治療費の高い自由診療の方がグレードが高いと思うのは錯覚! 保険診療の違いは?

文春オンライン / 2019年10月8日 5時30分

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自分が受ける医療を知り、最善の治療を選択したい人に向けて、臨床の最前線にいるトップドクターに、専門分野で最新の治療やトピックスを紹介してもらったムック「 スーパードクターに教わる最新治療 」が発売された。収録されている最新医療コラムを公開。

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保険診療と自由診療はどこが違うのか?

 米国では民間の医療保険に入っていないと、盲腸のような簡単な手術でも100万円を超える高額な治療費を請求されることがあり、中には破産する人もいるという。

 かたや日本ではがんの手術を受けたとしても、それほど高額な医療費を請求されることはまずない。国の健康保険制度が整備されているおかげで、自己負担額が1~3割ですむからだ。支払いが限度額(1ヵ月9万円前後)を超えた場合は、超えた分が払い戻しされる「高額療養費制度」もある。

 世界中どの国でも、こうした国民皆保険制度が整備されているわけではない。一定の金額を支払えば、誰でも平等に質の高い医療を受けられる国に生まれたことは、恵まれていると言えるだろう。

病気の治療なのに保険が使えない理由

 このように、日本ではほとんどの医療を「保険診療」として受けることができるが、一部には健康保険が使えない検査や治療もある。これを「保険外診療」または「自由診療」と呼ぶ。どうして、保険が使えない医療があるのだろうか。

 美容外科の場合はわかりやすい。健康保険は原則的に「病気」や「ケガ」に適用されるからだ。美容外科は患者本人の意思で、健常な組織にあえてメスを入れる行為だ。だから医療費が高額であっても、全額を自分で払わなければならないのは致し方ないだろう。

 しかし、病院やクリニックが実施しているがんなどの特殊な治療の中には自由診療で実施され、高額な自己負担が必要なものもある。病気なのに、なぜ保険が使えないのか。それは、国や医学界が有効性や安全性を認めていないからだ。

 新規の医薬品の場合、製薬会社が国から販売の許可を得るためには、3段階の「治験(国の承認を得るための臨床試験)」を実施する必要がある。そのデータに基づいて厚労省で審議され、有効性と安全性が認められてはじめて、医薬品として承認される。そして、「有効性と安全性が認められた医療であって、必要かつ適切なものは保険適用する」のが原則となっている。検査や手術についても同様だ。

治療費の高い自由診療をグレードが高いと錯覚

 10年ほど前、「ドラッグ・ラグ」が大きな問題となった。一部の抗がん剤などで、海外では標準治療として行われているのに、日本では承認が遅れ、使えないことが批判されたのだ。これをきっかけに、有効性と安全性が認められた新規の医療は、できるだけすみやかに保険適用を認めることになった。

 つまり裏返すと、保険適用になっていない治療は、たとえ高額であったとしても、「国が安全性と有効性を認めていない」ということなのだ。歯の治療では自由診療のほうがグレードの高い材料が使えるので、保険適用の治療はグレードが低いと感じるかもしれない。だが一般的な医療では、保険適用のほうが、国が安全性と有効性にお墨付きを与えたグレードの高い治療と考えるべきなのだ。

 人は中身が同じワインでも、値付けを高くすると、味も高級なものに感じる心理が働くという。それと同じように、治療費の高い自由診療を、最先端でグレードが高い治療と錯覚するかもしれない。だが、自由診療で行われている多くの医療は、まだ国が有効性や安全性を認めておらず、保険適用にできないから治療費が高額になっているだけなのだ。治療選択にあたっては、その点を誤解しないようにしてほしい。

(次回の公開は10/15になります)

「毎晩飲まずにはいられない……」 お酒に強い人と、アルコール依存症の境界はどこにある? へ続く

(鳥集 徹/文春ムック 家庭で読む医療の最前線 スーパードクターに教わる最新治療)

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