女性を「下着1枚」にしてスマホ撮影 組対5課の元刑事逮捕「警視庁内で2人きりの相談中に…」

文春オンライン / 2020年10月13日 6時0分

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元薬物乱用者らに語りかけていた警視庁池袋署時代の蜂谷嘉治容疑者 2015年11月、東京都豊島区 ©共同通信社

 警視庁の本部庁舎内でいったい何が起きていたのか。10月6日、相談に来た女性の下着姿を撮影したとして、警視庁組織犯罪対策5課の元警部、蜂谷嘉治容疑者(63)が特別公務員暴行陵虐容疑で逮捕された。警察施設でそんな芸当が果たして可能なのか。しかも、人情味溢れるベテラン刑事として知られたこの男がなぜ……。

服を脱ぐきっかけは「ダイエット話」

 事件が起きたのは昨年7月のこと。定年を迎え、請われて再雇用の形で古巣である薬物や銃器の専門捜査機関、組織犯罪対策5課にいた蜂谷容疑者のもとに、薬物依存に悩んでいた女性が相談に訪れた。蜂谷容疑者は再雇用後、こうした薬物依存者のカウンセリングなども担当していたからだ。

 蜂谷容疑者は本部の一室で女性の相談に応じた。話題は薬物依存だけでなく、生活全般に及び、相談内容は世間話にも飛ぶ。

 全国紙社会部記者によると、そこで「話題は女性のダイエットの話に移り、そこで女性が服を脱いで下着1枚になり、蜂谷容疑者がその姿を撮影。女性のスマートフォンに送ったようです」という。

 取り調べであれば、録画もされ、常時人の目が入るが、今回は相談のため、女性と蜂谷容疑者は2人きり。女性はその後、別の課員に事の顛末を相談。事件発覚を受け、蜂谷容疑者は退職した。

 だが、なぜ女性は服を脱ぐことに応じたのか。謎の解明には、「落とし」のプロとして知られていた蜂谷容疑者の経歴をひもとく必要がありそうだ。

容疑者の人生相談にも乗る「落としのプロ」

 1980年に警視庁に入庁した蜂谷容疑者は組織犯罪対策5課で薬物捜査のプロとして知られてきた。特に特性を発揮してきたのが、薬物依存者の更生だ。

 警察庁の統計によれば、2020年に覚醒剤事件で逮捕された3837人のうち、再犯者は2644人、実に68.9%に及ぶ。田代まさしなど、薬物事件のたびに名声を失い、それでも薬物事件で逮捕される人々をみれば、薬物依存の深刻さは一目瞭然だ。

 そこに目を付けて取り組んできた1人が、蜂谷容疑者だった。

 07年、警視庁は釈放された薬物乱用者を警察署に呼んで治療プログラムを受けさせるモデル事業を始めた。事業終了後の09年、自ら同じようなプログラムを立ち上げて非番の日も使って月に1回、乱用者を署に呼んで薬物と決別させる取り組みを地道に続けてきたのが蜂谷容疑者だ。

「こうしたプログラムの最大の難関は、薬物乱用者をその場に連れ出すこと。そして、その後も継続的に連れ出すこと。並大抵の努力では達成できない。捜査員の情熱が必要だ」(捜査関係者)

 その情熱と努力を持ち得たのが蜂谷容疑者だった、ということになる。

再犯者はわずか数人、「落としの蜂谷」の真骨頂

 その手法は常人に簡単に真似できるモノではない。16年に逮捕したハナさん(仮名)のエピソードは本人も何度も講演で触れたが、語り草になっている。

 覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、黙秘を続けるハナさんに対し、蜂谷容疑者は事件に触れることなく、毎日のように得意の落語を披露し続けた。勾留期間が終わりを迎えるころ、ようやくハナさんは自ら蜂谷容疑者に自分の半生を語り始めた。

 執行猶予判決後も蜂谷容疑者はハナさんの仕事の相談などにのり、ハナさんは介護資格を取って新たな人生に乗り出していった。

 逮捕した100人以上のうち、再犯者は、数人だ。否認のまま判決を受け、再犯に走る容疑者も多い中、再犯者がほとんどいないということは、それだけ蜂谷容疑者の言葉が容疑者に心に届いたということでもある。「落としの蜂谷」の真骨頂と言っていい。

 ただ、そこにこそ、今回の事件の芽が潜んでいた、とみる向きもある。

女性刑事が男性の容疑者と関係を持ったり……

「捕まえることだけが刑事の仕事ではない」

 蜂谷容疑者が、父親から受け継いだ口癖だ。蜂谷容疑者の父親は茨城県警で暴力団担当の刑事として従事。自宅に暴力団関係者を呼び、親身に相談に乗る姿を間近にみて育った。

 暴力団担当の長い捜査関係者は言う。

「泥水をすすらなきゃ、泥水に棲むヤクザ者の情報は取れない。そう思ってヤクザ者と付き合ってきたが、取り込まれる人間もみてきた。だからこそ、警察は2人以上でヤクザと会う、などのルールを整備していった。そんなルールが邪魔だと思う連中も多かったけどね」

 警視庁に限っても、男性刑事が女性の容疑者と関係を持ったり、女性刑事が男性の容疑者と関係を持ったり、あるいは男性刑事が女性の容疑者、女性の被害者を追いかけ回したりする事件は後を絶たない。

 得てして「自信のある奴に限って、そういう事態にはまっていく」(同前)という。

 捕まえることだけが刑事の仕事ではない。だが、どこまでが刑事の仕事なのか。蜂谷容疑者を新しいタイプの刑事の鑑として持ち上げる警視庁幹部も多かった。今回の事件を生んだのは、その慢心ゆえか、それとも……。

(末家 覚三/Webオリジナル(特集班))

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