「毎晩飲まずにはいられない……」 お酒に強い人と、アルコール依存症の境界はどこにある?

文春オンライン / 2019年10月1日 17時0分

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 自分が受ける医療を知り、最善の治療を選択したい人に向けて、臨床の最前線にいるトップドクターに専門分野で最新の治療やトピックスを紹介してもらったムック「 スーパードクターに教わる最新治療 」が発売された。収録されている最新医療コラムを公開。

アルコール依存症は脳の病気である

 身体のために休肝日を作ったほうがいいとわかっていても、毎晩飲まずにはいられない。飲めば決まって泥酔し、「店から家までどう帰ったのか覚えてない!」なんてこともよくある。もしかして、アルコール依存症かもしれない……。

 お酒が好きの人なら、これまで一度はそんな不安に駆られたことがあるのではないだろうか。

 酔っぱらうと人格が変わったように暴れ出し、周りに迷惑をかけてしまう人もいれば、毎日浴びるように飲んでも、うまくお酒とつき合えている人もいる。お酒に強い人と、アルコール依存症。その境界はどこにあるのか。

お酒が美味しくて飲んでいるのではない

 じつは以前に、アルコール依存症を治療する専門の医療機関を訪ねたことがある。そこで治療を受ける人たちは、はるかにその域を超えており、「依存症は病気である」という現実を目の当たりにした。

 受診したのは、自分の意志ではなく、心配する家族に連れてこられたため。本人は24時間以上お酒を飲み続けており、すでに自分ではコントロール不能な状態。

 しかも、彼らはお酒が美味しいから、酔って気持ちがいいから飲むのをやめられないのではなく、必要に迫られて飲んでいるのだ。

 アルコール依存症になると、「離脱症状」と呼ばれるサインが現れる人が多い。いわゆる禁断症状のことだ。お酒が身体から切れると、手が震える、汗をダラダラかく、動悸がして苦しい。人によっては幻覚が見え始める。禁断症状なので再びお酒を飲めば、スッキリよくなり、そのお酒が身体から抜けると、また禁断症状が現れる。いつしか禁断症状の不快感から逃れたくてお酒を飲み続けるようになり、もはや味など問題外。感じてなどいないという。しかも、アルコールは身体に耐性ができる。これまでの飲酒量では酔えなくなり、さらに大量に飲んでしまうという負のループが待ち受けている。

 実際に治療を受ける患者の2~3割は、こうした飲酒生活がたたって肝硬変を起こしていた。高血圧や糖尿病、心臓病などで体調を崩している人も多い。そのためアルコール依存症の治療は、まずこうした内臓疾患をケアしながら、離脱症状を取る治療に入るのだ。

依存症患者に共通する「前頭前野」萎縮

 医療機関の診断基準は細かい専門的なものだが、一般の人でもわかりやすいポイントがふたつあると聞いた。ひとつは、先述のお酒が切れると起きる「離脱症状」。

 もうひとつは、3日以上続けてしまう「連続飲酒」だ。それも、日本酒にして1~3合の飲酒を1日に何回も繰り返し、常に身体にお酒が残るような飲み方をする。

 例えば、あるサラリーマンの場合。金曜日の仕事中からお酒を飲むことばかり考えてしまい、仕事終わりに飲み始めると、土曜、日曜、さらに月曜の朝方まで飲み続け、二日酔いの不快感を消すために締めに一杯「迎え酒」をして会社へ向かうという具合だ。

 このふたつのどちらかが該当すれば、「アルコール依存症であると考えて間違いない」という。思い当たる節があるという方は、ぜひ早めに専門機関へ相談してほしい。

 昨年ある医療機関に飲酒量を減らすことが目的の「減酒外来」が誕生した。予約は1ヵ月待ち。お酒との付き合い方を考える人も増えている。やはり、「酒は飲むとも、飲まるるな」だろう。

 最近の研究によると、アルコールや薬物、ネット依存者には共通点がある。脳のMRI画像を撮ると、意志決定に重要な「前頭前野」が萎縮しているのだ。依存症は、根性論では治せない「病気」なのだ。

(全3回の1回目 次回は10/9になります)

(青木 直美/文春ムック 家庭で読む医療の最前線 スーパードクターに教わる最新治療)

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