ファンも心配、西武・平井克典投げすぎ問題 “昭和の男”小野投手コーチを直撃

文春オンライン / 2019年7月3日 11時0分

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73試合消化時点で39試合に登板している平井克典

 リーグ連覇を狙う今季、西武ファンを最も心配させているのがセットアッパー・平井克典の「酷使問題」だ。

 チームの73試合消化時点で39試合登板は、松井裕樹(楽天)と並びリーグ最多(今季の成績は7月1日時点、以下同)。投球数は804球で、リーグの中継ぎ投手で最も多い(「データで楽しむプロ野球」参照)。ツイッターで「aozora」さんがつぶやいているデータを参考にすると、「回跨ぎ」はリーグ最多の16回ある。

「同僚とかに『疲れているの?』って聞かれると、『俺、人間だから疲れるよ』って(笑)。でも、ファンの人に心配してもらうのはありがたいですけど、そんなに投げすぎという感覚はないです」

 5月24日の日本ハム戦の前、平井自身はそう話していた。

 菊池雄星(現マリナーズ)と同い年の中継ぎ右腕は入団3年目の今季、70試合登板を目標に掲げ、順調に登板を重ねている。首脳陣の信頼の証しのように、連投、「回跨ぎ」は当たり前で、5 、6点差で勝っている試合終盤でもマウンドに登る。他の中継ぎ投手への信頼が薄いのか、分業制の確立された現代野球では“非常識”とされる起用法が何度も行われている。

 そんな投手陣の運用者こそ、今季8年ぶりに現場復帰した小野和義コーチだ。

「ケツをたたきまくります。昭和でいきますよ」(日刊スポーツ電子版より)

 開幕前にそう話していた“昭和の男”の起用法に、懐疑的なファンは少なくない。メディアにとっても平井の登板ペースは大きな関心事で、たびたび記事になっている。

 一方で不思議なのが、小野コーチの声がほとんど報じられていないことだ。

「あの人、あんまり喋らないですよ……」

 放送関係者からそう聞いていたが、誰も伝えないならば、“文春野球砲”が直撃することにした。

小野コーチに直撃 平井の「酷使問題」をどう見ているか

「俺、悪いこと、何もしてないよ(笑)」

 6月28日のオリックス戦の試合前練習を終えた小野コーチに「文藝春秋」と書かれた取材パスを見せて名乗ると、冗談が返ってきた。同日の試合前時点で平井の登板試合数はリーグ2位、投球数は中継ぎで同1位という事実を振ると、「いいじゃないですか、いいじゃないですか」と饒舌に語り出した。

「彼自身が持っている能力をもうちょっと引き出せると思うので、いろんな経験をさせている。極力、壊さないと言うとおかしいけど、あまり無理をさせないように。このままだと70試合くらい放れるでしょうから、そこまで投げて大丈夫という体力がつけば、彼はもっと進化するでしょう。セットアッパーとしてのキャリアをどんどん積んで、球界を代表する中継ぎになることを僕は目指しているし、彼も目指しているでしょうから。あとは投げていくうちに1年間、70試合もつ体力さえつけば、全然大丈夫だと思います」

 実際、平井は多くの試合に投げたいと望み、首脳陣は信頼を寄せている。それなら両者にとってWin-Winかもしれないが、問題はシーズンをトータルで考えた場合だ。例えば交流戦の最後、6月23日の阪神戦では7回から登板したが、5点リードで迎えた8回を「回跨ぎ」させる必要はあったのか。

「でも、1イニングに何点取られるかはわからないわけですよ。その勝っているゲームをとりに行くのだったら、一番信頼の置けるピッチャーを出したほうがいい。それが5点差だろうが、6点差だろうが、うちが勝っているのをとりにいくんだったら、そういうピッチャーしか(任せられる者は)いない。その前に連投させていれば、別ですけど」

 たとえ5点リードがあっても、他の投手より信頼感のある平井を続投させるのが勝利への近道ということだろう。加えて言えば、「回跨ぎ」はメンタル的に難しいというリリーフ投手は少なくないが、平井は「もう1回投げられるなら、いいじゃんって!」と言い切るほどである。

 西武の先発投手の防御率4.75はリーグ最悪で(「データで楽しむプロ野球」参照)、平井ほど信頼度の高い中継ぎ投手はいないのが実情だ。小野コーチが続ける。

「基本的には1イニングで行けばいいけど、うちは先発がそれほどもってない。平井が6、7回、7、8回と行けるのであれば、助かるし。それが今後、あいつの野球人生の中で逆に生きてくれればいい。『1イニングしか持たないよ』というピッチャーじゃなくて、『2イニング、いつでも行けますよ』というピッチャーであれば、使い勝手がいい。基本的に、投げる体力は絶対に必要なので」

 中継ぎ投手にとって、「投げる体力」は試合でしか身につかないと平井も話している。

「先発とは別で、僕らはショートイニングで一気にマックスに持っていかないといけないので、疲労もかかってくる。試合の疲労に耐えられる練習というのはないですしね」

小野コーチが明かす起用基準

 登板の中で平井を成長させる一方、起用基準について小野コーチはこう明かした。 

「今の段階ではたぶん3連投はさせていない。2連投までで終わらせている。それで中を空けるという使い方をしていると思いますよ。これから後半戦で連投があるだろうから、2イニングじゃなく1イニングずつ行こうかという考えでやっています」

 実際には、3日連続登板は4月23〜25日のロッテ戦であるが、その1度のみだ。2試合に1度のハイペースで起用する一方、一定の考慮はされている。

 ただし問題は、「平井プロ」とファンに言われるほどのハイパフォーマンスがシーズン最後まで持つのか、だ。

 6月29日のオリックス戦で、6対0で迎えた8回の1イニングを無失点に抑えた投球について、平井は「内容が0点以下。採点できないレベル」と振り返った。無駄な四球などでピンチを招いたが、交流戦終盤から状態が良くないという。「疲労は?」と聞くと、「関係ない」と即答した。

 翌日の試合前練習で腕の振りと体の回転のタイミングを調整した結果、7回2死2塁のピンチで登板し、「回跨ぎ」で8回まで無失点。投球メカニクスを見直したのは、小野コーチと西口文也投手コーチの指摘もあったという。そうして前日より投球内容が改善された一方、7回のピンチでマレーロを二塁ゴロに抑えたのはフォークが抜けたもので、「結果はたまたま」と振り返った。

 30日のオリックス戦後、再び小野コーチを直撃した。平井は交流戦終盤からコンディションが良くないというが、どう感じているのか。

「多少疲れは出ているだろうけど、我々はあくまでプロフェッショナルで、そういう自己管理をきちんとやらないと。求められたところで応えていくのがピッチャーの仕事なので。そこは厳しいかもしれないけど、そういう立ち位置にいるから、しっかり自己管理が必要になってくると思います」

西武の投手運用は昭和の頃から進歩しているのか

 個人事業主のプロ野球選手は、自己管理をできなければ一流になれない。2017年に42試合、翌年64試合に登板した平井は蓄積疲労が「なくはない」と言い、今年はコンディショニング維持を目的とするトレーニングにメリハリをつけるようにした。昨年までは「ちょっとしんどいけど、やろうかな」と不安に突き動かされる部分もあったが、今年は「やめる勇気というか、休養をとるようにしている」。結果、昨季よりコンディションが「全然いい」と5月4日に話していた。

 小野コーチの言い分は正論で、各投手に自己管理が求められるのは当然だ。ただし疑問に思うのは、西武の投手運用は昭和の頃から進歩しているのか、である。

 ブルペンで肩を作る回数は各自に任せられ、平井は5月2日の日本ハム戦では4度作ったと話した。試合展開に応じて普段より多くなったようだが、首脳陣が平井の起用法を明確にしていなかったことも無関係ではない。さらに言えば、ブルペンでの球数管理も個人任せだという。

 昭和のプロ野球なら、こうしたことが当たり前だったかもしれない。ただし現代はメジャーリーグの方法が伝わり、スポーツ科学やテクノロジーが進化している。“プロ”選手に自己管理は不可欠だが、“プロ”球団なら、貴重な資産である選手を適切に管理するという発想が求められるのではないか。

 5、6点差の試合終盤で平井を投げさせるのは、不必要な負荷をかけるばかりでなく、他の投手の登板機会が失われることも意味する。昨年のCSではブルペンの層の薄さがソフトバンクに敗れた一因だったが、同じ轍を踏まないためには、ブルペンの駒を厚くするような起用をしていくべきだ。

 ポストシーズンを勝ち抜くことを見据えると、平井レベルのセットアッパーがあと数枚必要になる。ヒースやマーティンの復調をただ待つのではなく、森脇亮介や佐野泰雄など他の投手の成長をもっと促すような起用はできないのか。球の質的には、相内誠も面白いだろう。

 今回のコラムが掲載された5日後の7 月8日、新たに完成した室内練習場や選手寮などの内覧会が一部のファンとマスコミ向けに行われる。さらに、7月19日から始まる「ライオンズフェスティバルズ2019」では「新たな時代(令和)においても王者であり続けるよう願いを込めて令王《レオ》ユニフォーム」が制作された。西武球団は「昭和のノスタルジー」とも言われた旧・選手寮や室内練習場に別れを告げ、新時代に向かおうとしている。それならば、チームマネジメントもアップデートするべきではないだろうか。

 昭和には、昭和の良さがある。しかし、新時代のやり方も生まれている。

 王者であり続けようとする西武球団に求められるのは、選手とコーチが互いの能力を掛け合わせて最大化できるような、組織全体で取り組む令和式の投手マネジメントだ。

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(中島 大輔)

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