《金融庁も重大関心》資産50億円トレーダー・KAZMAX氏の手口を元側近が告発 サロン生を食い物に――2019上半期BEST5

文春オンライン / 2019年8月12日 5時30分

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“億り人”を生んだ仮想通貨 ©iStock.com

2019年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。週刊文春デジタル部門の第4位は、こちら!(初公開日 2019年6月20日)。

*  *  *

「金融トレーダーのKAZMAXは、自身が主宰するオンラインサロンの生徒(サロン生)を利用することで仮想通貨の相場を恣意的に上下させ、巨万の富を築いています。それを彼や、彼に近い人々は『サロン砲』と呼んで、悪用していました」

 こう証言するのは、トレーダーのX氏だ。X氏は人気トレーダー・KAZMAX氏のサロンが立ち上げられた初期段階から、運営側として関わってきた。

「KAZMAXが“サロン砲”1発で数千万円の利益を手にする様を何度も見てきました。当初はサロン生が損をするような行動をとることはなかったのですが、次第にサロン生がいくら損をしてもおかまいなし、といった態度に変わってしまった。そんな彼を盲目的に信じてついていってしまうサロン生の姿をみていられず、彼の行為を告発することにしたのです」(同前)

仮想通貨の高騰によって生まれた“億り人”の一人

 そもそもKAZMAX氏とはいったい何者なのか。この名が一躍有名になったのは、2017年頃に起きたビットコインバブルだ。

「当時、仮想通貨の高騰によって資産額が1億円に到達した人、通称、“億り人”が続出した。たとえばビットコインは2017年8月頭には約30万円だったものが、2017年12月には約7倍の約200万円を突破。アルトコインと呼ばれる他の通貨では年間100倍以上になるものもあり、若者層を中心にこれまで投資に縁のなかった層が市場に雪崩れ込んだのです。そんな仮想通貨で莫大な財を成したのがKAZMAX。数年で億万長者へと上り詰めました」(同前)

AKB48・峯岸みなみと飲みに行くことも

 仮想通貨で生み出した資産は50億円に上るといわれ、「週刊SPA!」(2018年9月11日号)にはインタビューも掲載された。

 記事によると、KAZMAX氏の本名は吉澤和真。1989年、千葉県生まれで明治大学の出身だ。2013年に実家が経営していた会社が倒産したことをきっかけに、株、FX、先物等を中心とした専業トレーダーになった。その後に仮想通貨取引を始め、一発当てたというわけだ。

 《資産50億円は通過点。もっと稼いで贅という贅を体験してみたいですね》(同誌)と語っているが、毎夜、六本木や西麻布のクラブやラウンジのVIPルームに入り浸っているという。

「普段から『金があれば、芸能人でも誰でも俺のために動く。俺にとっては端金だ』と豪語しています。AKB48の峯岸みなみさんと飲みに行くこともありました。金持ちだとアピールするために、自分が載っている雑誌2冊をカバンの中に入れ、持ち歩いていた。何人にも見せているため、クタクタになっていました」(同前)

会費3万円のオンラインサロン、会員数は堀江貴文氏を超えた

 KAZMAX氏は自身のトレードを、Twitterで“先出し情報”として配信。すると、たちまち広く知られた存在になった。

「KAZMAXは高騰していたビットコインがいずれ値崩れすることを察知し、ショート(売り)目線をいち早く発信。それが見事にあたった時期があった。彼のTwitterを見ていれば、実際に行う取引がリアルタイムで分かるのです。それをタイミングよく真似れば、仮想通貨取引の初心者も大きな利益を得ることができる。Twitterのフォロワー数は爆発的に増加しました」(X氏)

 そこでKAZMAX氏は先出し配信が売りになることに気づく。2018年8月には、月額会費制のオンラインサロン「KTS(KAZMAX Trader’s Salon)」を開設した。

「会費は月額3万円で、最盛期には5500人を超えたこともありました。堀江貴文さんのオンラインサロン会員でさえ2000名弱程度なので、凄まじい人気です」(同前)

 サロンに入会すれば、相場の潮目に応じて多いときで1日に数回、少なくとも数日に1回は先出し情報が配信される。そのほかにもトレードの基礎や、取引所の使用方法に関するPDFファイルも配布されていた。

「KAZMAXはスイングトレードと呼ばれる短期間から中期間で売買を完結させるトレード手法が基本で、実際に彼の予測通りに相場が動くことも多いんです。KAZMAXを真似てトレードすれば、一度で会費の元がとれてしまうこともありました。サロン生は未経験の初心者がメインで、『一発逆転を狙ってやる』という若者が多い」(同前)

「サロン生はほとんどがKAZMAXを盲信する“信者”」

 初心者にとって、値動きの激しい仮想通貨は大きな不安がつきまとう。相場で迷える彼らにとって、KAZMAX氏は行くべき道を照らしてくれる「神のような存在」になっていった。

「サロン生はほとんどがKAZMAXを盲信する“信者”です。『おれについてこい。おれと同じ世界を見せてやる』というのがKAZMAX の決めゼリフなのですが、彼の鶴の一声で、サロン生が一斉に同じ方向にポジションを持つ。するとその威力は一瞬ですが、相場を動かしてしまうほど大きくなることがあるんです」(同前)

 次第にKAZMAX氏は、自分の発言が相場に影響を与えることに快感を覚えていった。

「自分の発言ひとつでサロン生が持つ億単位の資金が動くこともあるんです。KAZMAXはそれを自分の力だと錯覚していった。彼はそれを『サロン砲』と呼び、自分や身内の利益のために利用するようになっていきました」(同前)

サロン公開前に情報が共有される秘密のLINEグループが存在

 サロン砲による利益を享受していたのはKAZMAX氏だけではない。

「サロン生は知りませんが、実はサロンで公開される前に一足早くトレード情報の情報が共有される、“秘密のLINEグループ”がいくつか存在するのです」(X氏)

 X氏のPCからは、「KTS」という11人から成る秘密のグループの存在が確認できた。さらに、別の関係者からも「KAZMAX」という35人(2018年8月18日時点)のLINEグループの存在を確認している。

「LINEグループ『KTS』はサロンの幹部のみで構成されています。配付資料の作成や、決済トラブルの顧客対応、KAZMAXのポジションの代理投稿を行っている側近中の側近ばかりです」(同前)

カリスマ美容師、お笑い芸人も参加

 なかにはカリスマ美容師として有名な木村直人氏の名前もある。フリーアナウンサーの田中みな実やモデルの鈴木えみなど、芸能人も多く担当し、Instagramのフォロワー数は5.7万人を超える。

「自分のウェブサイトで『どうせ貯金してても動かないから夫婦で投資しておく』と投稿するなど、“意識高い系”美容師としても有名ですよ。KAZMAXはゲームをしながらチャートの動きを見ることも多く、手が離せないときは上級幹部がLINEにサロン砲予告を代理投稿する。木村さんは、この代理投稿を行うこともあった」(同前)

「KAZMAX」グループはKAZMAX氏と交流が深い友人たちのグループだ。サロン運営や“サロン砲砲撃”に関わることはないが、利益を享受する立場にある。

「参加者の職種はバラバラです。人気お笑い芸人である、かまいたちの山内健司さんも参加しています」(同前)

 山内は仮想通貨取引所「Zaif」のウェブCMにも出演している通称「財テク芸人」だ。お笑いの賞レース「キングオブコント2017」で優勝した際も、インタビューで「(賞金は)仮想通貨にぶち込みます!」と発言をしている。

「山内さんがLINEグループに加入したのは、2018年6月24日です。『マックスさーん! ショートですか?』と発言するなど、積極的にトークにも参加していました」(X氏)

20倍のレバレッジを生む「サロン砲」の威力

 実際に「サロン砲」の威力はどれほどのものなのだろうか。

「このグループにいれば、数カ月で元手の10倍以上、数千万の利益を出すことも可能。たとえば2018年8月18日には、KAZMAXが『5分後にショート打ちます』『ショート多めに』と指示を出したところ、約1万7000円幅も落ちた。100万円の資金の場合、サロン砲の威力を知っているので20倍くらいのレバレッジは平気でかけられる。つまり、2000万円分のビットコインをショートすれば、1トレードで数十万円の利益が出るんです。事実、LINEグループの1人は、『含み益がどんどん増えていって、マウスを持つ手が震えた』と言っていました」(同前)

「サロン砲」の手口 

 KAZMAX氏がサロンに「ロング(買い)」と投稿すると、多くのサロン生が自分の資産をロングにポジションを持つので、一時的に凄まじい勢いでビットコインの価格が上がる。つまり、サロン生が動き出す前に、KAZMAX氏はグループLINEのメンバーと情報を共有し、ひと足早く「ロング」にポジションを持てば、サロン生よりも確実に大きな利益を得ることができる。

 

 さらに悪質なのは、KAZMAX氏自身が含み損を抱えている局面で、「ドテン(逆ポジションに切り替えること)」を利用した“ドテンサロン砲”だ。一度損切りしてから、逆のポジションを持った後に、「損切りしました」とオンラインサロンやTwitterでつぶやく。するとサロン生も真似て損切りをするので、逆張りしているKAZMAX氏が持つポジションの向きに相場が動く。KAZMAX氏は抱えていた損失を軽くできるが、逆にサロン生は損切りによって損失を出すだけ。これも事前にグループLINEで共有されていた。

 サロン砲を操るKAZMAX氏に、LINEグループのメンバーは頭が上がらない。非公開のLINEでは、生々しいやりとりが繰り広げられている。

「KAZMAXが『サロン砲』を打つと、メンバーからは『ありがとうございます!』という声が次々に上がる。完全に主従関係ができあがっているのです」(同前)

KAZMAX氏の行為が現法上で罰せられない理由

 KAZMAX氏のこれらの行為は、現法上で罰されることはない。仮想通貨が金融商品取引法の対象外だからだ。しかし、金融庁の担当者は「暗号資産が金融商品取引法の対象外であることは問題だと考えています」と警鐘を鳴らす。

「同様の行為を株式市場で行った場合には、金融商品取引法違反になります。日本では仮想通貨取引は規制されていないが、諸外国ではすでに規制の対象になっている。2018年4月からは『仮想通貨交換業等に関する研究会』でその問題点について11回に渡る議論を重ねてきました」(同前)

 研究会が発表している平成30年12月21日付けの報告書では、「不公正な事案」として、KAZMAX氏のサロン砲と酷似したケースが報告されている。

《仕手グループが、SNS で特定の仮想通貨について、時間・特定の取引の場を指定の上、当該仮想通貨の購入をフォロワーに促し、価格を吊り上げ、 売り抜けたとされる事案》(金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」の報告書より)

 2019年6月7日には、資金決済法と金融商品取引法の改正法も公布された。

「施行は2020年からですが、施行されれば、このケースだと10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科せられる可能性があります」(同前)

関係者に事実関係を確認すると……

 木村直人氏、かまいたち・山内、AKB48の峯岸に事実関係を確認したところ、それぞれから回答があった。

 峯岸みなみの所属事務所は、KAZMAX氏との関係について「食事会の席に知人が連れてきた方。その時にお会いした方で直接の知り合いではなく、何をされている方かも存じ上げておりませんでした。それ以降もお会いしたことはございません」と回答。

 山内の所属事務所は「プライベートなことですので回答は差し控えます」とした。

 木村氏は、KAZMAX氏のオンラインサロン運営に携わっていたことについて、「アドバイザーとして参画」していたが、「先日、弊社に吉澤氏(※KAZMAX氏の本名)の身辺に関する指摘をされたことから、契約関係を解消しております」とメールで説明。

 サロン砲での利益享受については「『サロン砲』と呼ばれているもので利益を得ていたという事実はございません」と否定。また、「LINEグループに共有されていた内容は、オンラインサロンに発信された後のもの」であり、「前後の文章を見ると問題性が無いことは明白、事実無根であると考えている」とした。

 だが、木村氏の回答は、KAZMAX氏による「サロン砲五分後に打ちます」というグループLINEへの投稿履歴(3ページ目写真)と矛盾する。

「本件に関する行為が違法行為であるという認識もございません」

 KAZMAX氏にも事実確認を求めたが、サロン砲で利益を得ていたことについては、「事実ではございません。サロン生の売買により値動きが生じる場合もございましたが、それを利用して対抗決済するなど、利益相反となる行為はしておりません」と回答。

 LINEグループのメンバーは「『バリュー』というサービスを前提とし、サロン発足の5カ月前から投資手法を議論する場として活用されていたものです。より細かい相場の分析を、私(KAZMAX氏)に質問を交えながら出来るというものでございました」とした。

 オンラインサロンへの配信とグループLINEへの告知のタイミングがずれていることについては、「サロン発足後(2018年8月以降)数回ございました」としながらも、「値動きに乗じて決済するなど、利益相反となる行為を推奨したものではございません。その他100以上のトレードについては極力同時間帯での告知となる様に取り組んでおります。また、本件に関する行為が違法行為であるという認識もございません」。

 現在このLINEグループの活動は終了しているという。

 木村、山内両氏については「グループには属していましたが、楽しく相場の分析を意見交換しているだけで、『サロン砲』なるものを利用したという認識はございません」と答えた。

 現在はパリに滞在しているというKAZMAX氏。前述の「週刊SPA!」では、《僕は自分もそうだし、信じてくれる仲間たちとも一緒に金融市場で勝ちまくっていきたい》と語っていたが、サロン生は“仲間”ではなかったのだろうか。

(「週刊文春」編集部/週刊文春)

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