【400人退職希望の実態】東京女子医大コロナ看護師「メンタルは限界で給料は3万円以上減額。病院には怒りしかない」

文春オンライン / 2020年7月17日 18時30分

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東京・新宿区にある東京女子医科大学病院 ©文藝春秋

東京女子医大コロナ看護師の告白「ラーメン買ってきて」新宿ホスト患者から悪夢のナースコールが何度も…… から続く

 7月17日には東京都で過去最高となる293人の新規感染者が判明するなど、第2波が懸念される新型コロナウイルスの感染拡大。ホストクラブからの感染者発生が収まらないが、彼らの店がある繁華街・歌舞伎町に程近い立地にあるのが、東京女子医科大学病院(東京都新宿区)だ。

 夏のボーナスゼロが通告され、400名以上の看護師が退職の意思を示しているとされる中、同病院のコロナ病棟に勤務していた20代の女性看護師のAさん。

 夜型生活のホストやキャバ嬢たちは入院しても朝起きてくれず、深夜にはコンビニに買い出しを頼まれたという看護師たちの日々は 前編 で紹介した。しかし、彼女たちがコロナ病棟勤務をきっかけに追い詰められていったのは、病院外でも同じだった。

家族にも、パートナーにも会えず

 Aさんは感染の可能性を危惧してパートナーとも会えず、現在に至るまで実家に帰省することもできていない。コロナ病棟に勤務したことで、親しかった友人から食事などに誘われることもなくなり、「孤独感に押し潰されそうになった」と語る。

「病院で隔離されて、家でも孤独感が深まり、精神的に厳しい時期もありました。電話で話す家族やパートナーの声に涙が止まりませんでした。好き勝手やって感染する人が多くいる中で、私たちはステイホームを守り、感染しないように細心の注意を払って医療業務に当たってきました。

 それなのに、さらに追い打ちを掛けるようにボーナスゼロ、特別手当なしは本当にショックでした。コロナ病棟では2週間働いて1週間休むという勤務形態で夜勤も大幅に減り、内科系の病棟にいた4月に比べて3万円以上給料が減りました。6月のお給料は税金や福利厚生など諸々を差し引かれて、支給額は20万円ほど。ここから家賃が出ていくと十数万円しか残らない。生活は苦しいです」(Aさん)

 東京女子医大では400人を超える看護師の退職希望者いるとされるが、「簡単には辞められない」と、別の20代の女性看護師のBさんは語る。

「突然いなくなる看護師がいたり、それぞれ辞め方は違います。しかし、簡単には辞められない部署も中にはあります。最初は師長に退職の意向を話して面談をするのですが、話をしても人手不足を理由に慰留されます。退職は一旦保留となり、院内のリエゾンナース(精神看護専門看護師)のカウンセリングを紹介され、その後、産業医に診てもらうという看護師もいます。中には病んだふりをして診断書を出してもらって辞める看護師もいました。普通の会社みたいに退職届を出して終わりとはいかないんです」

「新人が入っても教える余力は無い」

 騒動の最中、東京女子医大の採用担当は2021年4月入社予定の内定者らに「内定された皆様へ大切なお知らせ」と題して以下のメールを送っている。

《突然の連絡を失礼いたします。東京女子医科大学の採用担当の●●と申します。昨今の報道から皆様にご不安をおかけしており申し訳ありません。この状況を受け、内定者の皆様には正しく説明させていただきたいとご連絡いたしました。

 まず、看護師400名が辞意届を出しているというのは事実ではありません。そして今年度の上期賞与については残念ながら支給なしでした。しかしながら、現在8月に手当を支給することも検討を進めております。報道を受け、新人教育がしっかり受けられないのではとご心配のお問い合わせも受けました。教育に関しては、次年度も現在と同様にグループ研修とプリセプターシップ制度により教育していきます。(略)先輩について教育も受けられます。(略)本学としては、どんな状況でも看護に対する思いや考え方、取り組み方は変わりませんし、長い歴史の中で紡ぎ続けたものを継承していきたいと思って取り組んでおります》

 しかしBさんは、病院側の「400名が辞意届を出しているというのは事実はない」との主張に対し「労働組合は『400名を超える看護師の退職者が予想される』としています。組合の数字は現場で見聞きしている感覚と一致しています」とした上で、「新たに看護婦が入ってきても、今の現場に教える余力はない」と語る。

「毎年新人看護師が入ってきても、職場環境や給料面、人間関係が原因で多くが1年で辞めていきます。相当な体力とメンタルの強さが必要で、私の部署でも今年4月に入ったばかりの1年生看護師たちのほとんどが、すでに『辞めたい』『他の病院へ行きたい』と話しています。先日、病院側の弁護士が『(看護師が)足りなければ補充すればいいこと』と発言しましたが、看護師を育てるには時間がかかります。あの言葉には怒りしかありません。現状では人員が足りず、新人に教える余裕はないです。

 ただ、看護師一人一人は責任感が強く、『コロナの患者のために行かなきゃ』とか、『コロナ患者がいたら助けなきゃ』と、患者ファーストの気持ちは揺らいでいません。自分のことは後回しにしてしまうのが医療者だと思います。ただ、今の状態のままでは、第2波のコロナと闘う人員が確保できず、医療崩壊は近いと思います」

退職金や冬のボーナスの心配も

 いま病院の看護師の間では、「退職を希望している看護師400人分の退職金は払えないのではないか」「冬のボーナスも出ないのではないか」などと、新たな心配も広がっているという。

 東京女子医大病院に、コロナ病棟の状況や退職金、看護師の待遇の改善策などについて取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。

「至誠一貫」。東京女子医大創立者の吉岡彌生氏の座右の銘だが、看護師に対しても最後まで誠意を貫き通してほしい。

(追記)7月17日、学校法人東京女子医科大学総務部広報室から「現時点では、回答をすることができかねます」との返答があった。

東京女子医大、一転ボーナス支給検討へ 退職希望400人は「予測値を立てている中で出た人数」 へ続く

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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