「顔が左右に割れて中から……」ある瞬間を捉えた国宝級アートで観た“奇跡のエピソード”

文春オンライン / 2019年8月31日 11時0分

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国宝《五智如来坐像のうち大日如来》(安祥寺)

 見どころは至るところにある京都の街だが、これぞ「お宝」と呼びたい選りすぐりの名品をまとめて観るならここがいい。京都駅からほど近い、京都国立博物館。現在は特別企画「京博寄託の名宝」展を開催中だ。

教科書で見たあの作品やこの作品が目の前に

 「寄託」とは、寺社が所有する貴重な作品を預かり保管すること。そうした例が京博にはたくさんある。寄託されたお宝をずらり並べて披露しているのが同展となる。

 絵画、彫刻、書跡、金工、染織、漆工など、各室ごとにテーマを設けて整然と陳列されたさまは壮観のひとこと。国宝や重要文化財が続々と目の前に現れ出て、京都の、いや日本の文化が生み出してきた文物の質の高さに改めて驚かされる。

 多くの人が見知っているであろう作品にも、実際に出逢える。たとえば、日本美術における肖像画の到達点と言って過言でない《伝源頼朝像》。モデルが頼朝かどうかは諸説出ているところだが、生々しくも気品ある顔貌と、平面的・装飾的な衣装部分の対比が美しい。実物を間近から観ると、黒々とした装束の上に描かれた紋様が、どこか魔術的な魅力を湛えていることまで知れる。

 俵屋宗達の《風神雷神図屏風》もおなじみだろう。天から降りてきた風神と雷神を画面の両隅に配し、中央は大胆に空けてしまう空間構成力。風神と雷神のキャラクターを描き分ける表現力。どれだけ時代を経てもいっこうに古びない理由が、実見するとよくわかる。色の塗り方が想像以上に荒々しいのも印象的だ。作者・宗達の、描くことに対する迷いのなさを思わせる。

あっと驚く奇跡の瞬間を捉えた彫像

 最も大きい空間には、彫像の数々が並んでいて圧巻である。中でもひときわ流麗なシルエットで人の目を惹きつけるのが、《宝誌和尚立像》だ。宝誌和尚とは5~6世紀、六朝時代の中国の著名な僧。逸話に事欠かない人物であり、とりわけインパクトが大きいのは、あるとき和尚の顔が中央で左右に割れて、内側から十二面観音像の容貌が現れたという奇跡譚。

 彫像は、まさにその奇跡が起きた瞬間を捉えんとしている。見逃してはならないことが目の前で起こっている! そんな気にさせられて、その場から離れられなくなってしまう。

 ジャンルも時代もさまざまな作品群を通り抜け一巡すれば、畏敬の念を持って自然と対するアニミズムや、何か大きなものへの祈りの感情が、あちらこちらに充満していたことに気づかされる。このあたりが、時代を経ても変わらぬ日本文化の特質か。会場で、日本美術の精華とじっくり対話をしてみてほしい。

(山内 宏泰)

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