天皇陛下と雅子さま 「人格否定発言」の衝撃…戦いの15年で「ずっと変わらなかったもの」

文春オンライン / 2020年6月9日 6時0分

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2019年6月1日、愛知県を訪問された天皇皇后両陛下 ©JMPA

 6月9日、天皇皇后両陛下は結婚27年を迎えられた。天皇陛下が即位されてから1年あまりが過ぎ、即位関連儀式をはじめ、賓客の接遇、地方公務などに雅子さまもご一緒に臨まれる機会が数多くあった。訪れる先々で、肩を並べて笑顔で手を振られている両陛下のお姿を記憶している人も多いだろう。

 この1年、雅子さまのファッションを拝見していると、トランプ大統領夫妻との会見でお召しになっていたポインテッドパンプスや、宮中晩餐会でのシースルージャケット、愛知県ご訪問でのパンツスーツなど、雅子さまが以前は選ばれなかったようなアイテムから「自分らしさ」のヒントを見出されつつあることを感じていた。

雅子さまを手伝われた天皇陛下

 6月2日には、雅子さまは天皇陛下とともに皇居内の紅葉山御養蚕所を訪れられ、ご養蚕の「上蔟(じょうぞく)」という作業に臨まれた。雅子さまは「かわいらしいですね」と陛下と声をかけあわれながら、成長した純国産種の蚕「小石丸」約2000匹を素手で、蔟(まぶし)と呼ばれる網に移されたという。陛下も雅子さまを手伝われたり、ご自身でも蚕を蔟に移されたりしたようだ。

 ご養蚕は、明治以降、歴代の皇后に継承されてきた伝統行事だ。皇居に向かわれる両陛下のご様子からは、とてもリラックスした雰囲気が伝わってきた。美智子さまから雅子さまにご養蚕が引き継がれることが決まり、2018年にもご一家で紅葉山御養蚕所を訪れられていて、これは皇太子時代から変わらないご姿勢でもあることに気がついた。

 2003年から雅子さまは長期療養に入られ、依然としてご体調には波がおありだという。6月8日も、ご養蚕の「初繭掻(はつまゆかき)」の作業を急きょ取りやめられた。陛下はいわゆる「人格否定発言」を2004年5月のデンマーク・ポルトガル・スペインご訪問を前にした記者会見(5月10日)で口にされた。この時からもずっと、陛下は夫として父として、ご家族をそっと見守り支えられてきたと言えるだろう。

雅子のキャリアや人格を否定するような動き

「雅子にはこの10年、自分を一生懸命、皇室の環境に適応させようと思いつつ努力してきましたが、私が見るところ、そのことで疲れ切ってしまっているように見えます。それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です。(中略)早く本来の元気な自分自身を取り戻すことができるよう、周囲の理解も得ながら、私としてもでき得る限りの協力とサポートをしていきたいと思っています」

「人格否定」という衝撃的なお言葉に、記者からは重ねて関連質問が投げかけられた。

――殿下、大変、ちょっと失礼な質問になってしまうかもしれませんが、先ほどお答えになった時にですね、妃殿下のキャリアや人格を否定するような動きがあるとおっしゃいましたが、差し支えない範囲でどのようなことを念頭に置かれたお話なのか質問させていただきたいのですが。

「そうですね、細かいことはちょっと控えたいと思うんですけれど、外国訪問もできなかったということなども含めてですね、そのことで雅子もそうですけれど、私もとても悩んだということ、そのことを一言お伝えしようと思います」

異例のご発言に「再説明」の文書公表

 異例のご発言について、宮内庁の羽毛田信吾次長(当時)は1週間後の定例会見で、「天皇、皇后両陛下から、側近に対して改めて皇太子殿下から具体的な説明がないと、国民も心配しているだろうとの趣旨の発言があった」と述べた(朝日新聞2004年5月18日)。

 宮内庁は、ご結婚から11周年を前にした2004年6月8日、「記者会見での発言に関して、少し説明したいと思います」という書き出しで始まる陛下の再説明の文書を公表している。

 この後も、陛下は一貫してご家族の「盾」となってこられたように拝察している。2010年3月から、学習院初等科2年生だった愛子さまが不登校のような状態になられ、雅子さまのお付き添いが続いた時期は、陛下は雅子さまとご一緒に平日であっても愛子さまの学校行事に参加され、時には朝、陛下が学校まで付き添われる日もあった。

 最も印象的だったのは2011年9月、愛子さまが初等科4年生での山中湖への校外学習だ。雅子さまが同行されたことで大きな波紋が広がったが、陛下は会見で「昨年の山中湖における校外学習への参加は、愛子が学校生活への安心感を取り戻す上で、大きなステップになったと思います。校外学習を経て、愛子が大きなものを一つ乗り越えたように見受けられました」と述べられている(2012年2月の誕生日会見)。

「雅子と愛子に対する信頼と尊敬・尊重の気持ち」

 愛子さまが学習院女子中等科3年生の秋頃から、体調不良を理由に学校を長期欠席された時も、陛下は「一時期体調を崩したこともあり、皆様に御心配をお掛けいたしましたが、雅子の支えもあり、今はふだんどおり学校生活に戻っております」(2017年2月の誕生日会見)と仰って、あくまでも愛子さまを見守るご姿勢を貫かれた。

 2年前、ご結婚満25年に際しての文書回答で、陛下は「これまで私自身が様々な務めを果たす中で、家族の支えと協力がとても重要な要素であったと強く感じます。これまで公私に渡り自分を支えてくれた家族に改めて感謝するとともに、私自身も雅子と愛子に対する信頼と尊敬・尊重の気持ちを大事にしていきたいと思っています」と述べられた。

 即位が近づくにつれて、国民の中からもこうした陛下のご姿勢や家族像に共感する人が次第に増えていったのではないだろうか。例えば2018年の長野でのご静養の際に、ご一家でワインレッドやラベンダーなど、洋服の色合いをあわせていらっしゃるときがあり、ご家族でコミュケーションをとられているご様子がより具体的にうかがえた。

 ある関係者によると、「レセプションの場から招待客をご一家が揃ってお見送りされる時、挨拶をされる愛子さまのことを両陛下がほほえましくご覧になっていて、その優しいまなざしからも良好な親子関係が伝わってきた」という。

「人格否定発言」から15年後の会見

 陛下は昨年の誕生日会見で、雅子さまのご活躍を期待される分野として「雅子自身もいろいろ海外での経験もありますし、このグローバル化の時代にあって、国際的な取組など本人だからできるような取組というのが、今後出てくると思います。(中略)何かいい取組に将来出会うことができれば、私も大変うれしく思います」と述べられた。陛下が雅子さまの「国際的な取組」に言及されるまで、「人格否定発言」から15年もの月日が流れた。

 エリザベス女王からの招待を受けて、5月初めから1週間程度の日程を軸に調整されていたというイギリスへの公式訪問は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ、当面の延期が決まっている。いつの日か、両陛下揃っての外国ご訪問が実現することを期待したい。

(佐藤 あさ子)

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