涙目で奔走する竹内涼真が最大の魅力――亀和田武「テレビ健康診断」

文春オンライン / 2020年3月29日 17時0分

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田村心役の竹内涼真 ©文藝春秋

 元号が変わって間もない平成元年、雪深い北国の音臼(おとうす)村で、小学生ら二十一人が被害に遭う無差別殺人事件がおきた。

 殺人犯として逮捕されたのは、実直な駐在所の警察官、佐野文吾(鈴木亮平)だった。文吾の家族は激しいバッシングを浴び、世間から身を隠して生きる。

 三人姉弟の末っ子が田村心(しん)(竹内涼真)。田村は母、和子(榮倉奈々)の旧姓だ。由紀(上野樹里)という伴侶も得たが、子供を産んだ直後に、彼女は体調を崩して亡くなった。

 父は一貫して無実を主張し、再審を請求している。由紀も文吾のえん罪を確信していたと知り、心はついに事件と向き合う。

 事件現場となった音臼小学校跡地に着くと同時にタイムスリップで、心は事件発生直前の村に転移する。

 父の無実の罪を晴らし、無差別殺人も阻止するため、心は平成元年の寒村で奔走する。真犯人が村のどこかにいる。父の無実をこれまで信じてやれなかった後悔で、いつも目を泣き腫(は)らしている心さん。

 真犯人は誰か。タイムスリップ先の平成元年で歴史を改変すると、未来はどう変わるか。それももちろん興味を惹くが、私の目を惹きつけるのは、涙を流しながら山や学校を走り回る竹内涼真の表情だ。

 再びタイムスリップがおきて、心は現代に戻る。刑務所に面会へいくと、すっかり年老いた父が「よく来てくれたな、心さん」と優しく笑う。涙を流して、子である自分が、父に何も出来なかったと詫びる心。

 前の世界では子供を産んですぐ死んだ由紀は、週刊誌記者となり、音臼小事件を追っていた。初めてカフェで会うと、心が「コーヒーと、ミルクティ」と頼む。ん? なぜ私がミルクティを好きと知ってるの。

 心の父への思いに共感し、事件調査に協力する由紀だが、またまたドジを踏み犯人を逃し、涙目になって、謝る心さん。

 いままで竹内涼真って興味なかった。でも、小動物みたいに目をウルウルさせ、父のため、そして改変された現代でも恋人となった妻のために愛情を注ぐ彼を見ると、放っておけない気持ちになる。

 犯人はかつて音臼小の生徒だった加藤みきお(柴崎楓雅)と判る。愛くるしい顔をした少年サイコパス。

 再度、平成元年に転移した心は、父と一緒にみきおを探すが、小学生に翻弄されっ放しだ。やがてみきおに共犯者がいると知る。村人の誰もが怪しい。

 黒幕の正体は知りたい。佐野家の一家団欒のシーンも心和んだ。鈴木亮平と榮倉奈々もいい味だしてたし。上野樹里との時を越える愛も心を揺さぶる。

 でもね、涙目で父を助けようとしてドジをやらかす竹内涼真が、私にはドラマの最大の魅力だった。

『テセウスの船』
TBS系 日 21:00~ (3/22放送終了)
https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/

(亀和田 武/週刊文春 2020年4月2日号)

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