくないですか。

飯尾 やっぱり役者さんたちはスゴいなって思いますね。昨年『アンナチュラル』に出させてもらったときに、主演の石原さとみさん中心に、休憩時間にみんなでパンの話をしてたんですよ。「俺、このパン好きですね」とか言って、ハハハハッて笑って。その数分後に本番で、その笑いなんかなかったかのように石原さんは「この殺人は」とか「これは窒息死」とか迫真の演技をするわけですよ。俺はまだパンの余韻が抜けないのに……。

―― そうやってご自身が出演した番組はご覧になるんですか。

飯尾 相方やマネージャーさんに「面白かったよ」と言われてから、初めて見るタイプですね。最初は、だい~ぶ距離をとって遠くからテレビを見てて、「ウケたウケた」と安心したらテレビに近づいていくみたいな(笑)。

「山ちゃんが出ている番組は見ちゃいますね」

―― いま見るのを楽しみにしているテレビ番組ってあります?

飯尾 『お笑い向上委員会』や『かりそめ天国』、『アメトーーク!』は面白いですし、『充電させてもらえませんか?』、『旅猿』とか、『くりぃむナンチャラ』、『(全力!)脱力タイムズ』はよく見ますね。

―― やっぱりお笑い番組が中心ですね。

飯尾 あとは『ワイドナショー』や『サンジャポ(サンデージャポン)』。山ちゃん(山里亮太)が出てるとその番組も見ちゃいますね。

―― 山里さんですか、どうして?

飯尾 もう山ちゃんは昔からリターンのエースだと思うんでね。コメントもすごい。あとボケをすかさない。一緒にロケしたとき、全部ボケを拾ってくれましたからね。俺のショートバウンドも(笑)。山ちゃんアザだらけじゃないかって。よく話すんです。

 海上保安庁の映画『海猿』ってあるじゃないですか。溺れている人を助ける。だから、山ちゃん、小籔(千豊)くん、とか有吉(弘行)とか水谷千重子さん(笑)……僕はああいう人たちを「笑猿(わらざる)」と呼んでいるんですよね。ピンチのボケを救ってくれる。溺れてるんだから、助けてくれって(笑)。必死にやってれば、先輩方や同期はもちろんですが、後輩までも救ってくれる。テレビの現場現場には、たくさんの「笑猿」がいるんです(笑)。本日も出動をお願いします(笑)。

写真=山元茂樹/文藝春秋


#1 ずん飯尾和樹50歳が明かす「同期芸人のウド鈴木とコンビを組まなかった理由」
https://bunshun.jp/articles/-/12067

#2 50歳ずん飯尾和樹が振り返る「40歳で食えなくなって清掃のバイトをした話」
https://bunshun.jp/articles/-/12068

いいお・かずき/1968年生まれ、東京都出身。1990年、浅井企画に所属。1991年、お笑いコンビ「チャマーず」を結成しデビューを果たすも、翌年解散。1992年、村山ひとしと「La.おかき」を結成。その後、1997年のLa.おかき解散後からしばらくは1人で活動。2000年に同じ事務所のやすと「ずん」を結成し現在に至る。ボケ担当。

◆6/8(土)~ WOWOWプライム 毎週土曜 午後10時~(全4話)  『連続ドラマW ミラー・ツインズSeason2』  出演

◆6/23(日) 開演17:30(~20:00頃) 『浅井企画 お笑いダイナマイトショー 2019 ~Go Go 高円寺~』 に出演

(てれびのスキマ)

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