「大阪には“シャブ銀座通り”がありますねん」 沢尻エリカ、ピエール瀧……芸能界へもつながる薬物ヤクザルート

文春オンライン / 2019年12月20日 20時10分

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※写真はイメージ ©iStock.com

「シャブだけやなくて、たいがいのもんは手に入りますよ。〇〇さん(記者)が、まとめて買うてくれるなら、相場より安くしますんで」

 悪びれた様子もみせずこう話すのは、大阪で違法薬物の売買をしながら生計をたてているという男性だ。今時のファッションに、高級ブランドのバッグや腕時計を身に着け、その風貌からは、彼が“クスリの卸”を生業としているようには見えなかった。

 絶対匿名を条件に取材に応じた男性は、「(薬物を)個人には売っていない」と話す。

「個人へ売るとリスクがありますやん。せやから私らは、いわゆる売人にクスリを卸して、その売人が利益を乗っけて更に別の売人に売る。そうやって末端の売人が、小口にして個人客にクスリをさばいていくんです」

押収された覚せい剤は今年だけで2トン超

 2019年12月11日、福岡県警などが熊本県天草市の港で、約600キロの覚せい剤を押収したことが報じられた。この事件で、台湾人を含む11人が逮捕され、押収された覚せい剤の末端価格は、実に360 億円にも上るというのだ。

「昨年までの3年間に押収された覚せい剤は毎年1トンを超えているといいます。さらに、今年の上半期だけで、1.46トンもの覚せい剤を警察や税関が押収している。今回の熊本沖の密輸も含めれば、今年だけで2トンを超しており、末端価格にすると1200億円にもなるのです」(社会部記者)

“海上”から密輸する手口

 想像を絶する量の覚せい剤が蔓延している今、それが暴力団の資金源になっていることはいうまでもない。今回の熊本沖での密輸のように、近年、覚せい剤などの違法薬物は“海上”から密輸されるケースが多いと話すのは、ある暴力団関係者だ。

「小さな島が点在する沖合で取引することが多いです。島が取引場所の目印にもなるし、逃げ隠れするのに都合がいいですからね。例えば、台湾や韓国などから覚せい剤を積んだ船が沖合まで来て、浮き具を付けたクスリを海に放り込む。浮き具にはGPSをつける場合もあって、海上で別の船がクスリを回収し陸に運ぶ方法が多いですね」

 こうした方法は、“瀬取り”と呼ばれ、陸揚げされた違法薬物は、卸から末端の売人まで流れ、果ては一般社会に広がっていくのだが、芸能界もその一つだ。

芸能界に蔓延する違法薬物

 例えば、2014年には、歌手のASKA、16年には元プロ野球選手の清原和博や俳優の高知東生が覚せい剤で逮捕され、17年には、元KAT-TUNの田中聖が大麻を所持していたとして逮捕。今年3月にはミュージシャンのピエール瀧がコカイン、そして11月には女優・沢尻エリカが麻薬取締法違反容疑で逮捕され、合成麻薬のMDMAやLSDを使用していた疑いがあることが報じられた。

 中には何度も覚せい剤で逮捕される“常連”も多い。例えば今年11月に逮捕された元タレントの田代まさしは、覚せい剤で4度目、薬物事案では5度目の逮捕だ。その田代が自身の体験を描いたコミックエッセイ『マーシーの薬物リハビリ日記』(泰文堂)では、覚せい剤を使用すると、《体中の毛穴がブワッと開くような気持ちよさ》が感じられ、《薬物のことしか考えられなくなってしまう》と記している。

 さらに同書では、3度逮捕された後にパケに入った覚せい剤と、携帯電話番号が書かれた紙を売人に握らされたエピソードが描かれている。田代は、その時の心情を、《六年間も薬物を抜いていたのに、やりたい欲求にスイッチが入ってしまう》と綴っていた。

 厚生労働省の資料によれば、覚せい剤事犯の再犯率は、64.9%(平成28年)と高い。これは裏を返せば、違法薬物が、いとも簡単に入手できる実態があるともいえるのだ。

客の中には学生やサラリーマンも

 大阪市某区。ここに通称“シャブ銀座通り”などと呼ばれる薄暗いストリートがある。裏社会に詳しい関西の人間なら知らぬ者はいないという。冒頭の男性は、この場所についてこう説明する。

「ピーク時は、100メートルに1人くらい売人が立ってシャブを売っていました。キャップを被って、セカンドバッグを脇に抱えた売人が、あちこちにいた。昔はその場でシャブを手渡しで売っているほど、無茶苦茶な場所でした。彼らの多くは指定暴力団の下部団体で、シャブは組織の資金源。約10年前に警察の摘発が強化されて一時的に売人が姿を消しましたが、今もその残党が、堂々と道でシャブを売ってますよ。ここに群がっているのは、どうしようもないポン中ばかりやけど、中には学生とかサラリーマンも客として買いにくる」

 男性によれば、今は手渡しでの売買は稀で、指定の場所までブツをデリバリーしたり、別の場所で受渡を行ったりと、手口が巧妙化しているという。

警察署の50メートルの距離で薬物売買

「まず路上の売人に声をかけ、代金は先払い。金を渡した後、受渡役の人物の服装や特徴を聞き、すれ違いざまにブツを受け取るという原始的なやり方で商いする者もいますが、最近では売人が指定する簡宿にブツを取りに行くやり方が主流です」(同前)

 簡宿とは、簡易宿泊所のことで、大阪の「あいりん地区」には安価で泊れる簡泊が点在している。中でも“ヤミ簡宿”などと呼ばれる所には、宿帳もなく、暴力団と密接な不動産会社が運営し、今も平然と薬物売買が行われているというのである。

「昨年も簡宿で覚せい剤を売っていた男が大阪府警に逮捕されていますが、この簡宿が西成署から50メートルしか離れていなかったことで話題になりました」(地元記者)

人生をシャブり尽くされる人々

 違法薬物は、こんな所にも広がっていると話すのは、都内の風俗関係者だ。

「歌舞伎町には、いくつも中国人クラブがあります。表向きは、セット1万円くらいの安い飲み屋ですが、実態は若い中国人ホステスが売春している店。3時間のショートで3万円を店に払いホテルに行くのですが、必ず勧められるのがエクスタシー(MDMA)。モノや量によって5000円から1万円程度加算され、セックスとドラッグをパックで売っています。この店は昔からありますが、摘発を逃れるために定期的に店の場所を変え、今も営業しています」

 さらに、簡単に違法薬物が手に入る場所として挙げられるのがクラブだ。

「例えば沢尻の自宅から見つかったLSDやMDMA、大麻などがよく売買されています。LSDは、キャラクターの絵柄がついた紙のシートに薬物を染み込ませたものを、爪の大きさ程に切り、舌の下に置き摂取する。小分けにしたLSDをクラブで売り捌いて小遣い稼ぎをする大学生もいるほどです」(ジャーナリスト)

 再び冒頭の男性がいう。

「私? シャブはやらないですよ。そら、一度手出したら廃人になりますやん」

 薬物中毒の恐ろしさを知らない人間ほど、暴力団や反社に、人生をシャブり尽くされている実態がある。

(須賀 マイク/週刊文春デジタル)

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