ヤクルト嶋、村上、斎藤投手コーチ……無観客でわかった選手の背中を押す“声の力”

文春オンライン / 2020年6月24日 11時0分

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嶋基宏と清水昇

 2020年6月19日。ついに、ついに、待ちに待ったプロ野球が開幕しました。

 史上初となった無観客での開幕。

 落語のほうは徐々にですが元通りになりつつあり、先日コロナ以後初めてお客さんを入れての落語会がありました。

 ウケる。そないにウケない。前のめりの人。退屈そうにしてる人。

 コロナ禍でお客さんの反応がないオンラインでの落語会を主催者も演者も模索してきたなか、少しずつそういう形に慣れつつあったので、一つ一つに生の反応があるというのはこんなに有難くてシビアなものなのか、と改めてしみじみと感じましたし、かつての普通を思い出すような感覚でした。

 正直無観客で落語をやるやりにくさはありましたが、オンラインにすることによって今まで物理的に来ることができなかった方や、画面上で気軽にテレビ感覚で見たいという方々にも落語を聞いていただける間口が拡がったという意味ではオンライン配信はすごく良い試みだったし、今後も続けていくべきだと思います。

 先日の落語会も「集客してのライブ+有料オンライン生配信」というDAZN的な形で(規模はシロナガスクジラとノミほどの違いがありますが)行ったのですが、来場のお客様はもちろん、画面で見ている方々にも熱量を届けたいという気持ちになり、僕にとってはすごくプラスになった良い落語会でしたし、今後この形の落語会がもっと増えてほしいなと思いました。

 DAZNさん、死ぬほど採算取れないと思いますが、RAZN(ラゾーン)作ってもらえないでしょうか。僕はまずは“ファーム”の方で頑張りますので。

 って、すいません。ちょっと長めのマクラになってしまいました。そろそろ本題に入りましょう。

 ここからはスワローズ推しのイチ客目線で書かせていただきます。

 無観客試合によって、いつもは聞こえなかった捕球音、打球音、走り抜ける音、踏ん張る音、フィールド、ベンチの選手の声が聞けるというのはとてつもなく嬉しい事でした。

 とくに個人的に一番嬉しいのはベンチの声。

 三振やホームランで盛り上がるのはもちろんですが、ファウルで粘る選手への「いいよー! 合ってきたよー!」とか、バントを決めた選手への「ハイ! 練習通りー!」というかけ声は普段の1軍の公式戦だとまず聞けなかったし、一球一球に誰かが何かしらの声をかけているのがよく分かるので、凄く臨場感を感じました。

  そして、ドラゴンズとの開幕3連戦を観ているうちに何となくですがこれが誰の声なのかというのが分かるようになってきました。

「ベンチで笑いを提供する選手は、代打で1安打の価値がある」

  スワローズを3度の日本一に導いた名将、野村克也監督の言葉の中に「ベンチで笑いを提供する選手にはたとえ試合に出場しなくてもそれなりのプラスの点が与えられる。代打で1安打するのと同じくらいの価値がある」というものがあります。

 南海時代、常にベンチからチームを盛り上げていた大塚徹選手(ヤクルト→南海。息子さんは大塚淳ブルペン捕手)を球団が解雇しようとした際、野村監督は「やめてくれ! 大塚は役に立っている!! 立派に試合に参加しているんや!!!」と猛反対し、解雇が取り下げられたということがあったそうです。

 あの野村監督をして「ヤジらせたら天下一品」と言わしめた大塚選手のヤジ、ぜひ生で聞いてみたかった。

 絶対今の時代だと問題視されるものばっかりだったと思いますし、そのヤジを想像するだけでニヤニヤしてしまいます(笑)。

 人間には誰しも【心の機微】があります。とくに野球は一人一人の【心の機微】が如実に表れるから面白い。

 イケイケな時、クヨクヨしてる時。イケイケな時はそれをさらに乗せてあげればいいし、クヨクヨしてる時に気を上げるようなチームメイトの言葉というのは、とっても大事だと思うんです。

 その一つ一つは「あなたが出会う最悪の敵はいつもあなた自身であるだろう」というニーチェのような名言である必要はなく、「ナイス!」とか「ドンマイ!」という当たり前の声かけでいい。

 もっと言うと、寄り添って肩を組むだけでもいい。

 声かけ、コミュニケーション。

 この3連戦でこれを常にやっていたのが、嶋基宏選手、斎藤隆投手コーチ、そしてスワローズの4番、村上宗隆選手でした。

印象的だった嶋、村上、斎藤投手コーチの“声”

 もちろん、他の選手やコーチもやっていたかもしれないし、高津臣吾監督に関しては根が明るい方だというのはスワローズファンなら皆が知っていますから、ベンチでは逆に野村監督のように泰然自若と座っていてほしいと個人的には思っています。

 まず嶋選手。

 現状は中村悠平選手が1番手になるんだろうと思いますが、2013年にチーム一丸となって日本一になったキャッチャーがベンチにいて、ピッチャーへの声かけはもちろん、一球一球に「いいよー!」「ナイッスー!」と声を出してくれている。それだけでベンチが明るく感じる。去年とは大違いです。

  試合に出ていても出ていなくても、スワローズにとって嶋選手の加入はとんでもない戦力アップだと思いました。

  次に、斎藤投手コーチ。

  この3連戦では、長谷川宙輝、清水昇、今野龍太、寺島成輝、大西広樹といったこれまで1軍経験がない、もしくは浅い投手が使われました。その一人一人に対して、斎藤コーチは横に座って話をしていました。

 ほとんどのコーチは立って話をしていると思います。

 この、立つか横に座るかという違いはとても大きい。

 これを自然にできる斎藤コーチは間違いなく投手陣の心を掴んで一つにしてくれると確信しました。

 そして、村上選手。

 正直、あんなに声を出して感情を表に出すような選手だとは思いませんでした。ハタチの4番がベンチの真ん中で声を張り上げる事ができる環境が今のベンチにはある。

 最高じゃないですか。

 21日の試合では3点を追う8回裏、中日・マルティネス投手から粘って粘って四球を選んだ宮本丈選手に、一番に立ち上がって拳を突き上げて喜んでいたのが村上選手でした。

 近年ベテラン頼みになりつつあった野手陣の中で、塩見泰隆選手を含め2017年ドラフト組の野手がどんどんチームを引っ張っていけば、先輩、レジェンド達は必ず乗っかってくれるはずです。

 他にも、自らの勝ち投手の権利を失った時、それを消してしまった梅野雄吾投手にベンチから声をかけていた石川雅規投手や、代打を送られたエスコバー選手がベンチで手を叩きながら、自らの代打宮本選手に声を出していたこと。存在感が際立つ宮出隆自ヘッドコーチ、等々書きたいことは山ほどあるのですが、間違いなく言えることは、今年のスワローズのベンチのムードはもの凄くいいということ。

 今年のスワローズのベンチには、優勝した2015年シーズンの雰囲気があるように感じます。

 最後に、球団の無観客試合に対してのプロデュース力についても書かせてください。

 神宮球場の内野席に置かれた沢山のファンからの言葉を大きく書いたメッセージボード。

 あの演出は最高にセンスがあると思います。

 間違ってもファン一人一人の顔を貼ってネット裏や内野席にマネキンよろしく並べたり、チャンス時にチャンステーマを流したりという事だけはしないでほしい(笑)。

 やっぱり、人の心に響くのはいつの時代も人の言葉なのですから。

 追伸:神宮球場での実況・解説の皆様におかれましては、声のボリュームにくれぐれもお気をつけくださいませ(笑)。

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(笑福亭べ瓶)

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