「Go To」は失敗なのに...菅官房長官が“ポスト安倍”としての存在感を高めている理由

文春オンライン / 2020年8月25日 6時0分

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再び慶応大病院入りした安倍晋三首相 ©AFP/AFLO

 今回は素朴な疑問を書いてみたいと思う。

 その前に、まずこの見出し。

「首相体調不安説の中…あの2人が」(朝日新聞8月21日)

 あの2人が会食したという。それは山Pと亀梨君ではなく、二階俊博自民党幹事長と菅義偉官房長官だった。こっちもかなり怪しい「怪食」にみえるがその菅氏について、

《党内では再び「ポスト安倍」候補として期待する声が高まっている。幹事長として党内を仕切る二階氏との連携が深まれば、次期総裁選の構図に影響を与える可能性は高いと見られる。》

 意味深な内容だ。ポスト安倍についての作戦会議のようにも思える。やはり怪食である。

「菅・二階氏 互いに活用」

 記事の多さで注目されている政治家を知るのも新聞の読み方だとすると、確かに最近は菅氏に関するものが多い。たとえばこんな感じ。

「菅氏 再び存在感 Go To主導し浮上」(毎日新聞8月7日)

「菅・二階氏 互いに活用」(毎日新聞8月22日)

 他紙も含めてこれらの記事に共通するのは、新型コロナウイルスの初期対応で菅氏は首相官邸の意思決定ラインから外れたとの見方が出ていたが、

《旅行需要喚起策「Go Toトラベル」事業を主導、再び官邸内での存在感を高めた。》(毎日8月22日)

 という“解説”である。

 さてここで素朴な疑問が発生する。それは、

「Go To トラベルキャンペーンって成功してないよね?」である。

 え、まさかあれって成功した? してないですよね。

「Go To」で存在感を高めた?

 ところがこの政策を推し進めた菅氏が永田町では「存在感を高めた」と言われている。これが不思議でならないのだ。なぜ菅氏が良い政策をしたかのように扱われているのか。失政と思えるのになぜポスト安倍への手柄のように言われているのか。

 新聞の政治部の皆さんには、永田町と世の中の空気のギャップまで解説してほしいのである。永田町情報そのままだけでなく。

「Go To」は前倒しも含めて失政ではないか? というのは私が勝手に言っているのではない。新聞こそ「Go To トラベル」には厳しいのだ。

 次の3つの記事を紹介しよう。

「Go To 登録3割どまり」(日経8月12日)

「『Go To』効果不透明」(読売8月13日)

「観光Go To効果薄く 開始1か月」(読売8月22日)

 とくに「Go To 登録3割どまり」では「中小宿泊施設 広がらず」「手続き煩雑 恩恵、大手偏重に懸念」と大事なことが書いてある。

 産経新聞も早々に辛口だった。

 8月2日に「【主張】政府のコロナ対応 首相は戦いの前面に立て」と社説を書いているが、「『Go To トラベル』は一時停止すべきである」とはっきり言っていた。

《招かれざる客では旅を心から楽しむこともできまい。まず、感染拡大の収束こそが眼前の課題である。》

 もう一度言うが、読売も産経も日経も「Go To」には懐疑的なのに、これを推し進めたという菅官房長官がなぜポスト安倍として存在感を高めているのか。謎すぎる。

「強いお友達」を優遇しただけの政策

 考えられるとしたら次の可能性だ。先ほどの日経も指摘していたが恩恵は大手偏重にみえるGo To事業は、

「苦境にある小さな業者を救う仕組みになっていない。利用する側も、コロナ禍で本当に困っている人は旅行に出られない。比較的体力のある大手の業者や、生活に困っていない人が利用するだけに終わる恐れがある」(城西国際大の佐滝剛弘教授・観光学、東京新聞8月22日)

 つまり菅氏は「強いお友達」を優遇しただけの政策をやっただけではないのか。そしてここにお金を回したことで存在感が上がるというなら、永田町は強者の方向しか見ていないと考えられる。しかしコロナ禍でその対応でよいのだろうか。

 さらに重要なのは今後の検証だ。

 国際医療福祉大の松本哲哉教授(感染症学)は、Go To参加者の人数や旅行先、感染者の出た地域など具体的な検証が必要としたうえで、「キャンペーンが人の移動を推奨し、後押しした。感染者の多い地域から少ない地域へ人が移動したことが、今の感染拡大につながった可能性は高い」と指摘する(毎日新聞8月23日)。

 なかでも沖縄県は感染者が急増した7月31日に県独自の緊急事態宣言を発表したが「沖縄は明らかに影響を受けた典型例だろう」と松本教授は推察する(毎日新聞・同)。

 その沖縄に対して菅官房長官の当たりは厳しい。

 菅氏は8月3日の会見で、無症状者や軽症者用のホテルを確保していなかった沖縄県の対応を痛烈に批判した。

 しかし沖縄県政関係者は「知事は、八月上旬に予定していた那覇市のホテル借り上げを前倒しして、七月末に開始しているんです。これは国と相談して決めたことなのに、菅氏が『ホテル確保がゼロだ』と批判するのはおかしい」(「週刊文春」8月27日号)と述べている。

 週刊文春は「菅氏のイジメぶり」と書いた。Go To事業だけ見ても対応の格差が激しい。

菅官房長官「おかしいと思う感覚 大事に」

 そんな菅氏だが、今年1月のインタビューではこう答えていた。

「おかしいと思う感覚 大事に」(産経新聞1月15日)

 なかなか面白いインタビューではないか。  

《私はたたき上げですから国民から見ておかしいことは「おかしい」と言う。そこは大事にしていきたい。そうでなければ何のために政治家になったのかが分からない。》

 その国民から見ておかしいと言われているのがGo Toなのでは?

「内閣支持率36%に下落 共同通信世論調査」(産経ニュース8月23日)

「観光支援事業『Go To トラベル』を巡る混乱など政府の新型コロナ対応への不満が反映しているとみられる」(東京新聞8月24日)

 しかし「青春アミーゴ」修二と彰ならぬ菅と二階はGo To事業をきっかけに、そして安倍首相の体調不安説をきっかけに、次の政局の主導権を握ろうとしているように見える。

 このズレっぷりって、2000年に小渕恵三首相が病気で倒れたときに森喜朗氏を後継に選んだあの密室の五人組の動きを思い出す。今回は二人組だけど。

 菅&二階の「怪食」にしばらく注目です。

(プチ鹿島)

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