養子に5000万の保険金をかけて殺害 主犯が貢いだ“倖田來未似”生保レディ

文春オンライン / 2019年9月23日 17時0分

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宍倉拓也さん(高校の卒業アルバムより)

 今年1月26日。千葉市中心部の繁華街・富士見のとあるキャバクラに4人の男が姿を見せたのは、日付も変わろうとしていた午前0時前のことだ。

「4人は特にトラブルもなく、3時間ほど楽しそうに飲んでいた。1人が会計の9万円をまとめて支払うと、席についていた女の子に帰り際、『これから朝釣りに行く』と話していたそうです」(店の経営者)

◆ ◆ ◆

 4人は、千葉市内で内装業を営む宍倉靖雄(48)、従業員の金子栄司(50)、彫り師の佐中佑輔(31)、そして靖雄の養子で従業員の宍倉拓也さん(当時23)。

 週末のこの日、4人は新年会と称し、靖雄の事務所から程近い焼肉店で食事を済ませ、街に繰り出している。そして拓也さんだけが、結託した3人の前で、無防備に酩酊していった――。

岸壁から真っ暗な海に突き落とされ……

 1月27日、拓也さんは、千葉市から南に60キロほど離れた、富津市金谷港沖の海底で、溺死体となって発見された。その未明、拓也さんは、埠頭の岸壁から真っ暗な極寒の海に突き落とされたのだ。

「捜査には時間を要し、現場にいた靖雄、金子、佐中の3人が殺人容疑で逮捕されたのは7カ月後の8月28日。だが、千葉県警も当初からこれを釣り中の水難事故とはみていなかった。被害者に掛けられていた、総額約5000万円の生命保険にも不自然な点があったからです」(捜査関係者)

 拓也さんは、昨年8月6日に靖雄と養子縁組。届出の書類に必要な2人の証人には、共犯の金子と佐中が名を連ねている。さらに同月と10月、養父の靖雄を受取人として拓也さんは生命保険を2つ新規契約した。

 そして11月、もともと拓也さんに掛けられていた保険金の受取人を、拓也さんの実母から靖雄に変更。その2カ月後、拓也さんは内房の海で命を落とした。

闇金に月30万円ほど返済

「拓也さんが2015年秋に母を受取人として契約していた保険金は4000万円。容疑者3人にはそれぞれ借金があり、拓也さんが多額の生命保険に入っていることを知って、犯行を企てたようだ。養子縁組も、保険金の増額と受取人の変更を狙った計画の一環だったが、当然ながら、保険金は支払われていない」(同前)

 相関図の中心にいるのが主犯格の靖雄である。実家は大地主で、自身も千葉市内で複数のアパートを経営しており、少なくない家賃収入があるはずだった。

 靖雄が築27年のアパートに内装業の事務所を構えたのは約5年前だが、長年付き合いのあった人物はこう明かす。

「これまで裏表、いろんな職種に手を出していた。十数年前は『便利屋』のハシリみたいなことをやっていたし、飲み屋の繋がりからキャッチの派遣やホステスの送迎をやっていたことも。2年ほど前は援デリ(援助交際斡旋)にも手を出していた。儲け話にすぐ食いついては失敗して、気づけばいつも金詰りの状態になっていたんだ」

 容疑者3人のうち、最も借金が多かったのも靖雄だった。額は500万円以上。

「トイチ(10日で1割の利息)の闇金に借金があり、『月30万円ほど返済がある』とこぼしていたよ。若い時から金遣いが荒く、毎日、何軒もキャバクラを飲み歩いてね。昔は借金をしても親父さんが肩代わりしてくれたようだけど、そのうち見限られた。『もう助けない』という意味で、いずれ相続予定の不動産をいくつか実質的に譲り受けていたようだ」(同前)

「被害者のご家族には、謝っても謝りきれません」

 事件の主要な登場人物は、靖雄が受け継いだアパートと縁のある者の中からキャスティングされていく。

 任侠の世界に強く憧れていた靖雄は、自らヤクザと接点を持ち、指詰めを迫られたり、振り込め詐欺の人集めに加担して逮捕寸前までいった過去もある。その後も懲りることなく、5年ほど前から背中に龍、腕に鯉の刺青を入れ始めた。その彫り師が、かつて靖雄のアパートに作業場を構えていた佐中の父である。元売れっ子ホストだった佐中も彫り師となり、父から靖雄の刺青作業を引き継いだ。

 佐中の父が肩を落とす。

「振り返ると、息子は事件の後、魂が抜けたような状態になり、円形脱毛症もできていた。息子がやったことは絶対に許されない。被害者のご家族には、謝っても謝りきれません」

 最年長の金子は、事件後の今年春先、靖雄の事務所から金を盗んで行方をくらましたが、いつの間にか靖雄の子分に戻っていた。

「もともと金子の兄と宍倉が知り合いで、兄も宍倉のアパートの住人だった。内装屋だった金子は、金にだらしなくて金銭トラブルが絶えず、借金まみれになっていた。宍倉が内装業を始めてから、飯場で働いていた金子の借金を一部肩代わりして引き揚げ、配下に置いたんだ」(2人を知る同業者)

“倖田來未似”の生保レディに入れ込んで

 離婚歴のある靖雄は7年前、八街市内に父親名義の戸建てを購入。新たな所帯を持っていたが、最近は若い女に入れ込んでいた。歌手の倖田來未を髣髴とさせる大手生保レディである。

「去年、宍倉さんがその女性を連れて来て、保険の契約を勧められました。年齢は20代半ば。『俺は何本入ったか分からない』って笑ってましたし、愛人だろうなと思いましたよ。十分綺麗な女性でしたけど、宍倉さんは『美容整形のお金も出してやらなきゃ』みたいなことを言っていた覚えがあります」(靖雄の知人)

 闇金にまで手を出しているにもかかわらず、靖雄はせっせと“倖田似の女”に金を貢いだ。別の知人がその素性を打ち明ける。

「もともと宍倉が通い詰めていたキャバクラの子ですよ。昼は生保レディ、夜はキャバ嬢をしていたが、宍倉が『月20万円やるからウチで働け』と他の仕事を辞めさせ、今年に入って内装屋の事務員にしたんです」

 同時に進められていたのが、保険金目当ての拓也さん殺害計画だったのだ。

「俺が本当に犯人だったらバカじゃん」

 拓也さんにとっての靖雄は、面倒見のよい大家さんのはずだった。

「拓也くんはお母さんと妹の3人家族。小学校高学年か中学に入る頃、宍倉さんのアパートに越して来ました。お母さんは介護関係の仕事をしていて、来た時からお父さんはいません。拓也くんは、ハニカミ屋さんでチャーミングな男の子でしたよ」(アパートの住民)

 だが、拓也さんはやがて家族との関係や、自身のアイデンティティに苦しみを抱えるようになっていた。左腕には佐中が彫ったタトゥーがあるが、これは自傷行為の痕を隠すためだ。

 そんな悩み多き拓也さんにつけ込んだのが靖雄である。内装の従業員として雇った後、事務所に住み込ませ、家族と距離を置かせた。

「拓也くんが亡くなってから、宍倉さんは『母親が妹ばかり大事にして拓也を蔑ろにしている。だから養子にしたんだ』と言っていました。保険金も自分に入って当然という言い方もしていた。母親と妹は、拓也くんが亡くなった翌月、何も言わずに引っ越し、姿を消してしまいました」(同前)

 靖雄は自分が疑われても全く意に介さなかった。前出の知人は、逮捕前にこんな発言を聞いている。

「こんなんで俺が本当に犯人だったらバカじゃん。俺は何もしてないし、別に何を聴かれても構わない」

 拓也さんの友人が憤る。

「拓也くんは『仕事は辛いけど職場の人は好きだ』と言っていました。犯人たちは、そんな彼の心を踏みにじったんです」

 欲に溺れ、慕ってくれる青年を殺(あや)めた3人には、相応の刑罰が待っている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年9月12日号)

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