苦境の楽天モバイル 捨て身の「1円スマホ」は本当に買いなのか?

文春オンライン / 2020年6月6日 11時0分

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「1円」となるRakuten Miniを手にする楽天の三木谷浩史会長兼社長 ©getty

 4月より第4のキャリアとして参入した楽天モバイル。

 テレビCMでは「世界初の完全仮想化技術により、1年間無料を実現」とアピール。実際、キャンペーンで先着300万名までは1年間、基本料金が無料となる。その基本料金は月額2980円でデータ通信、音声通話が使い放題だ。

「コロナ禍で景気の先行きも不安。スマホ代を安くしたい」という人であれば、楽天モバイルが気になるのではないか。

 そんな中、楽天モバイルは新たなキャンペーンを打ち出してきた。

 同社が手がけるオリジナルスマホの新商品「Rakuten Mini」を1円で販売するというのだ。

 Rakuten Miniは世界最小・最軽量を謳うコンパクトスマホだ。画面サイズは3.6インチ。手のひらにもすっぽりとおさまるサイズ感で、ワイシャツの胸ポケットに入れても違和感がない。

 非接触ICである「FeliCa」に対応し、JR東日本の「モバイルSuica」も利用可能だ。これだけで、電車に乗って、コンビニで買い物もできてしまうのだ。

 カメラは1600万画素。本体サイズが小さいため、バッテリー容量は小さく、アクティブに使うと電池消耗が気になる。ただ、最近のスマホは大画面なものばかりであり、Rakuten Miniはコンパクトさで周辺から目を引くのは間違いなさそうだ。

なぜ「1円スマホ」は実現したのか?

 楽天モバイルでは、新規契約やすでに楽天モバイルのMVNOを契約しているユーザーが、キャリアサービスである「Rakuten UN-LIMIT」に乗り換える場合に販売価格「1円」が適用される。

 実はここ最近、スマホの割引販売に対して規制が強化されている。これまで横行していた、スマホの販売における「一括ゼロ円」や高額なキャッシュバックを、総務省が問題視したのだ。

 菅官房長官が2018年8月に行った「日本のスマホにおける料金は世界に比べても高すぎる。4割値下げできる余地がある」という発言を実現させるため、総務省では、キャリアに対して端末の割引きを止めさせ、その原資を通信料金の値下げに充てさせるという施策を展開したのだった。

 そのため、総務省では契約を伴う端末販売に関しては、割引の上限を2万円とする法改正を行なった。

 楽天モバイルが上手いのは、Rakuten Miniの値段を販売当初、1万9819円(現在は1万7000円)に設定してきた点にある。値段が2万円以下であれば、上限いっぱい割引して「1円」という価格を設定できてしまうのだ。

 これが、他社も扱っていたり、世界的に流通しているスマホとなれば、楽天モバイルが単独で値段を極端に安価に設定するのは難しい。しかし、Rakuten Miniは自社のオリジナル端末であり、自由に価格設定することができる。結果として、今ではあまり見ることのない「1円スマホ」が誕生したことになる。

 ただ、大手3キャリアは、これまで一括ゼロ円や高額なキャッシュバックを手掛けていたことにより、端末割引に対する経営のダメージが大きく、「正直言って、やめたかった」(キャリア幹部)というのが実情だ。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクとしてみれば、不毛な顧客獲得合戦を展開し、これ以上、端末割引で経営的に痛手を負いたくないと思っていた。そんな中、総務省が旗振り役となり、「端末の割引はしなくていいよ」という政策を展開。結果として、キャリアとしては「渡りに船」で割引地獄という泥沼から脱することができつつある。

 楽天は、三木谷浩史社長が「モバイルネットワークの民主化を目指す」と新風を巻き起こそうとしていたが、結局は「スマホ1円販売」という3キャリアが卒業しようとしている旧態依然とした端末割引販売をはじめてしまったのだ。

au、ソフトバンクの「楽天包囲網」

 4月からサービスを開始した楽天モバイル。楽天の三木谷社長は、700万契約が損益分岐点だと語り、年内には無料キャンペーンの対象人数である300万人を突破したいと意気込む。現状のユーザー数について、三木谷社長は口をつぐむが、業界内では「20万~30万程度なのではないか」と囁かれている。年内までに300万契約を獲得するには、少々、スタートでつまずいた感がある。

 新型コロナウイルスの影響があり、楽天モバイルのショップは休業を余儀なくされたのが痛かった。

 ただ、楽天は、ネット通販が本業ということもあり、ネットでの契約が好調のようだ。4月中はリアル店舗での契約は3.5%に過ぎず、実に96.5%はオンラインからの契約だったという。今後は緊急事態宣言が解除されたことで、リアル店舗での契約に弾みがつきそうだ。

 気になるのは、現在、無料のキャンペーンを展開する楽天モバイルに対して、着実に包囲網が敷かれつつあることだ。

 KDDIの格安スマホMVNOであるUQモバイルは楽天モバイル対抗の新料金プランを新設。月額2980円という楽天モバイルと同じ値付けでありながら、月間10GBのデータ容量が使え、容量を使い切っても1Mbpsでの通信が可能だ。

 楽天モバイルの場合、「データ容量が使い放題」と言っても、楽天モバイルが自ら敷設した基地局で通信した場合のみであり、郊外や地下街、地下鉄などではパートナーであるKDDIのネットワークに繋がるようになっている。KDDIに繋がった際には月間5GBまでは無料だが、それ以上、使う場合は1Mbpsに速度が落ちる。あるいは1GB500円の追加料金を支払う必要があるのだ。

 UQモバイルとしては「うちは全国で10GB使える」とアピールすることで楽天モバイルに対抗する構えだ。

 さらに、ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルもUQモバイルと楽天モバイル対抗のプランを7月より始める。こちらも月額2980円で月間10GB、超過時は1Mbpsの速度となる。

 KDDIとソフトバンクは、本丸であるauやソフトバンクブランドでは楽天モバイルに対抗せず、格安スマホブランドであるUQモバイルやワイモバイルで戦わせるつもりだ。

楽天の未来は9月に決まる?

 今回、料金改定を行ったUQモバイルとワイモバイルには「iPhone」という武器が存在する。

 「iPhoneを格安スマホで使う」となれば、自ずとUQモバイルかワイモバイルが選ばれる傾向が強い。

 楽天モバイルにはRakuten Miniがあるものの、さすがのiPhoneには全く歯が立たない。

 例年、アップルは9月にiPhoneの新製品を発表する。このタイミングで楽天モバイルがiPhoneを扱うことが、年内300万契約の獲得、さらには損益分岐点の700万契約突破の必須条件となるだろう。

(石川 温/Webオリジナル(特集班))

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