「日韓関係が大きく好転することはない」2020年の混迷する世界を地政学で読み解く!

文春オンライン / 2020年1月1日 6時0分

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中西輝政・京都大学名誉教授 ©文藝春秋

「2019年に始まった『韓国の暴走』と日韓関係の混迷は、日本が韓国に見限られてきたことに起因している。ですから、残念ながら2020年も日韓関係が大きく好転することはない」

 元徴用工の補償問題、韓国国内での不買運動、さらには日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄問題など、2019年は韓国から日本に対する強硬策が次々に繰り出された1年だった。

 では、2020年の日韓関係はどうなるのか――。冒頭のように予測するのは、国際政治が専門の中西輝政・京都大学名誉教授だ。

 2020年は1月11日に行われる台湾総統選に始まり、1月末にもイギリスのEU離脱が現実のものとなる見込みだ。4月には文在寅政権の今後を占う韓国の総選挙、さらに夏の東京オリンピックが終わると、11月に米大統領選挙を迎える。

 2020年という国際政治の節目の年に何が待ち受けているのか。その展望について、「週刊文春デジタル」では中西氏にインタビューした。

対韓国外交が「令和」日本の道筋を決める

「戦後最悪の状況」とされる日韓関係をめぐるニュースは年末まで続いた。

 12月24日、1年3カ月ぶりに行われた日韓首脳会談では、安倍首相と文在寅大統領との間で、徴用工問題についての駆け引きが続いた。文大統領は韓国政府が判決には関与できないという従来の立場を強調するにとどまり、解決の糸口は相変わらず見つからない状況だ。

 12月27日には、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意について、韓国の憲法裁判所が「日韓合意に履行義務はない」との見解を示した。日本政府が求める合意履行の義務を骨抜きにしたともいえる内容だった。

 ただ、中西氏は、日韓の政界だけでなく、経済界、さらには国民をも巻き込んで過熱する日韓対立について、「これまでよりも慎重かつ冷静に考察することが必要不可欠」とした上で、次のように警鐘を鳴らしている。

「『韓国の暴走』が、令和という時代の行方を大きく方向づける“事件”になりかねない気がしてなりません。近代日本の進路を方向づけたのは、明治初頭の日本が、朝鮮半島の内紛に巻き込まれ、日清・日露の戦争を余儀なくされ、その流れが、結局、昭和の敗戦につながりました。このことを教訓にしつつ、今後の日韓関係の調整に努めねばなりません」

 中西氏が「韓国の暴走」を引き起こした原因として挙げるのが、「国際政治におけるパワーバランスの大きな変化」。特に、日韓関係から透けて見えてきた「アメリカの弱体化」について、次のように指摘する。

「2019年11月下旬の日韓GSOMIA延長をめぐる米韓の交渉は、近年のアメリカ外交でも類を見ないくらいの強引さでした。アメリカは、世界中が見ている前で、力尽くで何とか韓国をねじ伏せ延長させた。しかし、これはアメリカ自身が追い詰められた末の、『窮余の一策』としてのゴリ押しだったと言ってよいでしょう。

 実は、8月のGSOMIA破棄決定の寸前まで、アメリカの政府中枢では意思決定が空転していたのは間違いありません。あのままでは、韓国にも中国からの影響が一段と強まる一方だったのに、アメリカはリーダーシップを取れなかった。アメリカの覇権の弱体化をまざまざと白日の下に晒す出来事でした。朝鮮半島をめぐる米、中の綱引きは今後も一層、強まるでしょう」

“裸の王様”の中国は「10年もたない」

 韓国と並んで、2020年の日本に大きな影響を与えそうなのが中国。中西氏が注目するのは、習近平というリーダーのリスク。指導者としての資質に欠ける習近平の元で、ここまで経済成長で包み隠されてきた中国の抱える矛盾が噴出するのではないかと言うのだ。

「これまで急激な成長を続けてきた中国ですが、私は、2020年代は『大きな曲がり角』を迎えると考えています。2019年の中国の外交をみていると、『この体制では中国はもう10年ももたない』と考えざるを得ないからです。習近平を中心とする指導部はすでに“裸の王様”で、国家意思の漂流が始まっている」

 習近平政権は、香港の大規模デモへの対応でも失敗し、アメリカとの貿易交渉でも“失点続き”だった。

「これらの経緯を見ると、今の習近平政権が目の前で起きていることの意味がうまく理解できず、つねに状況判断が後手になって事態を必要以上に悪化させていることがわかります。(略)

 習近平は、毛沢東はおろか鄧小平とさえ比すべき業績も何もない、いわば『ぽっと出』の背伸びした指導者です。その彼が『汚職撲滅』を旗印に独裁的な権力を振るって次々と政敵を捕まえ、強権的な共産主義に戻るような政治指導をしても、結局のところ無理があり、このままでは長続きしないでしょう。いつ反対勢力が、頭をもたげてきてもおかしくない状況です」

 そして、2020年代の中国の存在を、中西氏は次のように結論付けた。

「こう考えていくと、『超大国・アメリカ』を凌駕する存在として、中国が2020年代に世界の覇者として君臨するとは考えにくい」

 中西氏は、そのほかにも、インタビューの中で、トランプ弾劾とアメリカ大統領選の行方、中国が抱える経済リスク、韓国総選挙と北のミサイル、ブレグジットの今後、ドイツでの極右台頭など、2020年の世界を左右する状況を分析。さらには、安倍総理が果たすべき「世界史的使命」についても提言している。

 中西氏のインタビュー全文「《1万字でわかる2020年の地政学》『韓国・文在寅の暴走』は米中のパワーバランス崩壊が生んだ“大事件”だった!」は、「 週刊文春デジタル 」で公開している。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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