れいわ重度障害議員を「特別扱い」「議員特権」と言ってしまう人たちは何がズレているのか?

文春オンライン / 2019年8月11日 5時30分

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れいわ新選組の舩後靖彦参院議員(中央)と山本太郎代表(右) ©文藝春秋/松本輝一

 先の臨時国会で注目を集めたのが、れいわ新選組の舩後靖彦、木村英子両参院議員だ。舩後氏は難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者で、木村氏は手足がほとんど動かない脳性まひの障害を持つ。

 参議院では2人が議員活動しやすいよう、介助費用を負担することを決めたが、これに対して真っ向から反論する議員らが現れた。どのような発言が行われたのか追ってみたい。

松井一郎 日本維新の会代表、大阪市長
「どなたにも適用できるよう制度全体を変えるならいいが、国会議員だからといって特別扱いするのは違う」
「国会議員は高額所得でスタッフも付く。政治家は個人事業主だから、事業主の責任で(費用支出に)対応すべきだ」

共同通信 7月30日

「その場しのぎでルールを変えるのはおかしいでしょ!」

 7月30日、議員活動中も公費による介護サービスが受けられるよう求めていた舩後氏と木村氏に対し、参議院運営委員会の理事会は当面の間、参議院が費用を負担することを決定した。木村氏は現在、生活全般にわたって「重度訪問介護」を利用しているが、同制度は「通勤、経済活動にかかる支援」を公的補助の対象外にしており、議員活動は「経済活動」とみなされるため利用できない。

 参院の決定に対していち早く反応したのが、日本維新の会の松井代表である。松井氏は舩後氏、木村氏を「特別扱い」するのはおかしいと主張し、自費で対応すべきだとした。ツイッターでも「税金支出ならば、国会議員という職業の障がい者だけが、その他の就労中の障がい者の皆さんと比べて、公的支援優遇となります。立法府がその場しのぎで福祉施策ルールを変えるのはおかしいでしょ!」と強い調子で批判している(7月30日)。


松井一郎 日本維新の会代表、大阪市長
「介助制度がないと働けないのか。違うと思う。支援を受けずに働いている人もいる」
「公的補助を受けずに電車通勤している全盲の職員もいた。危険だが、努力で克服していた」

東京新聞 8月1日

 31日には記者団の取材に対し、松井氏は「介助制度がないと働けないのか」と批判を強め、自らが3月まで知事を務めていた大阪府では「公的補助を受けずに電車通勤している全盲の職員もいた。危険だが、努力で克服していた」と述べた。まるで障害者を危険な目に遭わせるのを肯定しているかのようだ。そもそも舩後氏も木村氏も「介助制度がないと働けない」のだが、そのことは知らないのだろうか。

武井俊輔 自民党・衆院議員
「維新の会の意見は論理的には正しいのかもしれませんが、そのような人の苦しみや歩みに思いを致しているようには思えません。率直にいえば薄っぺらいのです」

ツイッター 8月1日

 

吉村洋文 日本維新の会、大阪府知事
「『維新は薄っぺらい』とのことですが、障害者雇用率全国No.1は大阪府です」

ツイッター 8月1日

 

「障がい者の実雇用率」が全国42位の大阪府

 自民党の武井俊輔衆院議員は、参院が負担する介護費用の自己負担を主張する松井氏をはじめとする日本維新の会の意見を「論理的には正しいのかもしれません」と前置きしつつ、「薄っぺらい」と批判した。

 これに対して日本維新の会の吉村洋文大阪府知事が「『維新は薄っぺらい』とのことですが、障害者雇用率全国No.1は大阪府です」と反発したが、 吉村氏が提示したリンク は「知事部局における障がい者雇用率」を示すものであり(これは実際に大阪府が1位)、 大阪府のホームページ には「現在、大阪における障がい者の雇用をめぐる情勢は、障がい者の実雇用率が2.01%(全国42位)で法定雇用率(2.2%)を下回るとともに、法定雇用率達成企業割合については、41.0%(全国46位)と5割にも満たない状況が続いています」と記されていた。

小野田紀美 自民党・参院議員
「え!?バリアフリー化対応は分かるけども、これは議員特権になりませんか…?」

ツイッター 7月31日

 
文通費の流用を“自白”している?

 自民党の小野田参院議員も参院の決定に疑念を示した。松井氏は舩後氏と木村氏について「特別扱い」「公的支援優遇」という言葉を使っていたが、小野田氏は「議員特権」という言葉を使っており、いかにもこの2人が「特別扱い」を求めていると印象づけている。

小野田紀美 自民党・参院議員
「国会議員は文通費として歳費とは別に月額100万円が支給されます。みんなこのお金を使って、私設秘書さんとか、事務員さんとか、政策サポートとか、事務所開設の諸経費とか…要は自分が公務を行うサポートを揃えていると思っております」

ツイッター 7月31日

 
 続いて小野田氏は、国会議員には月額100万円の「文通費(文書通信交通滞在費)」が支払われていることを挙げ、文通費を人件費などに使用していることを明かした。舩後氏、木村氏にも文通費を使うよう求めていると考えられる。

 しかし、文通費については「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として、月額百万円を受ける」と国会法によって定められている。現状、報告や義務がないため、文通費を流用する議員がいることが問題視されているが、小野田氏は自ら流用を認め、他の議員にも奨励しているのだろうか?

維新の会は小野田議員を追及すべき

 その後、小野田氏は「『〜と思っております』と事実確認をせぬ一部表記により誤解を招きました事お詫びし訂正致します」と謝罪し、「弊事務所の文書通信交通滞在費も法令に従い適切に処理しております」と釈明したが、何について謝っているのかまったくわからないし、「法令に従い適切に処理しております」と言っても文通費を正しい目的で使っている証明にはならない。

 日本維新の会は「領収書のいらない第二の報酬と言われている国会議員一人あたり月額100万円の文書通信交通滞在費の使途を公開する」という公約を掲げているが、それなら真っ先に小野田氏に対して使途の公開を求めるべきだろう。

山本太郎 れいわ新選組代表
「障害者が自らポケットマネーを出して働ける状況をつくるのは明らかに間違いだ。あしき前例になる」

共同通信 8月1日

 れいわ新選組の山本太郎代表は、松井氏の発言に真っ向から反発したが、これに対してネットでは批判の声が相次いだ。松井氏、小野田氏の「特別扱い」「議員特権」などの言葉の影響がうかがえる。

 経済評論家の池田信夫氏は「 『弱者』を政治利用して税金を食い物にする人々 」と題した文章で「身内の弱者だけ特別扱いを求めて、実力行使する」と記して山本氏らを批判した(アゴラ 8月1日)。

 しかし、舩後氏と木村氏は「特別扱い」を求めているのではない。両氏が利用している障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」制度の対象拡大を求めているのだ。

舩後靖彦 れいわ新選組・参院議員
「自立支援法(現在は障害者総合支援法)と言いながら、職場にヘルパーがついていくことは禁じられているからです。障害者は働くなと言うことでしょうか? この部分は絶対に変えなければいけません」

BuzzFeed News 7月21日

「歩けない人のお手伝いがなぜ法律で禁じられているのか」

 舩後氏は、選挙戦の最中から「重度訪問介護」制度の改革を訴えてきた。「障害者が仕事を持つことこそ、自立支援だと思います。それなのに、歩けない人のお手伝いがなぜ法律で禁じられているのか。全身麻痺でも働ける障害者はいます。能力はあっても国の法律で制限されても良いのでしょうか?」とも語っていた。

 全国自立生活センター協議会の常任委員、秋山浩子氏は「介助費は公的な制度で給付を認める必要がある」「現在の制度は事業者や個人の負担が前提で、費用負担できずに仕事を諦めている人がたくさんいる」と訴えている(日本経済新聞 8月1日)。

根本匠 厚生労働相
「障害者が働きやすい社会を目指す上で、働く際に必要となる介助は重要な課題だ。しっかり議論していきたい」

共同通信 8月2日

 根本厚労相は2日の記者会見で、重い障害のある人が仕事中は介助費の公的補助を受けられないなどの、現行制度の見直しについて議論する考えを表明した。国会内での介護費用を負担することに決めた参院議院運営委員会でも、重度障害者の職場での支援について早急な制度の見直しを政府に求めることで一致している(朝日新聞デジタル 7月30日)。

舩後氏と木村氏の存在が議論を一歩前に進めた

 同委員会で与党筆頭理事を務める自民党の大家敏志参院議員は「これまで制度を整備してこなかった反省もあり、今できることをやって、臨時国会の召集日を迎えたい」と語っていた(NHK NEWS WEB 7月30日)。舩後氏と木村氏の存在が議論を一歩前に進めたのは間違いない。

木村英子 れいわ新選組・参院議員
「重度訪問介護を使っているすべての障害者の人が介護者をつけて社会参加できるように。そして、労働や通学に使えるような制度にして頂きたい」

テレ朝news 8月5日

木村英子 れいわ新選組・参院議員
「特別扱いになってしまう。全ての障害者が公費で社会参加できるようにすべきだ」

愛媛新聞ONLINE 8月7日

 木村氏は5日、仕事中は介助費の公的補助を受けられない重度訪問介護について、政府に早急な見直しを求める質問主意書を提出した。木村氏は主意書の中で「介護保障は国が障害者全体に対してする義務がある。私が国会議員であろうとなかろうとなされなければならない」と指摘した(共同通信 8月5日)。

 なお、「障害者雇用率全国No.1は大阪府です」と記した吉村大阪府知事は、その後、「重度訪問介護」を受けている府民を対象に、通学や就労時にかかる介助費用を府と市町村で支援したい考えを示した(日本経済新聞 8月7日)。これも、れいわ新選組の2人の議員が巻き起こした議論による結果だと考えられる。
 

(大山 くまお)

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