【現場に残されたM16自動小銃写真】山口組抗争で続出した「高齢ヒットマン」それぞれの事情

文春オンライン / 2020年9月22日 17時0分

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銃撃事件のあった神戸市の神戸山口組系山健組の事務所付近。“ヒットマン”は68歳だった ©️共同通信社

《海外で射撃練習も》ケンカの緊急招集がかかったとき、ヤクザがシャブを使うのはなぜか【暴力団幹部告白】 から続く

 兵庫県庁などが立ち並ぶ官庁街から少し離れた神戸市中央区の住宅街。この地に2発の銃声が鳴り響いたのは、昨年10月10日のことだった。

 現場は当時神戸山口組の中核組織だった山健組本部のすぐそば。事件発生直後、暴力団関係者の間では、「花隈で音が鳴った」との情報が駆け巡った。「花隈」とは同区花隈町にある山健組のこと、「音が鳴る」とは拳銃の発射音のことを指す。

 撃たれたのは山健組の男性組員2人。事件後、間もなく死亡した。事件当日は山健組の定例の幹部会が開かれていて、多くの幹部たちが本部事務所を訪れていたという。

 この事件が大きな話題となったのは、2人が死亡した重大性ももちろんあるが、発砲した“ヒットマン”が高齢だったことが、暴力団業界で波紋を呼んだ。

 逮捕されたのは、神戸山口組と対立する6代目山口組弘道会系幹部の丸山俊夫、68歳(当時。以下同)。

 これまで、暴力団同士の対立抗争事件では、若手がヒットマンとして事件を引き起こすのが通例だった。「高齢ヒットマン」の出現の背景には、一般社会同様に、暴力団業界も高齢化が進んでいることがある。(全2回の2回目/ 前編 から続く)

76歳の男はなぜ拳銃を握ったのか?

 この事件があった時期は、6代目山口組のナンバー2、若頭の高山清司が2019年10月18日に刑務所を出所した時期と重なり、対立する神戸山口組への銃撃事件が相次いでいた。

 翌11月27日には、尼崎市内で神戸山口組系幹部の古川恵一(59)が殺害される事件が発生している。M16と呼ばれる自動小銃で数十発が発射された残忍さが際立ち、大きく報じられたこの事件。逮捕された6代目山口組系竹中組元幹部、朝比奈久徳も52歳。やはり若くない“ヒットマン”だった。

 さらに高齢の“ヒットマン”も現れた。今年2月、三重県桑名市で、6代目山口組若頭の高山の居宅に向かって拳銃が発射されたのだが、銃刀法違反の現行犯で逮捕された、元山口組系組員の谷口勇二は76歳だった。

 谷口は、「(高山の出身組織の)弘道会に恨みがあった」「3、4発撃った」と供述していた。しかし、当時事件の発生を知った指定暴力団幹部は次のように推測する。

「男はヤクザをかなり前に辞めていたが食うに困って何かしらの依頼を受けてやったのか、食うに困らない刑務所に入りたかったか。そんなところではないか」

高齢化で現役世代は温存?

 ヤクザ業界で高齢化が進んでいるとは言え、若い組員も存在するはずだ。なぜ高齢者が拳銃を握ることになるのか。指定暴力団の古参幹部が、説明する。

「暴力団の対立抗争事件を、中堅どころとか、それ以上の幹部が起こしたとなると、これまでなら『若い衆は何をしているのだ』ということになっていた。しかし、ケンカで殺人となると無期懲役、殺人未遂でも15~20年の懲役と刑期が長い。若い衆が懲役に行くことになると、出てくるころには高齢者になっている。シノギのために、現役や若手は温存して年寄にやらせているというのはあるかもしれない。そもそもヤクザには酒の飲みすぎで『病気持ち』も多い。先が見えている老人が、ケンカに行くこともある」

 さらに、暴力団員の経済的な事情もあると打ち明ける。

「かつてとは違い、最近は暴力団排除条例などの締め付けでシノギ(資金獲得活動)が厳しい。食い詰めたヤクザが、刑務所から出ることはできないことを覚悟の上で事件を起こすこともある」(同前)

 山健組本部近くで2人を射殺した丸山も持病を抱え、所属していた組織に家族の生活維持を託すことを条件に銃撃を引き受けたという情報もある。

暴力団員の51%以上が「50歳以上」

 暴力団の高齢化は統計にも表れている。昨年末時点で警察庁が取りまとめた最新データによると、全国の暴力団組員約1万4400人のうち50代以上が51.2%と半数を超えているのだ。

 年齢別の統計を取り始めた2006年末以降で、半数を超えたのは初だという。60代も2006年の11.8%から12.3%へと微増、70代は2.3%から10.7%へと急増している。2006年には最多だった30代は、30.6%から14%へと半減している。

 いま、暴力団をやめる者も増えているという。

 というのも、暴力団対策法でスナックやクラブなどの飲食店からみかじめ料と称する用心棒代を暴力団が徴収することを禁じられ、さらに2011年10月までに全国で整備された暴力団排除条例によって、飲食店が暴力団に資金提供することを禁止した。このことで、多くの暴力団は資金源が絶たれたのだ。

 暴力団が高齢化している以上、離脱者も高齢者が多い。ある古参幹部は、「ヤクザを辞めてシノギがなくなり、生活保護を受けている知人が何人もいる」と打ち明ける。

「70歳を過ぎて何か仕事をしようと思っても、この年だと職はない。どこも雇ってくれない。長年、ヤクザをやっていれば70歳を過ぎてまともな仕事をやろうという気も起きないだろう」(同前)

ヤクザに老後の不安はあるのか?

 リタイヤする年齢になれば、老後の生活を支えるのは一般社会では年金となる。ヤクザの場合はどうなるのか。

 前出の古参幹部は、「これまでほとんど職に就いたことがないから年金の保険料を納めたことがない。自分も結構な年になってきたが、今でもシノギはあるので老後の心配はさほどしていないが……」と社会保障とは無縁の生活実態を明かす。

 別の40代の指定暴力団幹部も同様に「これまで年金は一度も納めたことがない」と語る一方で「いまシノギは順調で自信があるが、この先何十年も大丈夫なのかと考えると心配なのはその通り」と打ち明ける。

 新型コロナウイルスに感染すれば、高齢者は急速に重症化することが危惧される。この40代の幹部によると、暴力団業界も大きな影響を受けたという。

「今年はコロナ騒動が広がり始めたころから、組の会合は縮小か延期となることが多かった。とにかく、身内には高齢者が多いから。事務所内で多数で集まるとすぐに『密』になってしまう」

 高齢化という現実は、これから暴力団業界をどう変えていくのだろうか。(敬称略)

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))

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