三菱商事を抜いた伊藤忠 経営は"稼ぐ""削る""防ぐ"の「かけふ」

文春オンライン / 2020年7月28日 6時0分

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 ファミリーマートの完全子会社化を目指すと7月8日に発表した伊藤忠商事。6月2日には時価総額が3兆7649億円となり、三菱商事を抜いて初の商社トップに躍り出た。

「三菱商事は資源部門の依存度が高く、石油などの価格の下落に影響を受けやすい。一方、伊藤忠は生活関連ビジネスに強く、相対的に選好された」(市場関係者)

 ただ、ウラがあるという。

「伊藤忠は昨年6月、2020年6月11日までに700億円の自社株買いを行うと発表したが行わなかった。5月も実施しなかったと6月1日に公表したことを受け、市場は期限目前でそろそろだろうとみて、株価が急騰したのです」(同前)

 だが、伊藤忠は期限が来ても実施しなかった。その理由を、株価が上場来高値を更新しており、インサイダー取引規制への抵触を回避するためだったと6月12日に発表。同時に、来年6月までに700億円の自社株買いを実施すると表明している。市場も反応し、6月15日の終値は5月27日以来保っていた2300円台を割り込んだ。

「自社株買いしないことに法的な問題はない。ただ近年、500億円以上の枠を設定してやらなかったのは伊藤忠だけ。こうした“奇手”の横行は株主を裏切り、自社株買いの表明という行為への信頼が失われることになる」(大手証券幹部)

「中長期的に配当等で株主へ還元していく」

 伊藤忠の躍進が始まったのは岡藤正広氏(70)が社長となった10年4月から。海外勤務の経験がなく、繊維畑一筋のトップ就任は業界でも話題を集めた。

「岡藤氏は就任後、経営の標語に〈かけふ〉を掲げた。稼ぐ、(無駄を)削る、(損が出るのを)防ぐからとったもので、抗がん剤はいい細胞も殺してしまうが、伊藤忠は悪い細胞だけ取り除くと言っていた」(関係者)

 当初は社長を任期の6年で降りるとみられていた岡藤氏。しかし、18年3月まで続け、現在も会長兼CEO(最高経営責任者)として伊藤忠の“顔”だ。

「16年に伊藤忠は純利益で三菱商事を抜き、商社トップに。退任したら再逆転されかねないと判断されたようです」(メガバンク幹部)

 伊藤忠の広報は「時価総額1位はコツコツやってきたことが評価されたと思っています。今回は自社株買いを実施しませんでしたが、18年に発表したように中長期的に配当等で株主へ還元していく大方針に変わりはありません」と回答した。

 伊藤忠は21年3月期の連結純利益で三菱商事を上回ると予想するが、一方でファミマのTOBで財務内容の悪化も懸念されている。名実ともに商社トップに立つことができるのか、岡藤氏の手腕が問われる。

(森岡 英樹/週刊文春 2020年7月30日号)

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