新型コロナに効く薬は…? ノーベル賞科学者・大村智が語る「“抗寄生虫薬”の意外な可能性」――文藝春秋特選記事

文春オンライン / 2020年7月25日 6時0分

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大村智氏 ©文藝春秋

「文藝春秋」7月号の特選記事を公開します。(初公開:2020年6月20日)

 40年前に開発された抗寄生虫薬「イベルメクチン」が、新型コロナウイルスにも効果を発揮するかもしれない――。今年4月、ちょっと驚くようなニュースが世界を駆け巡った。

 イベルメクチンは、北里大学特別栄誉教授・大村智氏が開発に貢献。2015年に大村氏は、「線虫によって引き起こされる感染症の新しい治療法の発見」を理由としてノーベル生理学医学賞を受賞しているが、それは、熱帯地方のさまざまな風土病を撲滅した、特効薬イベルメクチンの開発を評価されてのものだった。

 その大村氏が「文藝春秋」7月号でインタビューに応じ、第一報に触れた際の感想を語った。

「レムデシビル」「アビガン」も注目されているが……

「本音を言うと、このニュースにはあまり驚きませんでした。イベルメクチンは寄生虫駆除の薬ですが、2012年以降は、HIVやデング熱など、一般にフラビウイルスと呼ばれている一群のウイルスに対してもインビトロ(試験管内試験)で効果があることがわかってきていたからです。新型コロナウイルスも、フラビウイルスの一種です」

 新型コロナウイルスの治療薬としては、他にも「レムデシビル」「アビガン」などの名前があがっているが、大村氏は状況を冷静に見守ることが大事だという。

「治療薬のゴールは、副作用の心配がない、効果が科学的に証明されている薬を作ることです。新型コロナウイルスに関しては、それこそ何百万人の人が使うかもしれません。エビデンスやデータがちゃんと揃わないまま『薬がある』と言われても怖くて使えない。ですから皆、あまり安易に『薬が出来た』なんて言わないほうがいいと思っています」

 さらに大村氏は、コロナ後のより遠い未来も見据える。

未知のウイルスに対してどう立ち向かうか?

「例えば、アフリカで流行っているマラリアには、クロロキンという特効薬があるのですが、耐性菌が生まれてほとんど効かなくなってしまいました。地球温暖化が進行すれば、沖縄や九州地方がこのマラリアの蔓延地域となる可能性もあります。現地の人間はマラリアに既に感染したことがあったりして抵抗力があるけれど、日本では多くの人が全く抗体を持っていないので危険です。(略)『日本は今マラリアが流行っていないから、マラリアの研究はやらなくていい』という考えをしていてはダメなんです。

 我々は、一見役に立たなさそうな物質でも、決して捨てずに保管するという方針をずっと取ってきました。それは、未知のウイルスや細菌に対して、思わぬかたちで役立つこともあると考えているからです」

 果たして“ノーベル賞の薬”が、救世主になる日は来るのだろうか――。6月初め、イベルメクチンが新型コロナに有効であるとした、一部の論文は取り下げられたが、北里大学は今夏以降、医師主導の治験を開始する予定に変更はないという。

 他にも大村氏が、イベルメクチン開発の経緯、北里研究所を創設した北里柴三郎の功績などを語ったインタビュー「 ノーベル賞の薬が救世主になる日 」全文は、「文藝春秋」7月号及び「文藝春秋digital」に掲載されている。

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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年7月号)

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