ロッテ1位・佐々木朗希とヤクルト1位・奥川恭伸、どっちがすごいのか?――キーワードは「ロマン」と「安心」

文春オンライン / 2019年10月20日 11時50分

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U-18日本代表でチームメイトとなった奥川(左)と佐々木 ©AFLO

 この1年間で同じ質問を10回くらいされてきた。

――佐々木と奥川、どっちがすごいですか?

 質問者の心情は理解できる。アマチュア野球に明るくない人にしてみれば、やたらと「逸材」と報じられる佐々木朗希(大船渡→ロッテ1位)と奥川恭伸(星稜→ヤクルト1位)のどちらが「すごい」のか知りたいと思うのが人情だろう。

 だが、アマチュア野球を中心に取材している私とすれば、これほど酷な質問はない。佐々木と奥川に優劣をつけるということは、「長澤まさみと新垣結衣のどちらがかわいいかを決めよう」と言っているようなものだ。

 そんな話を旧知のライター仲間にしたところ、「いや、それはガッキーでしょう」と即答されてしまった。だが、ふざけてもらっては困る。私は長澤まさみ派なのだ。ようは優劣をつけるのはナンセンスであって、結局は「見る人の好み」なのだ。

「ロマンの佐々木、安心の奥川」

 佐々木と奥川を評する際、私は「ロマンの佐々木、安心の奥川」というフレーズを使う。

「令和の怪物」の異名をとる佐々木のロマンを語る上で、忘れられない日がある。2019年4月6日。高校日本代表候補合宿の紅白戦に、佐々木は登板した。

 左足を高々と上げ、190センチの長身から叩きつけるダイナミックなフォーム。誇張ではなく、見ているだけで恐怖心を覚える暴力的なボールだった。おまけにスライダー、フォークの変化球も高速で鋭く変化し、捕手を務めた藤田健斗(中京学院大中京→阪神5位)はほとんど捕球できなかった。

 藤田は当時を「投手の球を受けていて、初めて恐怖を感じました。140キロ台で曲がる変化球なんて初めてだったので、体が反応できませんでした」と証言している。2回を投げ、日本を代表する高校生打者を相手に6連続奪三振と完璧な投球を見せた登板後、ライター仲間から「最速163キロが出ていた」と聞かされた。だが、それほど驚きはなかった。数字以上の凄みを体感していたからだ。

 あれから春、夏と大船渡の公式戦を現地で6試合見たが、この日ほどインパクトの強いパフォーマンスは見られなかった。というのも、代表候補合宿の後、骨密度などを測定した佐々木は「大人の体になっていない」という結果が出ていた。

「球速への期待はあるが、まだ耐えられる体ではない」

 これは佐々木の鍛え方が足りないという意味ではなく、身体的な成長期を終えていないということ。大船渡の國保洋平監督は「球速への期待はありますが、まだ耐えられる体ではない」と語った。春以降は基本的に強度を落とした投球に終始した。

 また、佐々木の取材の受け答えは小声で言葉数も少なく、記者泣かせとして知られている。まだ高校生であり、今後変わっていく可能性もあるが、元サッカー日本代表の久保竜彦を彷彿とさせる。

 今夏の岩手大会決勝やU-18日本代表での様子を見て、佐々木に対して「登板回避」「もろい」という印象を受けた野球ファンも多かったに違いない。だが、佐々木の体はまだ成長段階にあり、投手としてのピークはまだまだ先にある。故障のリスクがあるなら、三度叩いて渡るはずの石橋を五度叩いてもいい。

170キロ超えのロマンと、リスクと

 広島東洋カープに苑田聡彦さんという名スカウトがいる。スカウトとして40年以上のキャリアを誇り、黒田博樹ら数々の名選手を発掘してきた。その苑田さんに佐々木について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「スピード、球の質、コントロールとこれだけそろったピッチャーは今まで見たことがない。ユニホーム姿も格好いい。歩いているだけで、後光が差しているように見えるよね」

 もしかしたら、これから体が成熟すれば170キロを超えるようなボールを見せてくれるかもしれない。そんな期待がある反面、育成するまでには時間がかかる可能性もある。また、万が一これだけの大物を潰したとなれば、所属球団に対するバッシングも予想される。佐々木朗希という投手は、そんなロマンとリスクが同居している。

奥川は「松坂大輔や田中将大の高校時代よりも上」

 一方、「安心の奥川」はどんな投手かは多くの野球ファンが知っているだろう。今夏の全国高校野球選手権大会では、星稜を準優勝に導いた甲子園のスター。とくに3回戦の智辯和歌山戦で見せた快投は記憶に新しい。無死一、二塁から始まるタイブレーク2イニングを含め、14イニングを投げて被安打3、奪三振23と全国屈指の強打線を抑え込んだ。

 奥川の長所は、どんなに調子が悪くてもそれなりに試合を作れるところにある。試合前の囲み取材で相手打線への対策を聞いても、奥川は「対戦してみないとわかりません」と答える。打者と対峙して、顔色や気配を察知してピッチングを変える。そんな有機的な投球ができるから、コンスタントに結果を残せるのだ。プロで言えば菅野智之(巨人)の投球イメージに近い。

 取材への受け答えは、常に爽やかで謙虚。佐々木と対比されても、「自分とは格が違うので恐れ多い」というようなニュアンスの反応を見せることが多い。プロでもファンやメディアから愛される存在になりそうだ。

 前出の苑田スカウトは、奥川については「松坂大輔(前・中日)や田中将大(ヤンキース)の高校時代よりも上」と語っていた。つまり歴史的な高校生右腕の逸材が、同じ年に出現してしまったということなのだ。

佐々木を指名した球団はすべてパ・リーグ

 10月17日のドラフト会議では佐々木に4球団、奥川に3球団の指名が集まった。先発投手陣が壊滅的なヤクルトと人気球団ゆえ結果が求められる巨人と阪神が奥川を指名していたのが、いかにも「安心の奥川」を象徴していた。一方の佐々木を指名したのは、日本ハム、西武、ロッテ、楽天とすべてパ・リーグの球団である。「誰も見たことのない野球を見せたい」という気概を感じさせた。

 抽選の結果、佐々木はロッテ、奥川はヤクルトと交渉権が確定。これから入団に向けて交渉することになるが、入団は確実だろう。

 2人の金の卵がプロで孵化できるかは、神のみぞ知る。できることなら大きな故障をすることなく、日本球界の宝として輝き続けてくれることを願うばかりだ。

(菊地選手)

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